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Performing Arts Network Japan
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Artist Interview
The world of Takayuki Fujimoto, a lighting artist at the forefront in Japan’s multimedia performance scene
日本のマルチメディア・パフォーマンスを支える照明アーティスト藤本隆行の世界
『true/本当のこと』
(2007年12月14日〜16日/横浜赤レンガ倉庫一号館3Fホール)
ディレクション・照明:藤本隆行
振付・出演:白井剛
振付・出演・テクスト:川口隆夫
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Photo by Yohta Kataoka
Presented by Dumb Type office, Hi Wood
*ICC(NTTインターコミュニケーション・センター)
日本の電話事業100周年(1990年)の記念事業として、1997年4月に東京/西新宿・東京オペラシティタワーにオープンしたNTT東日本が運営する文化施設。ヴァーチャル・リアリティやインタラクティヴ技術などの最先端電子テクノロジーを使ったメディアアート作品の企画展や、ワークショップなどを開催している。
坪池:『true』は、山口情報芸術センター(YCAM)で約1カ月間の滞在制作をしてつくった作品です。YCAMのようなマルチメディア系の滞在制作ができる施設や岐阜県立情報科学芸術大学院大学/国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)のような養成機関など、ダムタイプが出てきた当時では考えられなかった環境が整ってきました。

藤本: YCAMはダムタイプと日本のメディアアートの拠点だったキヤノンアートラボ(現在は閉鎖)が開設準備の時から協力者として関わってきた施設です。ダムタイプとしてはそれまでずっと海外で創作をしてきていて、なぜ日本で作品をつくれる場所がないのかと思っていたこともあり、マルチメディアアートのクリエーションができる施設になるよう意見を出しました。あそこには優秀なテクニカルのスタッフもいるので、彼らと一緒に新しい技術を使った作品を実際にクリエーションしたいという思いがあり、YCAMで『Refined Colors』『path』『true』を創作しました。

坪池:メディアアート系で滞在制作できる場所は、YCAM以外にありますか。

藤本:日本ではYCAMのほかにはないと思います。そもそも、このような施設は世界にも多くありません。ドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・テクノロジー・センター(ZKM: Center for Art and Media in Karlsruhe)や、ロッテルダムのV2などが挙げられるかもしれないですが、V2はパフォーマンスではなくて、インスタレーションが主ですから、世界的にもYCAMの存在は貴重だと思います。ちなみにメディアアート系のフェスティバルとしては、リンツのアルス・エレクトロニカが有名です。

坪池:メディアアート系の人材養成機関としてIAMASはなくてはならない存在になっています。『true』の参加クリエーターたちも、真鍋さんをはじめとしてIAMASの出身者がほとんどです。

藤本:僕自身はあまりIAMASについて意識したことはありませんが、日本にはIAMASしかないので自ずと出身者が多くなるのだと思います。メディアアートの分野でアルス・エレクトロニカの日本の受賞者を調べたら、大抵IAMAS出身です。ただこうしたクリエーターたちはコマーシャルな分野で活躍することの方が多いのではないでしょうか。

坪池:IAMASが出来て13年になりますが、せっかくの人材が舞台芸術の世界で新しい表現を見せてくれないのは寂しい気がします。

藤本:そうした人材が活かせないのは、舞台芸術をやっている人たちの方にも問題があると思います。もっとそういう分野に目を向けてほしいのですが、「私には関係ありません」といった態度でいるのが不思議です。
 悪口を言うつもりはありませんが、照明家にしても、新しいことにチャレンジしようとする人は少ないし、新しい機材が出ると嫌がる人もいますね。最先端のもの、技術革新で作品が変わっていくという意識をもっている人が少ないんです。それと、日本では、照明は照明、大道具は大道具と、裏方さんが裏方さんのままで終わっている気がします。ディレクションするのはダンサーとかパフォーマー、演出の人で。でも裏方さんと呼ばれる人たちの中から、自分でカンパニーを立ち上げて、自分で作品をつくって、アーティストになろうという人がいてもおかしくないし、そういう道があってもいいと思います。
 それがないから、新しい技術で何かやろうというのも、たまたまそれを使った作品を見たパフォーマーや演出家が、面白いから使ってみよう、という取り組み方にしかならない。池田亮司の音を聴いて「これで踊りたい!」と思って、ただCDを使うだけみたいなことになってしまう。もちろん、ダムタイプのようなアプローチが逆に珍しいんだとは思いますが……。
 人材はたくさん出てきているんだから、YCAMやICC(*)のようなメディアアート系の機関がイニシアティブをとって、「あのテクニカルの人は面白いから、あのパフォーマーと作品つくらせよう」といったコラボレーションをしてくれれば、何かできそうな気はしますよね。

坪池:最後に劇場照明の未来についてご意見を聞かせてください。LED照明は色が変えられる上に、寿命が長く、消費電力が少ない非常に優れた特性をもっています。これからLEDに換わっていく可能性はあるのでしょうか。

藤本:僕も最初の頃は、劇場にどんどんLEDが入ればいいと漠然とイメージしていましたが、日本の劇場はすでに一通りインフラが整っていますから、それがすべてLEDに置き換わるのは無理があると思うようになりました。導入されたとしても、ホリゾントライトの代替で設備されるなど、限定的だと思います。
 それよりも、LED十数灯とちょっとした広さのスペースがあれば、コンピュータと基本的な音響設備を使って作品がつくれることのほうが面白い。LED照明にもできないことはたくさんありますが、インフラがないところで可能性を伸ばしていく方向においては、すごく有効だと思います。それと、僕自身は、照明機材の革新というとらえ方より、何かの代替ではないLED表現の可能性みたいなことを探っていくことの方が面白いのではないかと思っています。

坪池:現在、新しいプロジェクトは何か準備されていますか?

藤本:まだ具体化はしていないのですが、レバノンのラビア・ムルエさんと何かしたいと思っています。本当に単純なのですが、ダンスをやって、コンサートをやって、パフォーマンスもやったから、次はラビアさんと演劇をやりたいと(笑)。
 ツアーで海外をずっと回ってきて、演劇にある言葉の壁を改めて強く感じていて。絶対的に言葉の壁を感じない演劇ができたらいいのになあと、ちょっと思っています。どうすればいいのか、まだまったくわからないですけれど。
 
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