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もしイタ
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満塁鳥王一座
『キル兄にゃとU子さん』
(2011年6月25日、26日/サブテレニアン)
撮影:赤井康弘
Data
[初演年]2011年
[上演時間]1時間
[幕・場数]1幕1場
[キャスト]3人(男1・女2)
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2012.3.30
Kiruannya to Uko-san by Pelican Onobu 
大信ペリカン『キル兄にゃとU子さん』 
 東日本大震災および原子力発電所事故で被災した、福島県を拠点とする劇団・満塁鳥王一座(まんるいとりきんぐいちざ)主宰・大信ペリカンの戯曲。既存の詩や新聞記事を引用しながら、モノローグの断片を積み重ね、福島での出来事や震災後の不安と混乱を描く。
 舞台中央に天井から吊るされた町の模型。床面には新聞紙が散乱し、上手に本棚、下手に玩具のピアノが置かれている。

 女1が玩具のピアノで時報を弾く。続いて男と女2が競うように福島県での出来事の年表を2010年から遡って読み上げる。豪雪や干ばつ、新幹線開通…。年表は大熊町で東京電力原子力発電所が東北初の発電を開始した1970年で終わる。

 女1、2と男はU子さんを探している。U子さんの住む街にはキル兄にゃという新聞屋の男が住み、彼が新聞を切り刻んでまき散らすので、街には切れ端が積もっている。

 名前は同じだが、3人の探すU子は違う人物のようだ。女2が探しているのは幼稚園が一緒の幼馴染、男は家庭料理が売りのビストロのシェフ、女1はネットの交流サイトで知り合ったアイドルの追っかけ仲間。自分が知るU子の特徴を並べ、その不在に不安を募らせる3人。

 本棚から本が落ちる。手に取ったのは女1。「遠野物語」から、大津波で死んだ妻の霊と話した男の章が朗読される。

 また本が落ち、今度は男が双葉郡川内村の名誉村民だった詩人・草野心平が村への愛着を謳った「福島懸双葉郡川内村」を読む。続いてもう一冊。女2が、詩人・彫刻家の高村光太郎が妻・智恵子とその故郷・福島の美しさを綴った「樹下の二人」を読む。

 我に返り、U子さん探しを再開する3人。だがU子さんについてお互いが知っていることを話せば話すほど、U子の存在は曖昧になっていく。

 3人は足元の新聞を拾い、記事を日付から読み上げる。ご当地映画の製作、孫との交流、フラダンスのイベントなど内容は様々だが、登場する人名はすべてU子さんだ。

 1月から始まった記事の日付が3月11日に至ると緊急地震速報が鳴る。模型の下にいた3人の頭がぶつかり町が揺れる。読み上げる記事も震災関連の内容になっていく。

 被災後に移住先で出産した女性、ツイッターで作品を発信し続ける福島の詩人、米タイム紙で南相馬市市長が「影響ある100人」に選出されたこと。やはり全ての人名はU子さんだ。

 そして最後に男が手にした新聞に記載されていたのは、どこの誰、何歳が見つかったかを知らせる福島県警発表の死亡者名簿だった。3人が順番に読み上げる…名前は全てU子さん。模型の町に新聞紙が降る。

 やがて女1が玩具のピアノで時報に続き、「たなばたさま」のメロディをたどたどしく弾き始める。続いて男が小太鼓を、女2はアコーディオンを取り出し演奏に加わる。演奏しながら男は2011年7月、8月…2012年1月…と未来の年月を読み上げる。女2人は「たなばたさま」の歌を重ねる。

 鎮魂歌のように、行進曲のように、力強く歌と演奏が繰り返される。

作者プロフィール:
1975年、兵庫県出身。劇作家、演出家。満塁鳥王一座(まんるいとりきんぐいちざ)主宰。96年に在籍していた福島大学演劇研究会を母体として満塁鳥王一座を旗揚げ、以降ほぼ全作品の作・演出を行う。近年は外部作品への作品提供を行うなど活動の幅を広げている。福島県南相馬市において東日本大震災及び原子力発電所事故で被災する。現在は福島市在住。「いかにして作品にリアルな重量を与えるか」と考え続けるなか、細かなモノローグの断片によって構成される劇作法に行き着く。主な作品に、登場人物それぞれが独自の主張を語ることで複合的な出来事を浮かび上がらせる『エレクトラ』『アンアパシックズノートパラグラフフィフティーン』など。『キル兄にゃとU子さん』は11年6月より東京、横浜、仙台、青森、北九州の五都市で上演、リーディング公演が行われた。
http://www.toriking.net
 
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