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三月の5日間
撮影:片岡陽太
Data
[初演年]2004年
[上演時間]約1時間20分
[幕・場面数]2幕10場
[キャスト数]7人(男5・女2)
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Play of the Month
2005.7.20
Sangatsu no Itsukakan (Five Days in March)    Toshiki Okada  
三月の5日間 岡田利規  
2003年、アメリカ軍がイラク空爆を開始した3月21日(アメリカでは20日)。この日を間に挟んだ5日間における、数組の若者たちの行動を語る戯曲。語るとは、文字通り「語る」のであって、俳優たちが役を「演じる」のではないところにこの作品の最大の特徴と魅力がある。

六本木のライブで知り合い、そのまま渋谷のラブホテルに5日間居続けになり、たまに外へ食事に出ては、不思議と渋谷にいつもとは違う新鮮な感覚を覚えるミノベとユッキー。ミノベの友人で、少しばかり電波系の少女ミッフィーと映画館で出会うアズマ。渋谷の町を行進する反戦デモに「ゆるい」感じで参加するヤスイとイシハラ。

舞台に登場する男優1男優2と名づけられた7人の俳優たちのセリフは、たとえば次のようなものだ。「それじゃ『三月の5日間』ってのをはじめようって思うんですけど、第一日目は、まずこれは去年の三月っていう設定でこれからやってこうって思ってるんですけど、朝起きたら、なんか、ミノベって男の話なんですけど、ホテルだったんですよ朝起きたら、なんでホテルにいるんだ俺とか思って、しかも隣にいる女が誰だよこいつしらねえっていうのがいて、なんか寝てるよとか思って、っていう、」このようにして俳優たちは、行動の当事者となって物語を展開するのではなく、入れ替わり立ち替わりながら、彼らから聞いた話を観客に説明するというスタイルで、代話していく。

事件らしい事件の起こらないこの作品で試みられているのは、「現在的な表現」への真摯な模索である。まず、いかにもそれらしく「役を演じる」ことの演劇的な欺瞞を排除し、次に、いかにもセリフらしいセリフの嘘くささを取り去ってみている。

いま現在における、最も誠実な表現の姿勢を突き詰めたはてに現れたこの作品では、「戦争」という巨大な出来事と、ほとんど些末ともいえるリアルな日常を巧妙に対比させ、日本の若者たちの抱く、とらえどこのない現実感を見事に構造化している。

作者プロフィール:[生年]1973
横浜生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。97年に、ソロ・ユニット「チェルフィッチュ」を旗揚げ。チェルフィッチュ(chelfitsch)とは、自分本位という意味の英単語セルフィッシュ(selfish)が、明晰に発語されぬまま幼児語化した造語。「より遠くに行ける可能性のある作品」を生み出すため、ある方法論を持ちつつも、その方法論をそれ以上「引き寄せないように、それをいつまでも掴んでいないように、すぐに手放すように」心がけるという、それ自体が不思議な方法論で演劇作業を実践する。01年3月発表『彼等の希望に瞠れ』を契機に、現在の作品に見られるような超リアル日本語を使う作風に変化。だらだらとしてノイジーな身体性を持つようになる。横浜STスポットを拠点に活動。04年、『三月の5日間』で第49回岸田戯曲賞を受賞。選考委員からは、演劇というシステムに対する強烈な疑義と、それを逆手に取った鮮やかな構想が高く評価された。とらえどころのない日本の現在状況を、巧みにあぶり出す手腕にも注目が集まった。
http://chelfitsch.net/
 
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