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Public Theaters and Concert Halls
舞台芸術シーンの新たな主役、公立劇場・ホールの最新動向─坪池栄子(文化科学研究所)
運営の現状と動向

 前述の調査によると、全国にある約3300館の公立劇場・ホールの内、88%が市町村立の比較的小規模なホールとなっている。大規模な都道府県立施設の場合は、専門の財団を設立して運営を委託しているが、市町村の場合は過半が直営で運営されている。専門の財団と言っても、技術職員を除き、舞台芸術の専門家が雇用されているところは少ないのが現状だ。

 芸術総監督制については、その先駆けである鈴木忠志が芸術監督を務めていた静岡県舞台芸術センターが二代目の宮城聰に引き継がれ、新国立劇場演劇部門は栗山民也から鵜山仁に、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみは平田オリザから生田萬、びわ湖ホールは若杉弘から沼尻竜典にバトンタッチされるなど、2007年には交代が相次いだ。この他、彩の国さいたま芸術劇場(蜷川幸雄)、世田谷パブリックシアター(野村萬斎)、まつもと市民芸術館(串田和美)、兵庫県立芸術文化センター(佐渡裕)、新潟市民芸術文化会館(舞踊部門:金森穣)などが芸術監督を登用しているが、日本では制度としては必ずしも定着しているとは言えず、その役割や権限については各館で異なっている。芸術監督ではないが、北九州芸術劇場や世田谷パブリックシアターのように、民間のプロデューサーを登用し、アーティストとのパイプを活用した積極的な創造活動を行うところも出てきた。また、静岡県舞台芸術センターのSPAC、新潟市民芸術文化会館のコンテンポラリーダンスのカンパニー「Noism」、ピッコロシアターの兵庫県立ピッコロ劇団など、数は少ないがアートカンパニーがレジデントしているところもある。

 音楽では、すみだトリフォニーホール(新日本フィルハーモニー交響楽団)、ミューザ川崎シンフォニーホール(東京交響楽団)、石川県立音楽堂(オーケストラ・アンサンブル金沢)のように既存のオーケストラとフランチャイズ契約を結んだり、水戸芸術館の水戸室内管弦楽団やびわ湖ホールの声楽アンサンブルのように演奏家との年間契約によりレジデント活動を実施しているところがある。特に、2005年に開館した兵庫県立芸術文化センターでは35歳以下の若手演奏家によるアカデミー式の専属管弦楽団を結成し、公立オーケストラとして積極的な地域活動を行うなど、その動向が全国的な注目を集めている。しかし、いずれも試行錯誤を続けている状態で、未だに芸術文化の専門施設としてのあり方を模索している状況と言っていい。

 運営の最新動向として挙げられるのが、「指定管理者制度」の導入である。2003年4月に「地方自治法」の一部改正が行われ、公立文化施設などの「公の施設」を管理運営する団体についての規制緩和が行われた。議会の承認を受けた「指定管理者」であれば、公益法人に限らず、NPO法人、民間企業などが公の施設の管理運営を行うことができるようになり、各地の公立文化施設で管理運営団体の公募が行われた結果、指定管理者として民間企業が参入する事例がでてきている。2007年に財団法人地域創造が実施した最新調査によると、全国の公立文化施設(ホール・劇場・美術館など)は計4265施設で、その内、自治体が直営で運営している施設が65.8%、指定管理者が運営している施設が34.2%となっている。指定管理者の内、8割近くが財団などだが、NPO法人や株式会社などこれまで公立文化施設を運営することができなかった団体も2割近く参入している。

 しかし、こうした団体には、ビルの管理会社、広告代理店、人材派遣会社など異業種も多く、民間の発想による新しい運営が期待される一方、芸術文化の専門施設として、また地域の芸術文化活動の拠点としてのミッションがどのように実現されていくかを懸念する関係者も多い。今回は、自治体が設立した芸術文化振興財団を指名して管理運営団体としたところも多いが、次回の契約更新ではほとんどの公立文化施設が管理運営団体を公募すると言われており、3年後、5年後の更新期には日本の芸術文化環境が全く様変わりしている可能性もあり、予断を許さない状況である。

 ただ、1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立して以来、各地でアートNPO法人の設立も進み、北海道の「ふらの演劇工房」や国際芸術フェスティバルの運営も行なってる「アートネットワークジャパン」のように公立文化施設の指定管理者となる団体も出てきている。こうしたアートNPOの動向次第では「指定管理者制度」がこれまでにない芸術文化環境を創出するきっかけとなる可能性もある。しかし、2008年度にはNPO法人を除く公益法人制度の抜本的な改革が行なわれる予定になっており(移行期間5年)、一般の財団・社団が設立しやすくなるのに対し、税制優遇等が受けられる公益財団・社団は認定を受ける必要があるため、既存の文化振興財団の評価や公立文化施設を運営する民間企業の扱いなど、5年後どのようになっているのか全く予断をゆるさない状況となっている。

 現在、人口1万人未満の自治体を対象に進められてきた「平成の大合併」により、公立劇場・ホールの設置主体である自治体が再編成され、各地の文化政策が大きく揺れ動いていることを考え合わせると、日本の芸術文化環境は全く新しい時代に突入しつつあると言っても過言ではない。
 
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