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ワンマン・ショー
ペンギンプルペイルパイルズ
『ワンマン・ショー』
(2003年8月/シアタートップス)
Data
[初演年]2003年
[上演時間]約1時間50分
[幕・場面数]6幕・16場
[キャスト数]8人(男4・女4)
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Play of the Month
2005.9.23
One Man Show  
ワンマン・ショー 倉持裕  
クエンティン・タランティーノ監督の映画『パルプ・フィクション』や、同じくデビット・リンチ監督の映画作品『ロスト・ハイウェイ』から想を得たという本作は、時間と空間を自在に切り張りした、極めて複雑なジグソー・パズルのごとき構成になっている。
観客は、ところどころにちりばめられたキーワードのせりふや、水音などの効果音、あるいは電話を掛けるなどの登場人物たちの動作を手がかりに、頭の中で、出来事の時系列の整合を少しずつ整えていく作業を求められる。
物語の最後に、バラバラだったエピソードのかけらたちがピタリと揃い、謎めいていた劇の全体像がはっきりと見える瞬間のスリルも、この作品の見どころのひとつである。
劇の進行とともに、観客に与えられていくジグソーのピースは、ほぼ以下のようなものだ。

青井あゆむは、寝る間も惜しんで葉書を書き続ける「懸賞マニア」だ。求められていない事柄まで細々と書き込めば当たる確率が高くなると考え、とうとう身のまわりの人物の名前を借りてまで、趣味・性格・家族構成を捏造して書き込み、ひがな1日自室に閉じこもって葉書を送ることに余念がない。

あゆむの仕事は、飛行機に乗って町の航空写真を撮り、変化があれば役所に報告するものだ。ある日、増築された部屋があるにもかかわらず、届け出のない佐藤家を訪ねるが、主はいつも留守。妻・佐藤ひろみと、主の弟・ただしが相手をする。あゆむは、佐藤家に本当に主がいるのかどうかあやしんでいる。

あゆむの妻・紫(ゆかり)は、あゆむから受け取った葉書を投函せず、段ボールにため込んでいる。

出されなかった葉書のギッシリと詰まった段ボールを、どこかに捨てに行ってくれと頼まれたのは、紫の兄・白根赤太である。

無職だった赤太は、自治体の女・イェローから仕事を斡旋された。依頼主・緑川緑から言い渡された仕事の内容とは次のような奇妙なものだ。「近いうちに、一人の男が私についてあれこれ聞きにくるが、私のことなんて知らないと答えてほしい」。

緑は、夫・黒雄と青井家の隣りに暮らしている。黒雄は、青井家の庭にある池が、少しずつ大きくなっているようだと、毎日監視している。

赤太が捨てにいった段ボールは、いったんは山の中に廃棄されたものの、ある他者の悪意によって、再び青井家の玄関に戻ってきてしまう。


このような断片の集積によって表現されているのは、現実とはひとつではなく、見定めがたいものであり、受け取り手の数だけあるという、不可知論である。それゆえ、劇中では、人物Aと人物Bの視点は混在させられ、出来事Xは、X'とX''として描かれる。
さらに、劇の最後にあかされるのは、8人の登場人物は、佐藤家の増築された部屋に閉じこもって懸賞葉書を書き続ける一人の男が作り上げた、架空の人格だということである。つまりその意味で、この劇全体は「ワンマン・ショー」なのだ。

作者プロフィール:[生年]1972
学習院大学経済学部経済学科卒。92年、執筆活動開始。94年、岩松了プロデュース公演『アイスクリームマン』に俳優として参加。2000年、自らの作・演出による舞台を「ペンギンプルペイルパイルズ」というユニット名で発表しはじめる。物事を独自のシニカルな視点で切りとり、しっかりとしたストーリー展開を保ちながら、絶妙な台詞の応酬と間で観客を引きつける力を持つ。2004年、『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞を受賞。
http://www.penguinppp.com/
 
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