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鳥瞰図
鳥瞰図
シリーズ・同時代Vol.1
『鳥瞰図─ちょうかんず─』
(2008年6月11日〜22日/新国立劇場THE PIT)
作:早船 聡
演出:松本祐子

撮影:谷古宇正彦
Data
[初演年]2008年
[上演時間]約2時間05分
[幕・場面数]一幕七場
[キャスト数]8人(男5・女3)
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Play of the Month
2008.7.22
Choukanzu by Satoshi Hayafune 
早船 聡『鳥瞰図』 
 東京湾岸のある町。釣船宿の数日間を切り取り、宿の家族や出入りする常連たちのやりとりから、彼ら一人一人の背負った屈託を浮かび上がらせることで、まさに鳥瞰図的な人間模様の哀切を描き出す。

 夏の夕方。常連客の杉田、アルバイトの勇太、元漁師の老人峰島、近所に住む照之と姉の朝子が集まり、不倫を妻に見つかって針のむしろに座る生活の杉田をからかっている。やがて船宿の主にして船長である茂雄のうわさ話が始まる。前妻と別れてからまるで女っ気のない茂雄が、7、8才くらいの女の子を連れてディズニーランドにいたのを、照之が目撃したのだ。折りもおり、茂雄は母である女将の佐和子に、持ち船を売りたいと相談を持ちかけ、何やらまとまった金が要る様子。そこに一人の少女が訪れ、先ごろ交通事故で亡くなった茂雄の姉波子の娘、片岡ミオと名のる。

 翌日の夜。ミオは、写真家だった祖父と、彼が写した渡り鳥のいる海辺の写真の場所が知りたくて訪ねてきたことを打ち明ける。でもその祖父はこの船宿の先代とは違う祖父だよ、と茂雄。茂雄と波子は連れ子の再婚だったのだ。写真家の祖父は妻子を残し失踪した。そのあと佐和子は船宿の主と再婚したが、高校生だった波子は家出をして、音信不通となっていたのだ。波子の家出に罪悪感を抱く佐和子は、ミオとの会話もどこか怖じ気づいて浮き足立ちがちだ。

 数日後。茂雄が連れていた子供の母親を杉田は突きとめた。その母親は癌を患い入院していて、しかも茂雄は治療代まで肩代わりしようとしていた。現場写真を見せられた佐和子は驚愕する。
その夕方。帰ってきた茂雄を佐和子は問いつめる。その病人とは茂雄の前妻だったのだ。前妻のあれこれをあげつらいながらも、茂雄の離婚も波子の家出も、なにからなにまで自分が悪かったような気がしてくる佐和子。そこへ電話。ミオが車にはねられた知らせだった。

 その夜。ミオは奇跡的な軽傷。散歩の途中、通りの向こうに母の面影を見た気がして飛び出したらしい。お母さんとそんなに仲がよかったわけでもないのに、どうしていつもそういう気持ちになるのか分からないという。祖父が写した風景写真の中でまるで別人のように笑っているお母さんを見て、どうしてもここに行きたいと思ったと、ミオは佐和子に語る。失踪した父親が大好きで、性格的にも父に似ていた波子は新しい父親になじまなかったし、どう娘と接すればいいのか私には分からなかったと佐和子は後悔する。

 数日後。昼過ぎ。アパートで孤独死しているところを発見された峰島の葬儀後。茂雄はまだ毎晩病院にかよって元妻の介護を続けている。照之は結婚が決まった。佐和子は治療費にこれをつかいなと、貯金通帳を茂雄に渡す。それぞれの人物が抱えていた煩悶が一歩だけ前に進みそうな風向き。二人の旦那さんのうち、どっちが好きだったかとミオに聞かれ、ミオのお爺ちゃんのほうかなとこたえた佐和子は、こういう話は息子とはできないんだよ、とちょっと華やいだ気分である。

作者プロフィール:[生年]1971
2002年、円演劇研究所修了。05年、劇団サスぺンデッズを旗揚げ、これまでにVol.1『上石神井サスペンデッド』、Vol.2『Clearly』、Vol.3『片手の鳴る音』、Vol.4『ライン』を上演、全作品の作・演出を手がける。独自の言葉使いと笑いのセンス、そこから生み出される独特な世界観が絶賛を浴びる新進気鋭の作家。また俳優として、『マッチ売りの少女』、『世阿弥』、『マテリアル・ママ』に出演のほか、岩松了作・演出『傘とサンダル』『アイスクリームマン』に出演している。
http://suspendeds.jugem.jp/
 
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