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別れの唄
© T.Aoki
Data
[初演年]2007年
[上演時間]1時間30分
[幕・場面数]1幕1場
[キャスト数]8人(男5・女3)
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Play of the Month
2007.5.24
Chants d'adieu  Oriza Hirata 
別れの唄 平田オリザ 
 場所は東京郊外、多摩丘陵のふもと。新興住宅地に古くからある一軒家の居間。月の美しい秋の夜に、37才の若さで病死したフランス人女性マリーの通夜が営まれている。マリーは日本でフランス語の講師をしており、夫武雄との間に3才の娘文子がいる。ひとしきり参列の客が去り、親族のみが残ったところから舞台ははじまる。マリーの親族が多いこともあり、会話は基本的にフランス語である。

 喪主・武雄は明日の準備などで落ち着かないが、その他はすることもないのでなんとなくのむだ話がはじまる。葬儀のためにフランスからやってきたマリーの弟のミッシェルには日本の文化がいちいち不思議だ。どうして美しくもないビルが林立しているのか、猿が温泉に入るのか、教会でもない葬式のためだけの施設があるのはなぜか、それらの質問に武雄の妹由希子や日本に住むマリーの友人アンヌがフランス語と日本語を交えてなんとか答えている。

 そこにジュリアン(マリーの父)とアイリス(マリーの母)、武雄も加わるが、武雄は同席しつつも同じ部屋で葬儀屋との打ち合わせもしている。葬儀の値段や火葬、お墓、弔電、席決めなど日本人にとっては当たり前のことが、フランス人から見ると謎だらけ。打ち合わせを通訳してもらっていたいたジュリアンたちからいちいち質問が飛ぶ。

 そこにマリーの元夫、フランソワが予告もなくフランスからやってきた。フランソワは由希子の案内でマリーの祭壇のある部屋へ。フランソワが嫌いなミッシェルはタバコを吸いに外に出て行ってしまう。

 フランソワがマリーの遺体にキスしようとし、止めに入った葬儀屋を殴ったためにひと騒動もちあがる。「葬式にトラブルはつきもの」と平然としている葬儀屋と謝るフランソワ、仲裁している由希子も加わり、居間では日本人の宗教観、結婚観などついての四方山話がはじまる。

 フランソワと葬儀屋がひきとった後の居間。

 ジュリアンとアイリスは妻が死んだというのに泣かない武雄に、なんとなく複雑な感情を抱いている。武雄はそんな雰囲気を察するでもなく、探し物をはじめた。しばらくすると、小説を一冊持って戻ってくる。有島武郎「小さきものへ」。母を失った子供達への、励ましの言葉が綴られている。その一節を紹介する武雄。彼は今、なんとなく、その文章の気持ちが分かるのだと言う。

 タバコを吸いに行っていたミッシェルが居間に戻り、今夜は月が綺麗だという。日本語とフランス語が飛び交い、月についての四方山話が続く中、マリーへの複雑な感情を抱いていた由希子が義姉にも月を見せたいと中座するところで幕。

作者プロフィール:[生年]1962
1962年東京生まれ。劇作家・演出家。劇団「青年団」主宰。東京・こまばアゴラ劇場支配人。大阪大学コミュニケーション・デザインセンター教授。
こまばアゴラ劇場の経営者として小劇場界に関わる一方、1983年に、そこを拠点に活動する青年団を旗揚げし、劇作家、演出家として活動を始める。「現代口語演劇理論」を掲げ、日本人の生活を起点に演劇を見直し、「静かな演劇」と称された1990年代の小劇場演劇の流れをつくる。緻密な計算によって演出する手法は評価が高く、劇作家、松田正隆と組んだ一連の作品は話題になった。
演劇はもとより教育、言語、文芸などあらゆる分野の批評、随筆などを各誌に執筆。近年は、公演やワークショップを通じて、フランスをはじめ韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、アイルランド、マレーシア、タイ、インドネシア、中国など海外との交流も深めている。また、2002年度から採用された国語教科書に掲載されている平田のワークショップ方法論により、年間で30万人以上の子供たちが、教室で演劇を創るようになっている。他にも障害者とのワークショップ、駒場ほか地元自治体やNPOと連携した総合的な演劇教育プログラムの開発など、多角的な演劇教育活動を展開している。
運営する「こまばアゴラ劇場」および稽古場をかねた実験スペース「アトリエ春風舎」では、青年団に所属する演出家、劇作家が「青年団リンク」として劇団内で不定形のユニットを作り、2002年度から独自の企画公演を行っている。劇団員の誰もが自由に企画を提出することができ、若手を中心にした団員の創作活動が批評の対象となるよう本公演に準じる形で行われる。その後、劇団内ユニットから独立して現在では独自の活動を行っているカンパニーもあり、これまでに五反田団の前田司郎、地点の三浦基らが輩出。また、1989年からこまばアゴラ劇場がホストになり「各地域のカンパニーが当たり前のように東京公演をできる環境作り」を目的として掲げる舞台芸術フェスティバルを開催。2001年からは「サミット」フェスティバルとして毎年春と夏に開催している。旬のアーティストをフェスティバルディレクターに選出し、公演ラインナップの選定などすべてを行う。今年度のディレクターは、劇団「チェルフィッチュ」を主宰する劇作家・演出家の岡田利規が務めている。
95年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞、97年『月の岬』(松田正隆作、平田オリザ演出)で第5回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、02年『上野動物園再々々襲撃』(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞、03年『その河をこえて、五月』(日韓共同作・演出/新国立劇場制作)で第2回朝日舞台芸術賞グランプリを受賞。戯曲以外の著書に、『演劇入門』(講談社)、『話し言葉の日本語』(井上ひさし氏との対談集、小学館)、『芸術立国論』(集英社)など多数。

劇団「青年団」   http://www.seinendan.org/
 
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