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田頭諒という男
田頭諒という男
岩手県立福岡高等学校演劇部
『田頭諒という男』
第2回あおもり[高校演劇]小劇場祭
(2012年3月4日/AGP[アトリエ・グリーンパーク])
撮影:d_tashima
Data
[初演年]2011年
[上演時間]1時間
[幕・場数]1幕11場
[キャスト]3人(男2・女1)
*引用:北村想『寿歌』(戯曲)、小西智枝美「ぐるぐる」(詩・第32回岩手県高等学校総合文化祭文芸部門最優秀賞受賞)
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2012.5.1
Dendo Ryo to iu Otoko (A man named Dendo Ryo) by Atsushi Okabe 
岡部 敦『田頭諒という男』 
 東日本大震災の被災地の岩手県立福岡高等学校演劇部の創作戯曲。顧問である作者・岡部敦と演劇部員・田頭諒(でんどう・りょう)がディスカッションを行い、田頭が2011年の東日本大震災にあたって感じ、考えたことを構成、戯曲化した。既存の戯曲を引用しながら、現役高校生の震災体験をストレートに描く。第44回東北地区高等学校演劇発表会優秀賞、創作脚本奨励賞受賞。
 闇のなか聞こえる波音。「達(たっ)さん!」と連呼しながら田頭が稽古場に登場。女子部員・山下が不在のため稽古できないと訴える田頭に、音響席から「一人でもできることをやれ」と言う達さん。

 セミの鳴き声。田頭の口上が始まる。男二人、女一人の演劇部にと選んだ北村想が書いた三人芝居『寿歌』(核戦争後の世界が舞台)だが、達さんは音響専門、山下も来ないため一人芝居で上演することになったという経緯や、関西で13歳まで育った田頭の生い立ちが語られる。

 場面は放送室に。学校創立110周年を記念し、部活持ち回りで昼の校内放送を担当することになり、演劇部が一番手に。DJリョーを名乗る田頭は、軽快に演劇部の活動を紹介する。音楽の合間に達さんに話しかけるが返事はない。

 2日目、3日目と続く放送。演劇部のPRや『寿歌』の一場面を一人二役で演じる田頭。合間に達さんに声をかけるが、返事が返ってくることはない。

 放課後の演劇部部室。『寿歌』の本を見つけたのは震災直後に部室を片付けていた時だったこと、達さんは震災当日陸前高田(津波の被害で多数の死傷者が出た地域)の親戚宅に法事に行っていたことが語られる。

 放送4日目。演劇部の先輩が書いた詩「ぐるぐる」を朗読する田頭。詩には「時々、すべてが、自分に押し寄せてくる」ように感じると綴られている。

 日曜日の夜。田頭は家業の建設会社を手伝い、震災のがれきを片づけに行った経験を語る。被災地の惨状を前に、かつて顧問・岡部が「すべての状況は楽しむためにある」と言った言葉を思い出して怒りにかられたこと、岡部に文句を言おうと思いついた途端に元気が出たことを、目の前に達さんがいるかのように喋り続ける。

 放送最終日。田頭の言葉とともに時間は4月、5月、8月、12月と時は進み、その間の震災関連の出来事や、山下が英語部に転部したこと、達さんは行方不明だということが語られる。

 「演劇に今何ができるかわからない、それでも俺は芝居がやりたい、芝居につきあってくれ」と達さんに懇願する田頭。と、音響席に達さんが現れる。『寿歌』から「キツネとクマとウサギの話」を演じる二人。場面の終わり、達さんはゆっくりと舞台奥へ消えていく。「達さん!」と叫び、パネルを倒しながら狂ったように探し回る田頭。

 静寂。現れた山下が達さんの葬儀に行こうと言うが田頭は断る。静かに瞬く星。
 「ワテができるのはこないなことだけや! ワテは岩手の福高(フッコウ)演劇部や! 岩手のフッコウや! 岩手は復興するんやーーーーっ!」と叫ぶ田頭。田頭は、何もできない苛立ちや、ちっぽけな自分や、社会のすべての状況をひっくるめて校歌を怒鳴るように歌いだす。

作者プロフィール:
1966年、埼玉県出身。岩手県立福岡高等学校教諭、演劇部顧問。東北地区高等学校演劇協議会事務局長。季刊「高校演劇」同人。宮沢賢治の妹、宮沢トシを主人公とした作品『I am a little girl.』で2006年に第4回盛岡市民演劇賞創作戯曲部門を受賞。同作品は全国各地の中学生、高校生に上演されている。本作は第44回東北地区高等学校演劇発表会優秀賞、創作脚本奨励賞を受賞。また2011年に創立110周年を迎えた同校は、卒業生として世界的に著名なグラフィックデザイナー・福田繁雄や、絵本「11ぴきのねこ」シリーズで知られる絵本作家・馬場のぼるらを輩出している。
http://www2.iwate-ed.jp/fuk-h/
http://bebebenooyaji.blog5.fc2.com/
 
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