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Performing Arts Network Japan
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Artist Interview
The world of Takayuki Fujimoto, a lighting artist at the forefront in Japan’s multimedia performance scene
日本のマルチメディア・パフォーマンスを支える照明アーティスト藤本隆行の世界
『true/本当のこと』(初演:2007年)
ディレクション・照明:藤本隆行(Dumb Type)
振付・出演:白井剛(AbsT / 発条ト)
振付・出演・テクスト:川口隆夫(Dumb Type)
シンガポール公演
(2008年7月26日/エスプラネード)
© Takayuki Fujimoto
true照明仕込み図
『true/本当のこと』トラス部分のLED照明仕込み図面
Drawing by Takayuki Fujimoto
trueステージレイアウト
『true/本当のこと』ステージレイアウト
Drawing by Takayuki Fujimoto
trueテーブル
『true/本当のこと』の主な舞台装置として用いられるテーブルの内部構造。DLPプロジェクター、サーボモーターなどが組み込まれている
Photo by Motoi Ishibashi
LED照明を使った新たなプロジェクト

坪池:コンピュータ制御による照明の黎明期だったわけですね。

藤本:僕が今使っている根幹的な技術は90年代の初めに出てきたもので、ダムタイプや僕が活動を始めた時期と重なっています。80年代半ばには、ローリー・アンダーソンなどのマルチメディア・アーティストたちが次々来日して、そういう作品にふれることもできたし、いろんな意味で僕らは非常にタイミングに恵まれていたと思います。「次は何をつくろうか?」「あんなことができたらいいのに」と探したら、そこに技術があったみたいな感じで進んでいきました。

坪池:そういった技術革新の流れの中で、藤本さんはダムタイプとは別にLED(発光ダイオード)照明を効果的に使った作品のプロジェクトに取り組まれるようになります。

藤本:初めてLED照明を使ったのは、2003年の川口さんのパフォーマンス作品『夜色(ヨルイロ)』でした。先ほども言ったように、音と映像は同期しながら制御できるようになってきたのに、照明はセットアップも大変で自由に色も変えられない。その上、秒間30フレームのビデオと同期しようにも、実際にフィラメントが発光している照明機器だと、ON/OFFに時間がかかり過ぎて1フレーム(0.03秒)の変化に対応することはできない。
 そんな時に見つけたのが、LED照明でした。これなら色も自在に変えられるからいいかもしれないと思って、『夜色』公演のときにその製品を扱っている東京のカラーキネティクス・ジャパン社に行って初めて機材を貸してもらいました。そうしたら、動作も速いし、電気容量も少なくて済む。デジタルなので直接コンピュータで制御できる。これはいいと思いました。
 『夜色』でLEDの効果がわかったので、舞台設備の都合でダムタイプでは公演できないような場所にもって行ける作品がつくれるのではと『Refined Colors』(http://www.refinedcolors.com/)の企画書を書きました。『Refined Colors』(2004年)は、3人のダンサーと2人のテクニカル、それに28台のLED照明とラップトップ2台、それから舞台上に白い床と壁を立てればどこでも公演できるという作品です。機材一式で旅行トランク5個分ぐらい。これで日本数カ所とヨーロッパ、東欧3カ国や東南アジアなどを回りました。
 2005年には、シンガーのUAさん、維新派の音楽監督でギタリストの内橋和久さんと一緒に『path』(http://path.ycam.jp/)をつくりました。『Refined Colors』は、音と照明が決まったところで同期しているのですが、『path』は完全にインプロ形式で、ギターの即興演奏やボーカルをその場でコンピュータ解析し、照明と映像をコントロールします。入ってくる音によって映像と照明の出方が異なってくるので、コンサートは常に違ったものになります。そして、その後に企画したのが『true/本当のこと』です。

坪池:『true』には川口さんと白井剛さんがパフォーマーとして参加されていました。音と映像と照明とパフォーマーの動きが有機的な同期の仕方をしていて、不思議な世界が出現していました。

藤本:『Refined Colors』でコンテンポラリーダンスらしい作品を、『path』で音楽の作品をつくったので、次はダムタイプで蓄積したテクニカル面でのノウハウを活かしたパフォーマンス主体の作品をつくりたいと思っていました。

坪池:テクニカル面でのノウハウというのは、具体的にはどういったものでしょう?

藤本:LEDでやってきた視覚的なことに加えて、もっと聴覚や触覚といったところにも及んでいきたいと思ったら、周りに使えるものがたくさんありました。
 まず、『Refined Colors』以降、音響やシステムデザインを担当してくれていたプログラマー/アーティストの真鍋大度さんに声をかけて、彼の作品で使っていた筋電センサーや体感型ゲーム用として市販もされているBUTTKICKERという振動子(音と同期して物体を振動させる)を持ち込んでもらおうと思いました。真鍋さんは、川口さんの『TABLE MIND』でも筋電センサー等を使ってパフォーマンス作品をつくっていますから、作品として「使える」こともわかっていました。さらに、彼と一緒に活動しているアーティスト(Rhisomatiksの齋藤精一、堀井哲史、石橋素、照岡正樹)にも加わってもらい、彼らと技術的な仕掛けをつくっていきました。
 『true』では、川口さんと白井さんに筋電センサーを着けてもらって、筋肉の動きをトリガーにして、照明と音と映像を動かしています。また、僕が照明を動かすことによって音が動き、音が動くことによって映像が動くなど、複雑に絡み合っているので、そういう意味ではあらゆることがキューになっています。
 この中で今回一番使ってみたかったのが筋電センサーです。筋電センサーは、筋肉が動こうとした時に発する微弱電流をキャッチするもので、それをコンピュータで処理してメディアと同期させるといろんな面白い表現に繋がるのではと思いました。極端に言えば、(筋肉を動かす)脳からの指令でメディアが作動する仕組みというわけです。
 例えば、身体の速い動きに合わせて音が鳴り、照明が変わっていくようなシーンをつくるとすると、普通はまず変化する音と照明をつくってパフォーマーに見せて、それに合わせて身体を動かしてもらう。それでは、パフォーマーにとってはきっかけに合わせて身体を動かす訓練の賜物というシーンになる。でも、『true』の場合は、パフォーマーが動くことによってすべてが生起し、パフォーマーの動きに周りの状況がついていくわけです。
 それと振動子ですが、舞台に組んだ足場に振動子を仕掛けて、人間の耳では聞こえない20ヘルツ以下の低音を使って足場を揺らしています。人間の可聴域は2万ヘルツから20ヘルツぐらいで、それ以下の低音はいくらスピーカーに入れても低すぎて聞こえない。その聞こえない部分の音を実体験化するのに振動子は使えると思いました。『true』には、実際に、音がすごく低いところから高いところに上がっていくシーンがあるのですが、最初は音としては聞こえないけどガーッと足場が揺れて、それが段々低い音になって最後は高すぎて聞こえなくなるんです。
 
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