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Artist Interview
A geeky world born of unique collaborations The dance performance of Yoko Higashino
異色コラボが生み出すgeekな世界 東野祥子のダンスパフォーマンス
──東野さんが他者、主に音楽家と色々な場所で異種格闘技的なセッションを行うということは、ダンスとは異なる表現との交わりを求めての本能的な行動なのではないかと思います。それはダンスも含め、既存のジャンルという囲い込みに飽き飽きしているから起こる欲求なのでしょうか?
 私自身、刺激を受けるんですよね。想像のつかない自分になれるというか。知っている曲だとわかってしまっているから、そうではない、その瞬間にしかない1回限りの状況に身を置くことで、自分がどうなるのかということに興味があるんです。「大いなる私自身」の探求というか、研究だと思っています。「よくそんなに色々と出るね」と言われるんですが、私自身は全く苦じゃない。高円寺にある「円盤」というお店のたった二畳しかないスペースでも、私に何ができるのかと考える。いってしまえば縛りのある中での稽古というか。「私そんなところじゃできないわ」じゃなくて、そういう状況で生まれるテンションに出会いたい。それが凄い稽古になっていると思う。知っている踊りをやりたいんじゃなくて、もっと自分にあるはずの何かを、ないかもしれないんですが、その状況で生まれる何かを自分に経験させてあげたい。
 それって、一人でスタジオに籠っていくら稽古してもなかなか生まれてこない。私は基本のテクニックや基礎レッスンを非常に大事にしていて、バレエレッスンや自主稽古をきちんとやって、つま先まで細部のコントロールができた上で、後は気持ちが全て。そこからどんな踊りが生み出せるのか。身体が利いている分、気持ちを表現できると思うんです。
 即興に関しては、そこにどれだけの感動があるか。人前でその瞬間にしか起こらないことに惹かれる。セッションしている時の気持ちには日常ではなれないですから。日常では絶対になれない酷い気持ちとか、至福感とか、悲しくて辛くて大泣きしたりとか、それだけの心の動きというのが人前でやる瞬間にしか起こらないというのが面白いかな、と。それを見てほしいなというのはあります。

──主に音楽の現場では煙巻ヨーコという名義でやられていますが、そこで状況論的に色々と体験される中で、東野祥子名義の活動やBABY-Qの活動にどのような影響を与えているのでしょうか?
 煙巻の場合は無責任でいいというか、東野祥子でやる場合は抱えている責任というものがやはりあって。BABY-Qも然り。煙巻はもっと悪いというか、人のスカートめくって逃げるみたいな酷いことを無責任にできちゃう。かわいらしいですけどね(笑)。何が起こってもヘヘッって感じでいいかな、と。

──気持ちの切り替えがはっきりしている分、煙巻ヨーコの行動は東野祥子の作品づくりには影響しない?
 いや、すごい影響していますよ。そこで貰ってきた刺激みたいなものや引っかかった自分の気持ちというものが結局作品に出てくる。煙巻の現場が、私にとって良い稽古の場、発見の場になっています。スタジオで悶々と稽古をするのも大事なんですけど、本能的にやっちゃっている煙巻は、自分が成長していく過程としては必要だなと思う。私自身そんなに畏まらず、自由に、気楽に、伸び伸びと踊れる状況でもあるし。

──2007年にUPLINKで、煙巻ヨーコが蛍光灯を演奏する美術家の伊東篤宏と、壁画づくりやライブペインティングを行うアーティストの鈴木ヒラクと行ったライブセッションがありましたね。これはわかりやすい例ですけれども、本来噛み合うはずがないであろう全く異なる表現を用いる三者が、セッションを成功させました。一回性の強い現場においてセッションが成り立つか、成り立たないかという基準に関して、考えることはありますか?
 ある。即興って演者同士のコミュニケーションがちゃんと成り立っていないと絶対失敗すると思います。行き過ぎるとどうしても独りよがりになっちゃう。そういう場合はオナニーしている感じです。ちゃんと相手がいるもの、しかもお客さんがいるものだから、行き来があって、ちゃんとオーディエンスに届けるという作業をしないと。即興を二人だけでやっていても駄目で、二人がやっていることが人に向かって届くところまで面倒見ることが必要というか。そうじゃないと、即興のセッションでお金取ったらあかんと思う。

──即興でやる場合であっても、共演者とは事前にきちんと話し合うものなのですか?
 そう、世界観を共有しないと。全く知らない人とはできないですね。何を出してくるのかわからない人とは。その人の特徴とかもっているものを理解し、共鳴してからやりたい。そうでないと、なかなか面白くならないですから。基本的に誰とでもできますけど、でも合わせ過ぎても駄目。あるところで裏切って仕掛けるとか、外すとか。昔は合わせようとしがちだったけど、慣れてくると即興の中で自分自身がわかってくる。激しいから激しく合わせるとか、そういうことでは絶対ない。気持ちはグワーって上げられるんだけど、そこで「違うことしてやる!」みたいな闘いでもあります。

