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Energizing the Performing Arts Through International Exchange
大学のアートマネジメント教育─小林真理(東京大学准教授)
 2005年から芸術系実践教育をスタートした桜美林大学では、立ち上げに演出家の平田オリザ氏(現・大阪大学コミュニケーション・デザインセンター教授)が関わったこともあり、駅前に解説したプルヌスホールを専門家と学生が協力して運営するとともに、積極的な公演事業や地域へのアウトリーチ事業を展開している。また、大阪芸術大学も2006年に芸術劇場をオープンしている。

 アメリカの大学では学内の劇場が地域社会のアートシーンをリードする役割を担っているが、日本の場合、大学は研究機関として地域に対しては閉鎖的な運営が行われてきた。それを考えると、こうした一連の試みは大学と地域の関係を変えていく新しい取り組みであり、極めて注目に値する。

 芸術系大学ではないが、千葉大学(現在は首都大学)の長田謙一教授(芸術学)の指導により、学生が地域に出かけていき、フィールドワークを行いながら住民とともに企画・運営・実施した「アートプロジェクト検見川送信所」(廃墟として放置されてきた施設を使ったプロジェクト)など、個別教員や研究室単位で地域のアートプロジェクトを実施する例も増えており、注目される。

 都市政策や地域政策といった公共政策、公共経営との関連でアートマネジメントを位置づけている学部や大学院も開設されている。2000年に静岡県と浜松市によって新設された、静岡文化芸術大学は、日本初の文化政策学部をもち、その中にアートマネジメントを専攻する芸術文化学科が設置されている。「地域に開く」という問題意識をもって大学運営が行われており、学生が企画・運営する本格的な薪能を市民に開放しているほか、静岡県から実質的な委託を受けて「国際オペラコンクール in Shizuoka」の入賞者記念演奏会を実施するなど、地方自治体との協働によるプロジェクトを実習の場として活用している。

 なお最近では、マンガ、アニメ、ゲーム等のコンテンツ制作をマネジメントできる人材育成を目標とするコンテンツ創造科学産学連携教育プログラムを開設している東京大学大学院情報学環もあり、アートの分野が広がりを見せている。

アートマネジメント教育の課題

 これまで述べてきた通り、一口でアートマネジメント教育といっても、その内容は多岐にわたっており、アートマネジメントという概念が拡がりをもったものとして展開されているのがわかる。大学での教育が始まった当初は、講義形式のものが多く、教養的な教育に対する批判もあった。しかし、最近ではほとんどの大学で実習形式の授業や演習、また短期間ではあるがインターンシップなどの導入が進み、実践的なプログラムになっている。

 また、昨今は、地域に開かれた大学運営が社会的な要請にまで高まっており、アートマネジメント教育を通じてさまざまな地域貢献が模索され、徐々に実を結んでいるところもでてきた。一方で、本来、アートマネジメントに携わる人材が必要なはずの公立文化施設などで、こうした専門職に対する認知度が低く、人材は育成したものの活躍の場が限られているという、需要と供給のアンバランスが問題となっている。さらに国及び地方自治体の財政状況の低迷により文化分野への投資も減少していること、2006年から、公立文化施設に指定管理者制度が導入され、これらの専門職が不安定な位置づけにおかれていることも問題となっている。

 なお、これらの大学の教育および研究をサポートする学会として、1992年には文化経済学会<日本>が、1995年には日本ミュージアム・マネージメント学会が、そして1998年には日本アートマネジメント学会が設立されている。
 
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