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An Overview
Latest Trends by Genre: ShÔgekijÔ (Small Theater) Movement
小劇場演劇の流れと最新動向─坪池栄子(文化科学研究所)
日本の主な演劇賞
読売演劇大賞
歌舞伎や能などの古典演劇からミュージカル、商業演劇、新劇、小劇場演劇などまで、ジャンルを問わず、優れた舞台作品・演劇人を顕彰する。内容は「大賞」「最優秀作品賞」「最優秀男優賞」「最優秀女優賞」「最優秀演出家賞」「最優秀スタッフ賞」「杉村春子賞」「選考委員特別賞」「優秀作品賞」など。2007年までで第15回。読売新聞社主催。

岸田國士戯曲賞
新人劇作家の作品に対し与えられる賞。新人劇作家の登竜門とされることから、「演劇界の芥川賞」とも称される。1955年に新劇戯曲賞として設置され、1961年には「新劇」岸田戯曲賞、1979年に岸田國士戯曲賞と改称され、2006年に50回目を迎えた。原則として1年間に雑誌発表または単行本にて活字化された作品が対象。白水社主催。

紀伊國屋演劇賞
東京・新宿で紀伊國屋ホール、紀伊國屋サザンシアターの2つの劇場を経営する紀伊國屋書店主催。「団体賞」と「個人賞」に分かれている。2005年末で第40回。

鶴屋南北賞
その年に上演された日本語で書かれた新作戯曲の優秀なものに与えられる。2006年に10回目を迎えた。光文シエラザード文化財団主催。

ニッセイバックステージ賞
優れた業績を上げ文化の振興に貢献した装置、音響、照明、衣裳等の舞台技術者の功績を讃える。2005年までの11年間に30名を表彰。ニッセイ文化振興財団主催。

日本照明家協会賞
照明家を対象とした世界でも珍しい顕彰制度。舞台部門・テレビ部門にそれぞれ大賞(文部科学大臣奨励賞併贈)があり、優秀賞、新人賞、奨励賞、努力賞、技術賞などが設けられている。作品・番組だけではなく、技術開発、機器改良、施設照明設計なども対象になる。日本照明家協会主催。

伊藤熹朔賞
日本舞台美術家協会の初代会長の名を冠した舞台美術の賞。年間最優秀舞台美術作品(装置、衣裳、メーキャップ等のデザイン)に与えられる「本賞」のほか「新人賞」「奨励賞」「特別賞」。毎年3月に発表される。日本舞台美術家協会主催。

テアトロ新人戯曲賞
新人作家発掘を目的とした一般公募の戯曲賞。雑誌「テアトロ」(カモミール社発行)主催。2005年で16回。

OMS戯曲賞
関西発信の戯曲賞。2003年に閉館した扇町ミュージアムスクエア(OMS、1985年開館)の10周年記念事業の一環として1994年にスタートした。関西2府4県に在住、または関西を主たる活躍の場とする劇作家が前年に書き下ろし、上演された作品を対象とする。応募方式。2005年で12回。大阪ガス主催。

芸術選奨(芸術選奨文部科学大臣賞・芸術選奨新人賞)
演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等の10分野において、その年に優れた業績を上げ、新生面を拓いた者に、芸術選奨文部科学大臣賞または芸術選奨新人賞が贈られる。1950年度に発足。文化庁主催。

文化庁舞台芸術創作奨励賞
舞台芸術各分野において独創的な優れた舞台芸術創作作品を広く募り、優秀作品に創作奨励賞を授与するもの。現在、音楽分野の部門は、管弦楽・合唱曲・オペラのうち1部門と邦楽。演劇分野の部門は、現代演劇。1978年度発足。文化庁主催。

芸術祭賞
文化庁芸術祭において、演劇、音楽、舞踏、演芸の4部門と、テレビ、ラジオ、レコードの部門から優れた成果を上げた公演・作品に対して贈られる賞。それぞれの部門に「大賞」「優秀賞」「新人賞」などがある。2005年で60回。文化庁主催。
 もうひとつ、新世代の動向として押さえておかなければならないのが、地域演劇の興隆である。80年代の小劇場ブームの時にもいのうえひでのり、マキノノゾミら、後に東京で活躍する才能が生まれているが、特に90年代後半に入り、これまで圧倒的に東京に一極集中していた小劇場演劇シーンに異変が起こり、大阪、京都から次々と新しい劇作家が台頭し、演劇界を驚かせた。