──今後、誰とやりたい、何処でやりたいという希望はありますか?
 もっと知らない人とやりたいですね。日本だけではなくて。イタリアに呼ばれて行った時は、「現地のミュージシャンとやりたいです」とリクエストしました。そうしたら向こう側が「この人とやったらいいんじゃない?」と組んでくれて、その人と作品をつくってイタリアを回りました。フランスで、パーク・イン・プログレスといって、各国から集まった色々なアーティストが公園でパフォーマンスを行うという企画があった時は、チェコのミュージシャンと一緒に作品をつくったんですが、次の年に呼んでくれて、チェコの国内とハンガリーを回るツアーを企画してくれた。一人の場合はノリがちょっと音楽寄りなんですけど、パッと行って、作品つくって、それで回るみたいな。フランスのアーティストとも同じで、来年の5月と10月にスペインやノルウェーでやりませんかという話があります。
 知らない人の場合、事前に音を聴いて「ちょっとこの人は…」みたいなのもありますが、納得できた場合はお互い「初めまして」で始めて、2日クリエーションして作品にする。片言の英語でやってみる。それでも出来るんだよね、身体だから。踊りだからね。そういうことをもっとできたらいいなと思います。

──海外の話が出たところで、海外でのこれまでの活動についてお話しいただけますか?
 初めて海外に行ったのは、昔、先生のところにいた時で、中学校の時と高校1年生の時に文化交流としてパリとロンドンへ。先生のアシスタントとして行って、劇場で着物風のものを着せられて、モダンダンス!みたいな(笑)。その後は、ボーカルとダンスを担当していた「drill chop nine」というバンドで、2003年頃にシカゴとニューヨークへ行きパフォーマンスをやりました。
 BABY-Qとして呼ばれて、正式に公演をやった最初は2005年のニューヨークとフランスです。BABY-Qは正統なダンスカンパニーの呼ばれ方からは外れていて、音楽寄りのフェスティバルに呼ばれることが多いんです。2007年に行った南仏ニームは、日本の色んなミュージシャンが呼ばれるフェスティバルだったし、今年行ったメキシコも音楽のフェスティバルでした。ダンス・フェスティバルという意味では、この間の韓国と2005年に行ったフランスのアンギャン・レ・バン、2006年のシンガポールでの「da:ns」の3つ。
 2006年のイタリアのツアーの時は、遺跡の前とか外でもいっぱいやりました。イタリアでは「Geek」という名前を付けて、色々な場所で踊ったことで『GEEEEEK』という作品にまとまっていったところがあります。最近どんどんワーク・イン・プログレス手法というか、1つのイメージを掴んだらそれを2年周期で育てていくという風になってきている。言いたいことがたくさんあるというわけではなくて、『ALARM!』以降は自分の中に生まれたイメージが自分にとって何なのだろうか、これをどうやって伝えようかと探していく行程を大事にしています。これが私のつくり方なんだなと思う。
 後は、海外公演の場合、劇場の機構によってできることが全然変わってきます。私は「劇場がこうだったら、こうしたい」と思うタイプなので、ここだったら後ろから映像打ちたいとか、同じ作品でもどんどんつくり変えて、その機構の中で一番いい方法を見つけてやりたい。日本の中でもそうなんですが、それでいちいち図面を書き直してもらったり。でも、その方がやりたいことが伝わるし、より良くなる。

──BABY-Qの海外での公演のリアクションはどうでしたか?
 リアクションはどこの国でもすごいです。カーテンコール5回みたいな。日本じゃ3回くらいが限界ですけどね。向こうの人って反応が素直なんですよね。韓国でもそれを感じたな。日本の人は周りの人が拍手しないとできないとか、笑っていないと自分も笑えないとか、シャイじゃないですか。後で「良かったよ」じゃなくてその時言えって(笑)。
 私たちの作品ってわかりやすいところがあると思うんですよ。コンテンポラリーなものよりは具体的なイメージというものがちゃんとあるから。普段からダンスにふれていない人でもわかってもらいやすいというか、そっちを目指しているところもあるし。スノッブにつくる方が簡単だと思うんですよね。パッと浮かんだアイデアに振り付けして踊ってというのは、上手いダンサーを使えばできそうな気がしますが、そうではなく、より身近にあるものを舞台上に上げる方が難しいと思います。

──今後の海外公演の予定は?
 1月のジャパン・ソサエティーを皮切りに、2月末までアメリカでの『E/G』ツアー。音楽のカジワラトシオと映像のROKAPENISと一緒に行きます。3月にはBABY-Qで2回目のニームへ。後、今話が動いているのが5月のスペインです。これはフランスのアーティストとつくったものの再演という形で。それと10月にノルウェーへ。ノルウェーでは『ALARM!』をやってくれと言われていて、また新しいバージョンにしたいと思っています。作品は好きだし、もう一度やり直してもいいかなと思っていたからちょうど良い機会かもしれません。

──既にタイトなスケジュールですね。
 そう、その間にも日本での公演があり、この前、私のケガで途中から公演を中止せざるを得なかった『VACUUM ZONE』のリベンジもやりたい!

──『VACUUM ZONE』は本当に凄い作品だと思うのでリベンジに期待しています。
 悔しかったんですけどね。絶対にやります。
 
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