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Artist Interview
The continuing expansion of the world of Saburo Teshigawara, an artist who has already left a big footprint in contemporary dance
世界のコンテンポラリーダンスを変えた 勅使川原の広がり続ける世界とは?
『HERE TO HERE』(1995年)
撮影:Dominik Mentzos
HERE TO HERE

撮影:Bengt Wanselius
HERE TO HERE
HERE TO HERE
HERE TO HERE
HERE TO HERE
──勅使川原さんのワークショップとはどのようなものか、具体的な内容についてご説明いただけますか。
 僕らは「呼吸」をしないと生きていられない。呼吸は回りの「空気」がなければ成立しない。ということは、周りの空気まで含めてすべてが「身体」であると。そして身体には「重力」が働いている。その重力と身体を感じる「意識」と「呼吸」がある──それだけをたっぷり感じるところから始めます。身体の中にどういう記憶があるかとか、どういう思いがあるかとか、この音楽をどのように理解するとか、そういうことは一切必要ない。ただ、自分の身体を感じましょうと。「理解する」以前に「感じる」がある、そして意識化した理解に向かう。
 具体的には、まず、呼吸だけやります。「吸って」「吐いて」「吸って」「吐いて」……と。呼吸に集中してと言うと、だいたい目をつむりたがりますが、そうすると身体のバランスが悪くなるし、音のほうに気がいってしまうので、目は開けたままやる。でもやっているうちにだんだんつまらなくなるでしょ。呼吸だけやれってどういうことよ? みたいな(笑)。そうやって苛ついてくると、何かやりたくなるのが情なので、段々味がでてきてそれがオモシロいんです。
 そうなったら、「吸って〜、もっと吸って〜、もっと吸えるはずだ〜」と指示する。で、今度はゆっくり、ゆっくり吐かせる。そうして自分の「呼吸の幅」を意識するようにさせます。ゆっくり吐ききってもうこれ以上吐けないところまで吐いたら、ゆっくり吸い始める。ちょうどボールを上に投げ上げると放物線を描いて止まることなく落ちてくるように、呼吸は基本的に止まらないサイクルをつくっているから無意識にできるわけですが、その吸い始める時と、吐き始める時を意識的にやろうと。そうすると、つまりそれがリズムになっていく。もっと言うとそれが動作になっていく。その呼吸をガイドにして手を伸ばすことと呼吸を一緒にやる。
 バレエではステップバックしてからやることをプリパレーションと言いますが、動作には全部そういう仕組みがあって、吸うんだったらまずちょっと吐く、吐くんだったらまずちょっと吸う、それを動作といっしょにやると、「緩む」というそこに特有の劇的なセンセーションが生まれます。
 ワークショップでは、そういう呼吸と動作だけをやります。吐ききった後の「もういいじゃん」という表現的な心理を抜いて、最初は呼吸だけ、次は呼吸と動作を一致させて、調和させていく。スチュワートがなぜひとりで歩けるようになったかというと、呼吸と、踵、足の裏、指が順に床から離れるという動作を、呼吸のサイクルでやる練習をしたからです。だから呼吸がなかったら、杖や手すりがないのと同じことで、彼にとって呼吸は調和のもとになっているんです。僕らは、そうしたことを全部組み立てているわけではなくて、自動的にできるオートマティズムをもっています。呼吸を意識してコントロールできるようになれば、あとは係数というか、条件を自分で加えていく方法を編み出せばいいんです。
 身体には、何かを微分していって最後に残るような感覚が潜んでいると思っています。僕はそれを発見するのが楽しいし、若い人たちとやっていると、発見できることがまだまだあります。時間が足りないけど、これまでのダンスとは別の言語感覚(僕のメソッド)を持てるだろうと思っているし、求め続けていきたいと思っています。バレエも能も、ひとりの人がつくったわけではなく、長い時間の中で形作られたものだから。このことを『リベラシオン』紙の記者に話したら、「まるでドン・キホーテだね」(笑)と言われました。見果てぬ夢に向かって歩いていると。でもそれは僕にとってはとてもポジティブなことなんです。

──今後の予定をお聞かせください。
 9月に彩の国さいたま芸術劇場で『HERE TO HERE』を上演し、12月には東京・両国のシアターXで新作演劇をやります。ロベルト・ムージルというオーストリアの作家のテキストで、僕は主演・演出です。ムージルはヨーロッパでは誰でも知っている思想家・小説家で、その人の『特性のない男(Der Mann ohne Eigenschaften)』という作品を取り上げます。僕は別にお芝居をやりたいわけではなく、声と身体だけで何ができるか、実験したいと思っています。身体の使い方が、今までとは全く違うものになると思います。
 今はあまりダンスの振付をやりたくなくて。自分が作家としてできることはこれからも個人的な発想でつくっていくと思いますが、そういうことのみではなく、個人じゃない部分、個人には負えない部分にどう取り組めるか、ということに今一番興味があります。以前、「一千年かかる革命には参加したい」と書いたんですが、それは大げさじゃなく、まあ大げさな言葉なんだけど(笑)、そういうことに興味がありますね。
 
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