 それには、85年にオープンして以来、大阪の小劇場演劇の拠点となっていた劇場、扇町ミュージアムスクエア(2003年閉館)と兵庫県伊丹市が開設した公立劇場、伊丹アイホールが果たした役割が大きい。いずれも若い演劇人のサポートに力を注ぎ、扇町ミュージアムスクエアが94年に創設したOMS戯曲賞の受賞者には、松田正隆鈴江俊郎岩崎正裕土田英生などが並んでいる(松田、鈴江は時を経ずして劇作家の登竜門である岸田戯曲賞を受賞)。また、各地の公立劇場を足掛かりにして地域演劇シーンが活性化する傾向にあり、弘前劇場(青森県)の長谷川孝治や飛ぶ劇場(北九州市)の泊篤志など、すでに地域を拠点に活動しながら全国に通用する才能も生まれてきている。

 この他、小劇場演劇シーンの新しい動きとしてあげられるのが、ワークショップブームと小劇場のオープンラッシュの2点である。ワークショップブームについては、全国に多数建設された公立劇場が演劇教育プログラムをスタートしたり、演劇の技能を子どもの育成に役立てたいといった、これまで日本にはなかった社会的なニーズが生まれたことが大きい。小劇場演劇の演出家が自分たちの技能を作品づくり以外で発揮できる場が出来たことは、今後の演劇環境を考える上で極めて大きな変化と言える。

 小劇場のオープンラッシュについては、バブル崩壊を機に不動産価格が下落し、都心に空きビルなどの遊休施設が急増したのがきっかけ。現在、そうした場所を借りた小劇場がいたるところに生まれており、アマチュア活動の拠点となっている。冒頭でも触れたが、大学における演劇教育の大きな変化に加え、こうした創作環境、発表環境の変化が今後の小劇場演劇シーンをどのように変えていくか、注目したいところだ。

最新トピックス

 最新トピックスとしてふれておきたいのが、2004年度と2005年度に岸田戯曲賞を受賞した岡田利規三浦大輔のセンセーショナルな登場である。第五世代のトップランナーである阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史が人間の暴力的で生々しい裏面をファンタジー(物語)として描いて新境地を見せたのに続き、岡田と三浦は「リアル」をキーワードに、現代の若者の「生理感覚」から発想した演劇表現で注目されている。若者の私語「超リアル日本語」と彼ら特有の身振りを舞台化した岡田のユニット「チェルフィッチュ」や、俳優の生々しい反応を引き出す究極の手法として舞台で赤裸々に性行為を取り上げる三浦率いる「ポツドール」の登場は、小劇場演劇の活力がいまだに失われていない証拠とも言えるのではないだろうか。また、2006年度の岸田戯曲賞は該当者なしという結果だったが、他人を責め立てる過剰な自意識をもつ主人公を描き続く本谷有希子が注目を集めた。

 こうした若い世代の感受性を代表する作家に対し、時代と向き合う社会派・庶民派とも呼べる作家の創作意欲が目立つのも最近の傾向となっている。引き籠もりや自衛隊問題などジャーナリスティックな視点で作品を発表し、海外の実験劇も積極的に取り上げている燐光群率いる坂手洋二、第二次大戦後の価値観の変化や庶民の生活を批評性のあるコメディとして描く永井愛、在日韓国人3世としての人生経験を踏まえたタフでコミカルなマイノリティの群像を描き、映画の人気脚本家としても活躍する鄭義信、現代社会の片隅のような場所に集う人々に光をあてる青木豪、昭和の失われた人情を描く中島敦彦、そして日本を代表する国民作家井上ひさしの戦後をテーマにした作品の数々など、世代も表現方法も異なるが日本社会と向きあう姿勢に通じるものを感じる。

 この他、公立劇場の芸術監督の新たな動きにも注目があつまっている。蜷川幸雄(彩の国さいたま芸術劇場)が旗揚げした付属高齢者劇団「ゴールド・シアター」、狂言師野村萬斎(世田谷パブリックシアター)が伝統演劇と現代演劇を融合するというトータルシアターの試み、そして串田和美(まつもと市民芸術館)が歌舞伎の中村勘三郎と組んで演出する新歌舞伎「コクーン歌舞伎」「平成中村座」、鈴木忠志から芸術監督を引き継いだ宮城聡(2代目静岡県舞台芸術センター芸術総監督)など、その動向から目が離せない。

 また、三谷幸喜の代表作「笑いの大学」の英語版『The Last Laugh』、野田秀樹の英語版『The Bee』がロンドンで、松田正隆の韓国版・中国版「海と日傘」がソウル・上海で公演された他、日本の現代戯曲のリーディングも海外で行なわれるようになど、こうした傾向は今後ますます盛んになるのではないだろうか。


参考文献:「ぴあ」(1972年〜90年)、河竹繁俊「日本演劇全史」、嶺隆「帝国劇場開場」、扇田昭彦「日本の現代演劇」
 
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