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Artist Interview
ロック世代の津軽三味線奏者 ヨーロッパ公演に臨む上妻宏光に聞く




──そうした海外の反応は演奏スタイルに影響しましたか。
ニューヨークのジャズクラブで飛び入りで演奏したことがあります。お客さんは誰も僕のことを知らない。僕が持っているのは初めて見る楽器です。ブーイングが来るのか、拍手をもらえるか、実力を試せるいい機会でした。最初は楽器のルックスと音に驚く。そしてジャズとセッションできることに驚く。僕自身も三味線の可能性を肌で感じることができ、いい勉強になりました。ただ、もの珍しさだけで活動できるのは数年です。三味線でジャズを弾けますという程度なら、ギターでいいということになりかねない。海外のサウンドに合わせるのではなく、日本独自のサウンドをベースにしたオリジナリティが必要です。ですから、お客さんはどこで反応したのか、どう感じていただけたのか、演奏しながら感じ取ったものを集大成して曲を作り、アピールできるようになりたいと思っています。三味線に対する固定観念のない海外での公演は、オリジナルを作るうえでとても重要です。

──2005年のツアーのタイトルを「伝統と革新・・・そして伝承へ」としたのは、海外公演で確認した日本のオリジナルを追求しようということでしょうか。
海外に行けば行くほどルーツを考えます。4枚目のアルバムまではジャズやフュージョン、ロックのリズムを主体に作曲しましたが、今回発表する5枚目では民謡のリズムや香りを使って、アコースティックのみの編成のサウンドを作りました。日本で養ったDNAを出していく時代が来たと思います。文化や音楽では海外のものをどんなにうまく取り入れても、まねしている限りかなわない。『間』といわれる日本音楽の独特のリズム感や、きめ細かさ、奥床しさといった日本の文化は、外国の人の体にないものです。今までダサイと避けてきた日本の文化を認め、消化し、現代の感覚でよみがえらせることで、日本人にしか表現できないものが確実にできると思うんです。ネットやメールでどんどん狭くなる地球が見落としている、季節感のようなものを表現したい。人間らしさ、ぬくもりを感じるサウンドを作っていこうと思います。2005年のヨーロッパ公演が新しいサウンドの海外でのお披露目になります。ヨーロッパは伝統的なものを受け入れる土壌があると思いますが、三味線や太鼓やピアノをメーンにした耳慣れないサウンドに聴衆がどう反応するか、新たな挑戦です。

──30代の上妻さんの音楽は今後も様々に変化していきそうですね。
今度のサウンドは3、4年は追求するつもりです。でも、5、6年後にはエレクトリックな音楽に行くかもしれません。でも絶対に三味線は手放さない。うまく言葉にすることは難しいんですが、三味線の音に僕の体が共鳴するというか、僕の体と三味線は周波数が合うんです。僕の体調の変化、練習不足を素直に音で返してくる。どんなに弾いても飽きないですね。日本の音階は基本的に5音階ですが、12音階に比べれば7つの音を使ってないんですから余裕があります。例えば、2つ音を加えればスパニッシュな感じが出せる。共演者が代われば新たなフレーズが生まれる。チューニングを変えたり、奏法や楽器を開発したり、三味線の可能性を広げるためにできること、やりたいことはたくさんある。50歳までに、考えていることには全部挑戦するつもりです。

 
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