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「蟋蟀賭博の若旦那」
(天津人民芸術劇院製作)
©天津人民芸術劇院
広東省芸術研究所の取り組み〜芸術家にスタジオを提供
そのひとつの例が、前述した政府系芸術団体が採算重視の製作体制へ移行し始めたことである。これまでは基本的に劇団内部の人員で作品を製作していたが、最近は作品ごとに中国全土から優秀かつ適切な人材を集めて作品製作を行うプロデュース方式へと変化してきている。
北京人芸も天津人芸も同様の取り組みを行っているが、最も顕著な例が香港、マカオに隣接する中国南部の広州市にある「広東省芸術研究所」の試みである。「研究所」という名称がイメージさせるのは、作品製作ではなく学術研究であろう。しかし、広東省芸術研究所は「研究、実験、製作」を三位一体のものとしてとらえて活動しており、さまざまな分野の芸術の製作活動を行っている。現代劇、広東省の伝統劇、伝統楽器の音楽ユニットなどその対象は幅広い。
この広東省芸術研究所の斬新な試みとして注目されるのが、芸術家に自由な創作活動の場として独立採算制のスタジオをもたせていることである。例えば、所属している演出家の王佳納(ワン・ジアナー)は、2000 年4 月、研究所内に「佳納(ジアナー)戯劇工作室」をオープンした。同時に、舞台美術家、音楽家、映像監督も各自のスタジオを持ち、彼らはしばしば共同で作品の製作を行なっていると言う。
このように研究所ではさまざまな分野の芸術家の自由な活動を支援すると同時に、これら現代的な経営感覚を持ち合わせた各分野の第一線の芸術家を擁して、研究所としての作品も製作している。また、研究所内の芸術家に留まらず、全国から適材を探す傾向はここも同様である。こうした状況を見ると、広東省芸術研究所は研究所というよりプロダクションといったほうがより理解しやすい。
なお、個人のスタジオはその後も増え、最近は広東省歌舞劇院で民間および伝統舞踊を主に手掛ける30 歳代の若手演出家、王向東(ワン・シアンドン)を新たに招き入れ、モダンダンスでは広東実験現代舞団の団長である舞踊家、高成明(ガオ・チョンミン)にもまたスタジオを用意した。広東実験現代舞団は92 年に設立された中国初の現代舞踊団だが、舞台芸術監督である香港の舞踊家・曹誠淵(ウィリー・ツァオ)と最近資本提携をしたばかりである。香港は返還されたとはいえ特別行政区であり、外資と資本提携をしたという認識が強く、芸術文化領域でもこうした外資との提携の動きが始まりつつあるといえる。北京、上海と比較し、日本人には認識の薄い広東省だが、改革開放の風は南から吹くというとおり、改革の最先端をいっているのである。

製作に乗り出す政府系エージェント
もうひとつ、民営化の動向としては、政府系エージェントが作品製作に乗り出したことがあげられる。これまで多くのエージェントは一時的な公演のマネジメントを主としていた。しかし、最近は独立採算型の体制への移行を目指して業務範囲を拡大しつつある。
57 年に設立された中国最大手のエージェントのひとつ、「文化部中国対外演出公司(中演)」は政府間の舞台芸術交流の仲介を主要業務としていた。しかし、海外での商業公演のノウハウがない上、著作権意識が低いため、往々にして価格を抑えられてしまうという苦い経験から、97 年に「中演環球芸術制作有限会社」を設立し、独自の作品製作および海外公演のマネジメントに踏み切った。
第1 作の少林寺拳法をモチーフにした作品は、2000 年からの5 年間で、北米、オーストラリアなどで200 公演以上の海外公演を行い、40 万人以上の観客を動員した。また、系列の「中演都市劇場管理有限会社」は北京の天橋劇場(1200 席)の業務を受託し、貸館公演のマネジメントを行っている。日中国交回復30 周年記念事業として行われた『蝶々夫人』が上演されたのもこの劇場である。
今後は蓄積したノウハウを活かして作品の自主製作を行い、さらに大きな収益を上げていく予定だという。現在、中演のようなエージェントは大手エージェント同士の提携を進めて市場拡大を図ると同時に、天橋劇場のような上演拠点をもち、長期的視点をもった公演マネジメント事業の展開に向かいつつある。
 
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