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サンタクロース会議 アダルト編
青年団 第58回公演
『サンタクロース会議 アダルト編』
(2008年12月/こまばアゴラ劇場)
撮影:青木司
Data
[初演年]2008年
[上演時間]約1時間
[幕・場面数]一幕三場
[キャスト数]13人(男7・女6)
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Play of the Month
2009.2.3
The Santa Claus Conference (Adult version) 
平田オリザ『サンタクロース会議(アダルト編)』 
平田オリザが小学校で子どもたちとワークショップを行い書き下ろした、初めての親子のための戯曲。子どもが参加できる参加型演劇とアダルト編がある。


 大きな半円形の会議机が置かれ、その輪の中にベッドがひとつ。子ども(母親と二役)が寝ている。ベッドの枕元には大きな靴下が下げられている。舞台奥に人が出入りできそうな煙突のある大きな暖炉。

 BGMのジングルベルの音楽が少し大きくなって、照明がベッドだけに当たると、子どもがゆっくり起き上がる。靴下の中を覗き喜ぶ。ベッドを降り、会議机の下をくぐって舞台奥に進み、暖炉から消える。

 クリスマスを迎えるにあたり、毎年開催されている「サンタクロース会議」が今年も開かれようとしている。お父さん、お母さん、教師ら出席メンバーが三々五々集まってきて、第833回の会議が始まる。議題は「サンタクロースさんに、何をお願いするか」。客席側に座った3人の子どもたちにも意見を聞くと子どもらしい答えはサッカーボールぐらいで、「バイク」や「お父さん」を欲しがる子どもに大人たちは困惑する。

 とうとうクリスマスの専門家を名のるガミガミ博士が、「そもそもサンタなんていない」と持論を展開するに至って、サンタクロースの専門家を自認するガリガリ博士との間でサンタの存在をめぐる激しい言い争いが始まるが、これはどうやら毎年繰り広げられているサンタクロース会議のお馴染みの風景らしい……。

 やがて、ジングルベルの曲が大きくなり、ベッドにスポットライトが当たる。会議を途中で抜け出してベッドに入っていた子ども(母親と二役)が、ゆっくり起き上がる。靴下の中を覗き喜ぶ。ベッドを降り、会議机の下をくぐって舞台の奥へ進み、暖炉から消える。

 照明が明るくなると第834回目の会議が始まる。議題は「サンタクロースには、どうやったら会えるか」。しょっちゅう会っているらしい魔女がゲスト参加しているが、「あなた、本当に、魔女?」と疑った会議の出席メンバーは魔法で豚に変えられてしまう。同じく、あまり発言しない魔女に突っ込みを入れた母親は犬に、帽子と鼻の形をくさしたガミガミ博士は猫に変えられ、まるで動物会議のようなナンセンスな状態に。

 「クリスマスの夜にずっと起きていたら、お父さんがプレゼント持ってきたんですけど」、と質問する子ども。「それはサンタさんがお父さんのふりをしているんだ」と、シラッと答える魔女。「うちはお母さんしかいない」「プレゼントの包み紙がデパートのだった」などなど。子どもたちの的を得た質問を適当にはぐらかす魔女に異議を唱えるお父さん、お母さんたちは次々に魔法で次々に動物に変えられ、事態はますます紛糾していく。

 やがて、ジングルベルの曲が大きくなり、ベッドにスポットライトが当たる。会議を途中で抜け出してベッドに入っていた子ども(母親と二役)がゆっくり起き上がる。靴下の中を覗き喜ぶ。ベッドを降り、会議机の下をくぐって舞台の奥へ進み、暖炉から消える。

 第835回、議題「煙突のない家は、どうすんのよ」の会議が始まる。相変わらずサンタいない派のガミガミ博士は、プレゼント至上主義の物質優先思考が日本を駄目にしていると主張する。これを受けてまじめな教師が、アフリカの飢餓の問題まで持ち出したことから、議論は教育問題から世界の飢餓問題にまで広がり、メルヘンな会議は居心地の悪い現実に乗っ取られ、みんな逃げるように帰って行く。

 サンタクロース会議は、こうして来年も、再来年もまた続いていくのだった。

作者プロフィール:[生年]1962
1962年東京生まれ。劇作家・演出家。劇団「青年団」主宰。東京・こまばアゴラ劇場支配人。大阪大学コミュニケーション・デザインセンター教授。
こまばアゴラ劇場の経営者として小劇場界に関わる一方、1983年に、そこを拠点に活動する青年団を旗揚げし、劇作家、演出家として活動を始める。「現代口語演劇理論」を掲げ、日本人の生活を起点に演劇を見直し、「静かな演劇」と称された1990年代の小劇場演劇の流れをつくる。緻密な計算によって演出する手法は評価が高く、劇作家、松田正隆と組んだ一連の作品は話題になった。
演劇はもとより教育、言語、文芸などあらゆる分野の批評、随筆などを各誌に執筆。近年は、公演やワークショップを通じて、フランスをはじめ韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、アイルランド、マレーシア、タイ、インドネシア、中国など海外との交流も深めている。また、2002年度から採用された国語教科書に掲載されている平田のワークショップ方法論により、年間で30万人以上の子供たちが、教室で演劇を創るようになっている。他にも障害者とのワークショップ、駒場ほか地元自治体やNPOと連携した総合的な演劇教育プログラムの開発など、多角的な演劇教育活動を展開している。
運営する「こまばアゴラ劇場」および稽古場をかねた実験スペース「アトリエ春風舎」では、青年団に所属する演出家、劇作家が「青年団リンク」として劇団内で不定形のユニットを作り、2002年度から独自の企画公演を行っている。劇団員の誰もが自由に企画を提出することができ、若手を中心にした団員の創作活動が批評の対象となるよう本公演に準じる形で行われる。その後、劇団内ユニットから独立して現在では独自の活動を行っているカンパニーもあり、これまでに五反田団の前田司郎、地点の三浦基らが輩出。また、1989年からこまばアゴラ劇場がホストになり「各地域のカンパニーが当たり前のように東京公演をできる環境作り」を目的として掲げる舞台芸術フェスティバルを開催。2001年からは「サミット」フェスティバルとして毎年春と夏に開催している。旬のアーティストをフェスティバルディレクターに選出し、公演ラインナップの選定などすべてを行う。今年度のディレクターは、劇団「チェルフィッチュ」を主宰する劇作家・演出家の岡田利規が務めている。
95年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞、97年『月の岬』(松田正隆作、平田オリザ演出)で第5回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、02年『上野動物園再々々襲撃』(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞、03年『その河をこえて、五月』(日韓共同作・演出/新国立劇場制作)で第2回朝日舞台芸術賞グランプリを受賞。戯曲以外の著書に、『演劇入門』(講談社)、『話し言葉の日本語』(井上ひさし氏との対談集、小学館)、『芸術立国論』(集英社)など多数。

劇団「青年団」   http://www.seinendan.org/
 
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