The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Artist Interview
What reveals the meaning behind the stages in the form of everyday apartment rooms? Interview with stage designer Toshie Tanaka
創り込まれたマンションの一室が現すものは? 舞台美術家、田中敏恵インタビュー
アニマル
ポツドール第2回公演『ウラミマス』

初演:1997年/早稲田銅鑼魔館
脚本・演出:三浦大輔
企画・制作:ポツドール

愛の渦
ポツドール第12回公演『ANIMAL』

初演:2004年/三鷹市芸術文化センター 星のホール
脚本・演出:三浦大輔
企画・制作:ポツドール

愛の渦
ポツドール第13回公演『愛の渦』

初演:2005年/新宿THEATER/TOPS
脚本・演出:三浦大輔
企画・制作:ポツドール

夢の城
ポツドール第14回公演『夢の城』

初演:2006年/新宿THEATER/TOPS
脚本・演出:三浦大輔
企画・制作:ポツドール
──どんな舞台美術でしたか?
『ウラミマス』は、古いアパートの和室でした。台所がついていて、おそらく2間ぐらいあるような。ワンシチュエーションの一幕ものでした。その頃から、そういう日常を舞台にした芝居が流行りはじめたのかどうか私にはわかりませんが、ポツドールを見た劇団の人たちから「リアルなセットをつくりたいのでお願いしたい」と言われるようになり、今に至っています。
実は、当初、私はリアルな一杯飾りのセットに対してとても反発を感じていました。作業が面白くなかったわけではないのですが、そういう演劇自体に興味がなくて、拾ってきたものとか、壊れた車とかを使って抽象的なオブジェをつくったり、網で客席まで囲ったりするようなものの方が舞台美術らしいと思い込んでいました。
リアルなセットは誰にでもつくれるじゃないか、和室なら和室で、自分の家のをそっくりそのままもってくればいいじゃないか、そこにどんなオリジナリティがあるのか、と疑問を抱きながら仕事をしていました。それで、たまに抽象的なセットの依頼がくると、私が抽象セットもやることを証明したい、と張り切ったりして(笑)。

──それを自分のスタイルとして自覚できるようになったのはいつ頃からですか?
思い返してみると、ポツドールが2000年に上演した『騎士クラブ』が転機になったような気がします。三浦さんには怒られそうですが、この作品でポツドールを素直に面白いと思いました。それまでも、三浦さんは今回何がやりたくてこの場所を舞台にしようとしているんだろう、と考えようとはしていたのですが、それが『騎士クラブ』で腑に落ちた。台本のト書きに指定された場所としか思っていなかったのが、そこに演劇空間としてなくてはならないという必然性と、その空間を自分がつくっているということが納得できたんです。

──ポツドールの『愛の渦』(写真参照)『夢の城』(写真参照)では、マンションやアパートの一室が具象的につくり込まれているのですが、ロフトがあったり、舞台正面にバスルームがあったり、すごく多重的な空間になっています。
ポツドールだけではなく、私が手がける公演は、袖もないような狭い空間で行われるものがほとんどなのに、演出家が要求する要素が多くて必然的にそうなっているところがあります。その要素をどれだけ空間に入れられるか、そういう実現の可能性をひとつずつ検証して、最初に役者の導線をイメージしてから絵を書き始めます。
例えば、『愛の渦』の時は、三浦さんからマンションの入り口に従業員がいる控え室のようなカウンターと、みんなが集まれるリビングと、その横にプレイルームがほしい、といわれて、「エッ、THEATER/TOPSの間口を知ってるの?」みたいな(笑)。ただ、舞台美術としてどういうアイテムが必要になってくるかということをはじめから相談してくれるので、私も意見をいいながらつくってきました。彼は“隙間恐怖症”と言われるぐらい空間を埋めたがるタイプで、気がつくと自分で何か探してきてポスターを貼ったり、小物を置いたりします。さすがに最近はあまりやらなくなりましたけど。
大きいところでやったことがないので比較できませんが、私も、小劇場の一幕ものの一杯飾りでは“場”が動かないので、空間のつくり方でいろいろな見せ方ができないと面白くならないんじゃないかと思っています。だから狭いスペースに詰められるだけ詰めます。大工さんに図面を見せると、「攻めるねー!」とよく言われます。「この劇場ってこんなに広かったっけ」と思わせるほど、隅々まで使いたいので、何尺何分というところまでこだわって空間をつくりだしています。そうしないと、劇場を活かした気になれないというか。小劇場にはバックヤードがありませんから、舞台監督泣かせだとは思いますが、ぎりぎりまで舞台スペースを使うかわりに、「ここ通れます」とか、「ここに小道具台をつくれます」とか、そういうところにまで気を配るようにしています。もちろん、詰め込むのとは逆に、省略すべきところはしていますが……。

──田中さんの空間造形で芝居を見ると、舞台上の出来事を近くで覗き見しているような臨場感があります。
小劇場は、客席と舞台が至近距離にあるので緊張感があります。なので、極端に言えば、お客さんに見えないところまで気を遣いたいし、役者が触る物のディテールにもこだわりたいと思っていますし、そこは妥協できないですね。それを実現するには技術が必要なので、大道具会社でアルバイトをしたり、現場に張り付いたりして勉強しています。

──ディテールをつくるための取材はしますか?
時々やります。例えば、ポツドールの『ANIMAL』の時は、橋の下のコンクリートの壁に落書きがあるセット(写真参照)をつくったのですが、渋谷で描いているヤツらの技を盗まなきゃと思って、実際に描いてあるものを写し取りに行きました。普段から、変わったシミをみつけると「なるほどこんなふうにできるのか」と観察したり、建物の柱の収まりとか、1本足の椅子があったらその足はどういう素材なら強度が保てるかとか、知らないうちに考えていることが多いですね。作品のための取材というより、街を歩いていてもちょっとしたことが気になります。この観察癖は職業病だね、とよく言われます。
 
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