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わたしを離さないで
わたしを離さないで
わたしを離さないで
『わたしを離さないで』
(2014年4月29日〜5月15日/彩の国さいたま芸術劇場)
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団・ホリプロ
企画制作:ホリプロ
撮影:渡部孝弘
Data
[初演年]2014年
[上演時間]3時間45分
[幕・場数]1幕3場、2幕3場、3幕3場
[主要キャスト]6名(男1、女5) *他に施設内の同級生や先輩役として男女28名が出演。
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2014.7.31
Watashi wo Hanasanaide (Never Let Me Go) by Yutaka Kuramochi (from the original novel by Kazuo Ishiguro) 
倉持 裕(カズオ・イシグロ原作)『わたしを離さないで』 
 イギリスの作家カズオ・イシグロの世界的ベストセラー小説『Never Let Me Go(邦題:わたしを離さないで)』を蜷川幸雄演出により舞台化。脚本を担当したのが、第48回岸田戯曲賞を受賞し、幅広い活躍をしている劇作家・倉持裕。主人公キャシー・H(本作では八尋)の一人称で書かれた原作を、日本のシチュエーションに置き換えて戯曲化。臓器移植に備え、人間が当たり前のように自身のクローンを作成する世界。期限つきの生命でも、ひたむきに生きるクローンの子どもたちの静謐な時間を描く。
 プロローグ。潮騒が聞こえる広場。ベッドに横たわった男の側に介護人の八尋が付き添っている。彼女は自分が育った施設ヘールシャムの思い出を語り出す。

 子どもたちが共同生活する15年前のヘールシャム。休憩時間にクラスメートたちはそれぞれ雑談に興じている。いつも仲間はずれにされているもとむはサッカーのメンバーから外されて暴れ、止めに入った八尋を突き飛ばす。騒ぎを聞きつけた冬子先生は、生徒たちが特別な存在であり、その自覚的を持って振舞うべきだと諭す。

 どこか未熟で、周囲の意を汲めないもとむだが、八尋と友達の鈴はそれぞれに好意を持っている。

 1年後。英語のバラード「Never Let Me Go」がラジカセから流れる八尋たちの部屋に、マダムがいる。彼女は生徒たちが創作した絵や彫刻などの作品を選び、持ち去る謎めいた存在。作品を選ばれた生徒はバザーで買い物のできるチケットがもらえた。「Never Let Me Go」のカセットはチケットで八尋が買ったものだ。

 マダムが去ると、隠れていた八尋ともとむが現れる。みんなは競って作品をつくっていたが、もとむにはつくれなかった。そこに鈴が戻り、自分の恋人になっていたもとむと二人きりだった八尋を勘ぐる。

 ひとり部屋に残された八尋は、バラードを聴きながら赤ん坊をあやすように緩やかに踊る。その光景を陰からそっと見ていたマダムは思わず嗚咽する。

 その夏。八尋と鈴が晴美先生に呼び出されている。就職など、将来の憧れを語る二人の会話を聞き咎め、臓器提供という「使命」のためだけに生きている自覚があるかと問う。当然だと答える二人。

 晴美先生が去ると、鈴は、喧嘩ばかりのもとむとの仲を八尋に取り持って欲しいと言う。もとむにとって八尋は「最も信頼できる友人だ」と強調する鈴。

 鈴が去ると八尋は教室にあった日本地図の、様々な漂流物が流れ着くという宝岬の場所を見ている。程なく現れたもとむに鈴との仲直りを勧めるが、ヘールシャムでの生活が残り1年だからこそ、鈴とのことは焦りたくないと言うもとむ。逆に恋人について質問された八尋は狼狽える。

 2年後の冬。18歳になった八尋たちは臓器提供まで、介護人になる準備のための施設・農園に移っていた。場所は宝岬の近く。鈴ともとむは恋人同士だが、八尋は複数の相手と関係を持っているらしい。

 ある日、農園で一緒に暮らす亮太とありさが宝岬の近くで鈴のオリジナルを見たと言い出す。探しに行く代わりに、「本当に愛し合っていると証明できたカップルは、臓器提供まで3年の猶予がもらえる」という、ヘールシャム出身者だけが知っている秘密について知りたいと言う。

 オリジナルはいなかった。八尋は、自分たちも「猶予」の内容など何も知らなかったと謝る。もとむは八尋と岬に残り、彼女がかつて無くしたカセットを探そうと言い出す。嬉しげに歩き出す二人。

 2ヵ月後。岬から戻ったもとむは絵を描き続けていた。「作品」が「猶予」をもらうための証明になるに違いないと考えたのだ。一方、作品のない自分より、ヘールシャム出身の他の男に鞍替えした方がいいと鈴を突き放す。

 鈴のオリジナルを探しに行った日、八尋がもとむと二人だけでカセットを見つけたことを知り、鈴はもとむの行為は友情からだと強く言う。八尋は介護人の訓練を受ける申請をし、明日には農場を出ると宣言する。

 8年後の秋。荒涼とした湿地。最初の提供を終えた鈴に、八尋が介護人として付き添っている。二人は、近くの施設にいるもとむと待ち合わせをしていた。

 2度の提供を終えても元気なもとむ。思い出や近況を話し合う3人。やがて鈴は意を決し、これまでもとむと八尋の仲を意図的に裂いてきたことに許しを請う。鈴はマダムの住所を入手し、今からでも二人に「猶予」をもらうための審査を受けて欲しいと懇願する。もとむは鈴の思いとともに、住所が記された紙を受け取る。

 1年後、マダムの家。もとむと彼の介護人になった八尋が座っている。もとむはマダムに作品を差し出し、猶予してもらえるかどうか審査して欲しいと訴える。マダムは部屋の奥に向かって「あなたには説明する義務がある」と言う。

 現れたのは車椅子に乗った冬子先生。冬子先生は、ヘールシャムはクローンの子どもたちも人間同様に感受性豊かに育つことを証明し、待遇を改善するための施設だったと明かす。「作品」はそれを証明するための材料であり、クローンの利便性に飛びつき、心を認めない人々との闘いについて一方的に話す。

 これは審査なのかと問うもとむ。「猶予などなく、あなた方の人生は決められた通りに終わる」と断じる冬子先生。

 もとむと八尋に、ヘールシャムでの記憶の風景が押し寄せる。叫ぶもとむを八尋が抱きしめる。

 エピローグ。宝岬の防波堤。八尋がコートのポケットからカセットを取り出すと、もとむが駆け寄り、カセットを二人で見つけた日が再現される。記憶の再生はすぐに終わり、もとむの姿が消え、八尋も歩き去る。車が勢い良く走り去る音が聞こえる。

作者プロフィール:
1972年、神奈川県出身。92年に俳優として学生劇団に参加。94年に岩松了プロデュース公演『アイスクリームマン』出演をきっかけに岩松氏に師事し、執筆活動開始。2000年、劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ。以降、劇団全作品の脚本・演出を手掛ける。『ワンマン・ショー』にて第48回岸田國士戯曲賞受賞。劇団外への執筆、演出としての参加も多数。近年の作品に劇団公演『cover』『謝罪の罪』『窓』『ベルが鳴る前に』、外部作品『フランケンシュタイン』(上演台本)、『ライクドロシー』『夜更かしの女たち』『現代能楽集VII 花子について』『鎌塚氏、振り下ろす』(全て作・演出)など。日常のちょっとした隙間から不条理な世界を垣間見せる作風には定評があり、外部ではオリジナル・コメディから人間関係が複雑に交差するストレートプレイまで、ジャンルを問わず作品を発表している。近年はテレビの脚本などでも活躍。
 
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