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幼女X
幼女X
「範宙遊泳展─幼女Xの人生で一番楽しい数時間─」『幼女X』
(2013年2月16日〜27日/新宿眼科画廊地下スペース)
撮影:amemiya yukitaka
Data
[初演年]2013年
[上演時間]
[幕・場数]
[キャスト]
Artist Interview
Play of the Month
2015.1.22
Yojo X (Girl X) by Suguru Yamamoto 
山本卓卓『幼女X』 
1987年生まれの劇作家・演出家の山本卓卓が2013年に発表し、バンコク・シアター・フェスティバル2014で最優秀作品賞・最優秀脚本賞を受賞した作品。連続幼女強姦殺害事件が発生している2013年の東京が舞台。金持ちの夫とタワーマンションで暮らす姉と小さな娘、貧しい弟、姉の元彼で「敵」を探して歩く男などを通じて、現代の緊張した空気感と祝福を描く。上演にあたっては、「男」「弟」「姉の夫」を男優2名が演じ、その他の人物(お腹にいる子ども、姉、母など)は舞台に登場せず、その台詞は客席に設置されたプロジェクターによって舞台背景に文字で投影される。
雨の日。母のお腹の中にいる子どもが言う。

お母さん
まだ産まないで欲しい
この雨に耐えられるだけの準備がまだ
足りていない


だが子どもは産まれる。母に抱かれ、泣く。画面一面に「泣」の漢字が投影される。

公園の映像が映し出される。日曜日の昼下がり。弟は寝起き姿のまま、2時間遅れで新宿御苑に到着する。ここで母、姉、その小さな娘とピクニックをすることになっていたのだ。

親子連れやカップルが多い新宿御苑で、男は疎外感を感じながら「敵」を探している。偶然、男は姉と再会し、ピクニックに参加することになる。二人は高校時代、恋人同士だったのだ。

男は疎外感を募らせる。どんどん積み重なる疎外感をTポイントにして、TSUTAYAで使えたらよいのにと考える。

帰路、男は小学校の前に立ち止まる。不信に思って「何か学校に御用ですか?」と声をかけた女性教師に、男は「敵」探しの仲間として親近感を抱くが、女にはそれが伝わらない。

男は6帖の自宅で、今も姉と付き合っている様子を夢想する。

──IKEAで買ったダブルベッド、背の高い観葉植物、珍しい熱帯魚が泳ぐ水槽。品川駅徒歩10分の高層マンション95階4LDK、愛車はレクサス、大理石の床は床暖房。男は姉の寝顔を見ている──

それはすべて「例えばの」ものであり、夢想にすぎない。「例えばの」姉は妊娠しているが、その子は「生まれてこなくていい」「生きる価値がないから」と言う。

新宿御苑から、姉と娘、母はタクシーで姉の自宅に移動する。貧しい弟はタクシーに乗らず、走って向かう。タクシーよりも早く到着するが、汗をかいてしまった。姉の自宅はタワーマンションの30階にある。エレベーターの中で、姉の娘から「おじちゃんくさい」といわれることを危ぶむ。

弟にとって姉の家は「アメリカみたい」に見える。部屋は5つあり、風呂にはサウナがついている。姉の夫の振る舞いも「アメリカみたい」だ。「間違いない、姉は、資本主義に勝っている」と弟は思う。

翌日。姉は、マンションの管理人室で、防犯カメラの映像を見ている。夫の新車に傷がついていたのだ。映像にはその犯人が映っている。犯人は、口にハンカチのようなものを咥えながら自慰をし、バンパーに射精し、泣き出した。

男が目覚めると、すでにバイトの時間を過ぎている。1日予定があいてしまったので、「敵」を探しに出る。

弟は、ガイガーカウンターの訪問販売の仕事に出ている。売れ行きは好調。そこへ連続幼女強姦殺害事件のニュースが流れ、父から「母が倒れた」との連絡が入る。男は電気屋の店先のテレビでニュースを見ながら「(犯人は)早く捕まって死刑になれ」と言う人を目にする。

母が入院している病院で、姉は泣きながら弟を詰問する。やがて弟は自分が義兄の新車に傷をつけたこと、娘のパンツを口に咥え自慰をしたことを認め、泣いて詫びる。姉は嘔吐する。

弟は新車のことを「ポルスケ」と呼んだ。「Porsche」を正しく読むことができなかったのだ。

男の「敵」はなかなか見つからなかった。男にとって「敵」とは、「生身の、そこにある悪」のこと。生身でない悪はフィクションだ。

家から出る前、男は母親に手紙を書いた。手紙には、準備ができる前に生まれてしまった自分の人生への後悔、これから生まれてくる生命の安心への祈りなどが綴られていた。

弟がテレビをつけると、警察署の前からの生中継。連続幼女強姦殺害事件の犯人が逮捕された。弟は犯人のことを少しだけ羨ましく感じた。

男の前に、警官に連れられ、連続幼女強姦殺害事件の犯人が出てきた。ようやくにして男が出逢った「敵」だった。男は手にしていたハンマーで襲いかかる。だが、警察署前を埋め尽くした警官と記者に取り押さえられてしまう。

男は、突然、ハンマーで自分の頭を殴り始め、男は死んだ。

現場は血の海になり‥‥、海になった。

そのちはどんどんげんばをおおいつくして
なんと
うみにしてしまいました
それからそのうみにひかりがさして
まぶしくてまぶしくて
そのひかりをわすれるひとは
だあれもいませんでした


童話の絵本のようになった映像が次第にスクリーンからずれ、天井に移動して消え、暗転。

作者プロフィール:
1987年山梨県生まれ。2007年、桜美林大学在学中に範宙遊泳を旗揚げし、劇作家・演出家を務める。2011年に新進劇団を集めた東京芸術劇場の企画「20年安泰。」に着ぐるみを着たパロディ劇の短編『うさ子のいえ』で参加。2013年の東京を舞台に、現在の緊張した空気感とそこで生きる人への祝福を描く『幼女X』を発表。投影した文字と俳優が絡むオリジナル・スタイルで、携帯の文字や絵でコミュニケーションするメール世代を象徴する表現として注目を集める。2014年にTPAMに参加したのを契機に、マレーシア、タイに招聘されるなど、海外での今後の活動が期待される新鋭。
 
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