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National Policy on Promoting International Exchange in the Performing Arts
舞台芸術の国際交流を取り巻く文化政策の潮流─吉本光宏(ニッセイ基礎研究所)
国際文化交流の推進と国際交流基金の役割

 近年では、文化庁も国際交流事業に積極的に取り組むようになってきたが、国際文化交流の分野で、長年にわたって中心的な役割を担ってきたのは国際交流基金である。人物の招聘及び派遣、海外における日本研究の促進や日本語の普及、公演・展示・国際交流会議などの催し、日本文化の海外紹介、アジア地域との交流強化、等々、国際交流基金は1972年の設立以降、非常に多岐にわたる国際文化交流事業に取り組んできた。

 2007年度の総予算は約162億円。そのうち文化芸術交流の促進の予算は約22億円で、人物の派遣・招聘、文化芸術分野における国際協力、市民・青少年交流、造形芸術交流、舞台芸術交流、メディアによる交流の6種類の事業が行われている。舞台芸術交流には、日本の舞台芸術の海外公演及び海外の舞台芸術の国内公演の企画実施や助成、国際舞台芸術共同制作(国内・海外の両方での公演)、国際芸術フェスティバルへの公演団体や専門家の派遣、舞台芸術の国際交流に資する情報の収集、整理、発信などの事業が含まれている。

 ここ数年は、国際交流の分野でも文化庁の方が国際交流基金より潤沢な予算を有しているが、資金提供以上に重要な役割を果たしているのが、現在18ヵ国19都市に開設されている日本文化会館や日本文化センターなどの国際交流基金の海外拠点である。それらは、日本と諸外国との芸術文化交流にとって、双方向のゲートウェイとして機能している。設立後30年以上の活動によって、そうした海外事務所で培われてきたノウハウやネットワーク、それに基づいた情報の提供や相談対応などは、資金援助だけでは得られないものであり、わが国の国際文化交流にとって、貴重なリソースといえる。

 国際交流基金は2003年10月の独立行政法人化を契機に、より効率的で効果的な活動ができるよう大幅な組織変更や事業再編が行われ、従来にも増して戦略的な取り組みが求められるようになっている。

地方公共団体の文化政策と財団法人地域創造

 わが国の政府機関の文化政策においては、地方公共団体も重要な役割を果たしてきた。しかし、都道府県、市町村をあわせた文化予算は、ピーク時の1993年の9,550億円以降、一貫して減少傾向が続き、2007年度には約3,980億円にまで落ち込んでいる。その背景には、近年の財政状況の悪化や市町村合併の進展に加え、各地の文化施設の建設が一段落したことも要因となっている。

 90年代には全国各地に新しい文化施設が次々と整備され、特に劇場やホール施設は、その10年間で約1,000館、つまり年間100館のペースで新設が続いた。ちなみに、2006年3月末現在で、公立の劇場やホールは約3,300館に達しているが(地域創造調べ)、これらの施設のうち、舞台芸術の自主公演を積極的に実施している館は限られているのが現状である。その原因は、事業予算が限られていること、劇場運営の専門家や経験者が少ないことである。最近では、指定管理者制度の導入によって、公立文化施設にはこれまで以上に効率的な運営と経費の縮減が求められるようになっており、一部の事例を除いて、多くの公立劇場やホールは厳しい運営を余儀なくされている。

 そうした中、1994年に地方公共団体関係者によって設立された財団法人地域創造は、芸術文化の振興によって創造性豊かな地域づくりを実現することを目的に、全国の地方公共団体の文化行政、とりわけ各地に整備された公立文化施設の活性化に向けて、財政支援や研修交流事業など、様々な取り組みを実施している。

 2007年度の財団予算は約27億円で、その約45%にあたる12億円が、地方公共団体等が自主的に実施する創造的で文化的な芸術活動の環境づくりに向けた財政支援として支出されている。この財団の特徴的な活動のひとつに、地方公共団体や公立文化施設などの職員を対象にした交流研修事業がある。とりわけ、ステージラボと呼ばれる公立劇場・ホールのスタッフを対象にした短期集中型の研修事業は、財団設立後、既に1,800人以上が受講し、その中から、各地の劇場・ホールで活躍する有能なスタッフが誕生している。

 その他にもこの財団は、複数の公共ホールが連携して共同で演劇製作に取り組むネットワーク事業、東京国際芸術祭における地域劇団の公演、コンテンポラリーダンスやクラシック音楽のアウトリーチ活動の促進など、地域の文化施設の活性化に資する幅広い事業を展開しており、予算規模は小さいながら、全国各地の文化施設や地方公共団体の文化政策を活性化する上で、たいへん重要な役割を果たしている。

 最近の日本の文化政策は、政府機関の予算面だけを見ると停滞傾向にあると言わざるを得ない。しかしながら、舞台芸術の国際交流への関心は以前にも増して高まっており、海外の舞台芸術機関が日本の政府や公的な機関の支援を得て、日本との国際交流を推進する場合、情報や相談の窓口は国際交流基金(海外オフィス)、パートナーは国内の主要な公立劇場や舞台芸術団体、そして財源はそれらの団体が獲得する文化庁や財団法人地域創造等の助成金、といった基本構造を理解すること、それがまず第一歩となるであろう。それらに加え、今後は全国各地でアクティブな活動を展開するアートNPOとパートナーシップを組むことも、事業の実現に向けた情報収集や体制づくり、民間企業や地方公共団体からの支援金の獲得、といった面からも有効な方策となろう。

 公共、民間を問わず、様々なセクターの多様な仕組みが有効に活用され、わが国と諸外国との舞台芸術交流がますます活発になることを期待したい。
 
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