The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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上海大劇院 ©R PRODUCTION
北京北兵馬司劇場(北劇場)の入り口
©R PRODUCTION
国家大劇院(建設中の様子)
© R PRODUCTION

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Artist aAn Ovewview.
2004.12.6
A new face of China, At the forefront of the performing arts in China KIKUCHI,Ryoko(Producer, R PRODUCTION)  
知られざる中国舞台芸術最前線,菊池領子(R PRODUCTION,代表,文化事業プロデューサー)  
劇場建設ラッシュと独立採算制への移行
現在、中国では希にみる劇場建設ラッシュとなっている。代表的なものが天安門の西側に建設された「国家大劇院」(オペラハウス2,416席、コンサートホール2,017席、劇場1,040席)だ。2008年のオリンピックまでの間、こうした国家プロジェクトだけでも中国全土で50 以上あり、ゼネコンや設計事務所、設備会社など中国内外の企業が激しい争奪戦を繰り広げている。ほかにも市や地区レベルの施設、教育機関内の施設など、その総数は把握しきれない。完成後は多くの運営人員が必要となるのは必至で、劇場建設前の視察やスタッフ研修のために日本の劇場を訪れる中国人舞台関係者が増えている。また、日本の音響、照明会社の中国進出も始まった。
建設される劇場は、私の知る限り3 種類に大別できる。1 つ目は「北京人民芸術劇院(北京人芸)」や「天津人民芸術劇院(天津人芸)」のような、政府系芸術団体が所有するものだ。北京人民芸術劇院も天津人芸も目下新劇場の建設計画が進行中である。2つ目は政府系の貸館専用劇場であり、中国内外の上演するのが目的だ。先に述べた国家大劇院や上海大劇院がその代表的なものである。そして3 つ目は民間による劇場だ。近年不動産産業が好調な中国では、ホテルや娯楽施設の建設も盛んで、その中に劇場をつくろうという動きも活発になっている。
景気以外にその引き金となっているのが、中国政府による改革政策である。元来中国では限られた芸術団体だけに「上演権」が与えられていた。上演権を有する団体以外はチケットを販売しての上演ができず、上演するには上演権を有する団体に費用を支払って名義を借りるのがこれまでの原則だった。
例えば、政府系芸術団体に所属する演出家が自主公演を行いたいと考えた場合、資金は自分で用意しても公演の主催者は自分ではなく、上演権をもった芸術団体に名義を借りなければならなかった。
この仕組みを知らない外国人からすると、誰が主体的に作品を製作したのかわからない。
2001 年と2003 年に来日した北京人芸所属の演出家、李六乙(リー・リュウイ)の『非常麻将』の場合、2001 年時点では中央実験話劇院、2003 年は中国国家話劇院(中国青年芸術劇院との合併後、中国国家話劇院に名称変更)の名義になっていたが、実際は李六乙が出資し、俳優たちの報酬は利益に応じて支払うという二人三脚の体制で2000年に製作されたもので、民間経営的なこの手法は当時の中国では画期的だった。
こうして他人名義の自主公演を打ち、自己名義での公演の機会をうかがっていた李六乙は、「営業性演出管理条例実施細則」の内容改正の結果、2003年秋の公演でようやく実現にこぎつけた。この細則によると、「人員や資本金など一定の要件を備えた企業は、資本金額と経験、業績に応じ、認められた行政区域内で営利公演を行うことができる」とある。李六乙はこの要件を満たす法人を設立し、公演を実現した。
同様に、不動産業などで莫大な利益を上げた民間企業も、この細則に則って文化産業に参入しようと劇場建設に投資し始めた。最近、舞台芸術作品の製作、上演ノウハウをもたない新規参入企業から芸術家に対する計画や運営に関する業務委託が増えている。今後、こうした民間劇場も彼らの新たな活躍の場としてクローズアップされるようになるだろう。
この細則に見られるように、こうした改革の背景にはこれまで国家の経費で賄われてきた文化事業を独立採算方式で行わせ、産業として育成しようという中国政府の文化に対する基本方針の変更がある。そのため、民間企業が参入してくるだけでなく、国有企業も経営改革を迫られ、民営化の方向に向かいつつある。
 
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