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Performing Arts Network Japan
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北京現代舞団 ©北京現代舞団
「非常麻将」(北京初演時のキャスト版)
©北京李六乙戯劇工作室
民間劇場と民主化世代の台頭
これまで政府系の劇団、劇場、エージェントの動向を中心に述べてきたが、民間劇場の動きはどうだろうか。不動産系企業などによる劇場は、娯楽もしくはホテルに宿泊した観光客向けの演目をラインナップすると思われる。しかし、それとは別に民間で政府系芸術団体と伍しながら、中国演劇界に新風を送り込む動きも出てきている。
70 年代初頭生まれ、30歳代前半の袁鴻(ユアン・ホン)がプロデューサー兼芸術監督を務めている北京北兵馬司(ベイビンマースー)劇場、略称「北劇場」の存在である。北京の中心部の胡同(フートン、伝統的な住宅街を形成する小道)に静かに佇む約400席の小劇場だ。先に述べた中国国家話劇院の誕生に伴って空いた元中国青年芸術劇院の劇場である。
2001 年の時点では、袁鴻と意気投合した台湾の著名な演出家、頼声川(ライ・ションチュアン)が出資し、彼の率いる「表演工作坊」の北京の拠点になる予定だったが、台湾資本の受け入れが許可されず、結局袁鴻自らが経営を行うことになった。スタッフは皆本業をもち、袁鴻の活動を支持して集まっている人たちである。金融関係、報道関係、研究者など、各自異なる専門をもって作品製作や公演の実施に関わっている。
袁鴻の活動のテーマは「演劇の大衆化」「民衆への回帰」である。中国では、プロ集団である政府系芸術団体が歴史を重ね揺るぎない地位を築いてきた一方、表現様式が乏しく、内容が観客の生活とかけ離れすぎて現実味がないといった課題を抱えていた。また、曹禺(ツァオ・ユィ)が処女作を大学時代に書いたように、本来はプロアマ問わず誰にでも表現する資格はあるはずだ。しかし、現状は上演はプロのみに許された特権と化している。
こうした現状を打破し、想像力溢れる大学生たちに演劇界を開放し活性化したい、というのが袁鴻の思いだった。そこで、彼は2001年に「北京高校大学生戯劇展演」という学生演劇祭を企画。北京人芸の小劇場で6作品を上演した。それが第4回の2004年は、北劇場、北京人芸小劇場、国家話劇院実験劇場の3会場で31 作品を上演するまでに発展。また北京以外に、広州、上海にも会場が広がった。
現在、天津人芸も独自の大学生演劇祭の開催を考えているようで、こうした動きは今後中国各地に普及すると思われ、ここから将来どんな新人が出てくるのか楽しみである。決して潤沢な資金があるわけではないが、北劇場ではほかにも北京、香港、台湾小劇場演劇祭の開催や新人の育成、中国各地の巡演など、さまざまな企画を行っている。
民間で言えば、もうひとつ着目すべきはモダンダンス、コンテンポラリーダンスカンパニーの動きであ る。中国ではそのようなダンスの概念自体がまだ新しく、92年に広東省に初の舞踏団が設立されて以来、まだ10年足らずの歴史しかない。そのため若手が中心となっており、民営のカンパニーも多い。95年に北京市文化局の指導下で設立された北京現代舞団も2004年6月に民営化を遂げた。団長の張長城(ジャン・チャンチョン)もまた袁鴻同様30歳代前半で、海外公演や招聘公演を積極的に進めてネットワークを築くと同時に、若手芸術家支援のための基金の設立に尽力している。
現在30 歳代半ば前後の人たちといえば、89 年の天安門事件の頃、大学生だった世代だ。当時民主化を叫んだ世代が今、民営化の牽引役になり、芸術界をも動かし始めている。
 
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