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Artist Interview
Kazuki Nakashima's spectacles of manga and Kabuki and romance legends
マンガと歌舞伎と伝奇ロマン活劇と――アクション劇作家・中島かずきのスペクタクル

『髑髏城の七人』アカドクロ
2004年
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
主演:古田新太
(c) ヴィレッヂ

『髑髏城の七人』アオドクロ
2004年
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
主演:市川染五郎
(c) 松竹株式会社/ヴィレッヂ

『SHIROH』
2004年
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
(c) ヴィレッヂ
――江戸時代の劇作家でいうと、近松よりは南北ですか?
南北ですね。『阿修羅城の瞳』を書いた時に『四谷怪談』を読みましたが、すごくおもしろかった。言葉に力があって、日本の昔の演劇は思っていたよりおもしろいと思いましたから。でもこれを20代の若い人が歌舞伎座で見て果たしておもしろいと思えるのだろうかと。それなら、テキストがこれだけおもしろいんだから、そのテキストの精神を現代に通用するようにしてやればいい。それが新感線のやっていることだと思います。

――「活劇」として舞台化するために中島さんが戯曲を書く段階で留意されていることはありますか?
概念として書くのではなく、個人(役者)の肉体に全てのストーリーを落としこむようにしています。そのためには物語を“人の話”にしないと、『アテルイ』なら「アテルイの話」にしないとできない。個人の感情なり生き様なりをテーマとして絞り込んでいって、そのぶつかり合いの中で物語がどう展開していくか、ということだと思います。

――『アテルイ』なら坂上田村麻呂という人間像をしっかり考えなきゃいけない。
そうです。いわゆる演劇的なテーマというのは、物語(ドラマ)とは別にあったりするじゃないですか。そうではなくて、テーマよりも物語(ドラマ)が先だろう、それを担う個人の肉体が先だろうと。舞台の上に立っているキャラクターを描くことで、背景にあるテーマがついてくればいいと。活劇って、結局、誰と誰が闘ったらどちらが強いか、そういう問題じゃないですか。そこに興味を持たないとクライマックスは盛り上がらない。そのために物語(ドラマ)をつくっていく。個人それぞれが持っている物語が、舞台の上で力ずくでぶつかり合う、その瞬間のカタルシスを大切にしたいんです。

――そうして、登場人物が実感のある言葉を物語る。
そうです。しかもそれは借りてきた抽象的な概念を頭で語るのではなく、その人間が自分の肉体を通して、自分の信条として言葉にしている。アテルイならアテルイの、阿修羅なら阿修羅の、その人の言葉なんです。抽象的な概念や哲学的な問答とかではなくてね。

――中島さんの戯曲では、まず登場人物が自分を“名乗り”ますよね。
ええ、その通りです。滝沢馬琴もそうですが、例えば、「信」「忠」「義」という名前をつけた『八犬伝』のように登場人物に意味のある名前をつけますよね。自分もそうで名前にはすごくこだわりがあります。登場人物の名前が決まると、その人物配置も決まる。つまり、キャスト表ができたときには、芝居の6割ぐらいはできているという感じです。名前にどういう意味をもたせるのか、どこから出典してくるか、いろいろ考えるので、名前を付けるのにはすごく時間がかかります。どうしてその名前がついているかが、自分の芝居のもうひとつのテーマと言っていいぐらいです。
こういうのは日本人が「言霊の国」の人間だからだと思います。武術や格闘技の必殺技もそうですが、「真っ向唐竹割り」とか、すぐ名前をつける。格好いい名前を競うし、強そうな名前の方が強いんです(笑)。

――ひら仮名、カタカナに漢字が混じる日本語は視覚的ですからね。『阿修羅城の瞳』の主役の剣士「病葉出門(わくらばいずも)」も、名前をみただけでどういう人物かイメージがふくらんでくる(笑)。
それからト書きに文章として読ませる工夫がしてあるのも特徴的です。また、台詞にも独特のリズムがありますね。
最近は短くなりましたが(笑)、一時期はもっと凝って、ト書きで遊んでいました。作家としての基本ですが、最初に読む演出家や役者にはまず「おもしろい」と思ってもらえるホンを書きたいと思っていて、そのことはいつも意識しています。
台詞については、自分が気持ちのいいリズムで書いています。独学ですが、基本は五七調で、日常的な生活言語とは違うフィクショナルな言葉です。だから演じる役者もフィクショナルな感性や技法を持っていないと水が合わないのかなと思います。

――舞台の絵づくりもイメージして書いていますか?
一応、イメージしていますが、いのうえ君が視覚的に芝居を立ち上げることにものすごい力を持った演出家なので、そこは委ねています。僕が“アクション劇作家”なら、いのうえ君は“アクション演出家”。やっぱり稀有な才能だと思います。
 
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