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妻の家族
妻の家族
Data
[初演年]2007年
[上演時間]2時間10分
[幕・場面数]一幕五場
[キャスト数]12人(男8・女4)
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Play of the Month
2007.7.30
Tsuma no Kazoku (My Wife's Family)   Satoshi Suzuki 
妻の家族 鈴木聡 
 時は2007年8月の7日間。
 場所は東京、三鷹市下連雀の三田村家。その中庭を挟んだ母屋と離れ。
 蝉の声する真夏。三田村家の子供達が次々と実家に帰ってきた。母、治子から「ハハキトク、スグ帰レ。ハハ」という冗談とも本気ともつかないメールが来たからだ。本気にした末娘の多佳子を除いてはみな冗談と思っていたが、それでも病気で寝こんでいる母がふと心配になった。娘たち4人はそれぞれの夫や恋人を連れての帰省、久しぶりの家族集合である。

 三田村家の家系は少々複雑だ。現在七二歳の治子は3回結婚している。
 1度目は親に決められた相手、英信と。英一郎と英子が生まれたが、英信はその後死亡。英一郎は現在も母の面倒を見つつ、50歳を超えて独身。キオスクで働く英子は25才年下のミュージシャン佐野と交際中。

 2度目の相手はタクシー運転手の鶴雄。つぐみとひばりが生まれたが、鶴雄が怪しい投資話にのり失敗して離婚。つぐみは離婚3回、転職7回、糸屋に勤めているがIT企業勤務のエリートだと言い張る。ひばりはOLで、脳学者の山根と結婚。

 3回目の結婚は文雄と。澄江と多佳子が生まれたが、バブル時にナタデココに手を出して多額の借金を抱え離婚。澄江は骨董屋の酒寄と結婚し、多佳子は小学校教師の松川と入籍したばかりだ。

 冒頭、真面目な松川は多佳子の父親に一刻も早く挨拶しなくてはと思っている。多佳子が急かしたから籍を入れたのだが、家族の誰にも会っていないことが気になって仕方がない。しかし多佳子から詳しく家族について説明を受けていない彼には、この家は複雑すぎた。挨拶する人する人、多佳子の父親ではない。やっと文雄にたどりついた頃、ようやく家族の事情がわかってくる。

 その夜、4姉妹は、それぞれのカップルの抱えている悩みについて誰からともなく話し始める。理由はまちまちだが、どのカップルも少なからぬ借金を抱えており、実はこの帰省でなんとかお金を作れないかという目論見があったのだ。母が亡くなれば、この家を売って借金が返せると…。しかし母は元気だった。急いでお金が必要な夫婦もいる。姉妹は、思い余って長男の英一郎に相談してみる。

 英一郎は怒った。今まで母の世話をしていたのは自分一人で、みな、家を出て勝手な人生を送っているのに、お金に困った時だけ頼ってくるとは。姉妹との口論の末、英一郎は翌日、「マウンテンバイクで空峠を走りに2,3日出かける」と言い残して行ってしまう。

 数日後。お葬式が営まれている。治子の、ではなく英一郎の。彼のものとおぼしき落雷で黒焦げの死体が見つかったのだ。喧嘩はしたものの、やはり英一郎がかけがえのない家族だったことを実感し、悲しむ兄弟姉妹たち。

 しかし、借金問題は依然解決しない。葬式の最中にも関わらず、それぞれの抱えている問題が新参者の松川の目の前で明らかになっていく。そして、ついに多佳子は姉妹たちが止めるのも聞かず、松川に愛想をつかされるのを覚悟で、自分の衝撃的な過去を告白する。が、しかし松川は意外なことを切り出した。

 自分が持っているマンションを売ろう。その売上で、みんなの借金の七割くらいは返せる。「住むところが無くなる」という多佳子に、「みんなでこの家に住めばいい」と言う。

 実は松川、荒んだ小学校に疲れ果てて登校拒否に陥り、教師を辞めようと思っていたのだ。しかし多佳子の家族に接し、問題だらけの人間こそ実はチャーミングだと思えたこと、その家族に一員に自分もなりたいと思えたことに勇気を得、また学校に行ける気がしてきたのだ。そして、いろいろな過去を背負った多佳子ではあるが、ともに生きていこうという気持ちにもなった。

 松川の申し出に、全員が感謝する。 

 と、そこに英一郎が帰って来た。実は山で温泉に浸かっている間に盗難にあったのだ。焼け焦げの死体は、英一郎の服を着た泥棒だったというのだ。ほっとする一同。家族のかけがえのなさをかみ締めつつ、幕。

作者プロフィール:[生年]1959
1959年東京都生まれ。早稲田大学政経学部在学中に「演劇集団てあとろ ‘50」にて脚本・演出を担当。卒業後、博報堂に入社。コピーライター、クリエイティブディレクターとして活躍。1984年、劇団サラリーマン新劇喇叺屋(現ラッパ屋)を結成、主宰。全作品の作・演出を担当。「大人のエンターテインメント」を目指し、普段あまり劇場に足を運ばない社会人の観客層の開拓を試みる。現在では、身近でリアルなコメディを提供する脚本家として、演劇、映画、テレビドラマ界などで幅広く活動している。ラッパ屋『あしたのニュース』(脚本・演出)とグループる・ぱる『八百屋のお告げ』(脚本)で第41回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
 
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