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モロモロウロウロ
高槻シニア劇団 そよ風ペダル
『モロモロウロウロ』
「全国シニア演劇大会 in 仙台」参加作品
(2015年6月6日/日立システムズホール仙台)
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Play of the Month
2015.7.28
Moro-moro, Uru-uru” by Jun Tsutsui 
筒井 潤『モロモロウロウロ』 
 公演芸術集団dracomを主宰する筒井潤が、高槻シニア劇団そよ風ペダルとともに創り上げた高齢者による現代口語戯曲。ひとりで山登りに出かけて行方不明になった山岳会の友人・深沢を案じる登山仲間と、深沢がエンディング・ノートのように遺したビデオ日記を重ねながら、行方不明というやり場のない“死”を受けとめようとする人々を日常的な会話で綴る。東日本大震災の喪失感を背景にした作品。2013年に初演、2015年に改編して再演。
 舞台はとある山岳会の集会所。中央には大きな打ち合わせ机とイス、奥にはスクリーン、スクリーンの下には出演者が出番を待つ間、座っておくためのイスがセットされている(出演者は基本的に舞台に出たまま)。

 山岳会のメンバーである深沢将生が登場し、舞台奥のビデオカメラのセッティングを確認。客席に背を向け、カメラに向かって語りかけながらビデオ日記の収録をはじめる。以後、深沢は他の出演者からは見えない存在として舞台上にいて、ビデオ日記を収録し続け、そのライブ映像がスクリーンに映し出される。

《ライブ映像》深沢は、明日2011年3月9日に初めてひとりで山に登る計画だと告げる。

 深沢が山で行方不明になった2日後。各々で捜索に出かけていた仲間たちが三々五々に登場。何の手がかりもなかったことを、メールや電話で連絡しあっているその時、大地が揺れる。

 1カ月後。深沢の消息は依然不明。集会所で深沢の妹・久美子と大家の二岡が、新聞を広げて語り合っている。新聞は大震災の記事で埋め尽くされ、大勢の人が行方不明になっていた。山岳会のメンバーたちが帰ってくる。今日も深沢が登ったコースを皆でたどったのだ。

《ライブ映像》深沢は、パチンコに負けてムシャクシャしていた日、河川敷で山岳会の吾妻と出会い、酔っ払った勢いで山登りをする約束をしてしまったと語る。

 捜索から帰宅途中のバス停。山岳会女性メンバー4人は、大震災の行方不明者が何万人といるのに、ひとりの仲間を探していることの後ろめたさを口にする。“心の置き場所”がわからず、考えすぎて「頭フワフワしてくるねん」と福嶋。根津も山口も相田もフワフワして、日常の何でもないことで失敗をしでかしている。

 集会所では、学生時代に山岳部にいて遭難し、仲間二人が未だに行方不明だとういう吉田が、どこよりも高いところを目指して「まだ、彼らと一緒に山に登っていると思っている」と吾妻に言う。

 別の日、集会所に集まった仲間たちは、山岳会で撮影したビデオを見ようとするが機械音痴が揃っていてうまくいかない。そこに久美子が到着し、再生スイッチを入れると、映し出されたのは深沢のビデオ日記だった。

《ライブ映像》2011年2月22日。深沢は、20年ほど前に妻と別れ、家賃4万円のアパートに引っ越したエピソードを語る。寂しくわびしい男のひとり暮らし。妹の久美子には、「しっかりし!」とずっと怒られっぱなしだった。

 ビデオには踊りの練習をしているらしい様子も収録されていた。深沢が収録内容を下書きしていたノートも見つかり、「みなさんに感謝」の言葉と、収録されることなく終わった踊りについての記述も遺されていた。

 今倉が、あれは誰かと一緒に踊るつもりだったのではないかと言い出す。ジャズダンス経験がある村川に煽られるように、みんなで深沢の思いを実現しようと踊りの稽古をはじめる。

 曲は今倉が長男から勧められたトーキング・ヘッズ「ロード・トゥ・ノーウェア」に決定。僕らはどことも知れぬ所へ向かっている──「冒険の歌なんやろうねぇ」「天国までは一緒に明るく行こうって歌ちゃうかなあ」、ビデオに映し出された深沢にも「一緒に天国に行こう」と声をかけようと笑い合う仲間たち。踊ってみたら、深沢が踊っていた気持ちがわかった気がすると吉田。

《ライブ映像》 自分が生きた証として、このビデオを撮っておきたいと思った。人に見せるような字が書けないから、エンディング・ノートではなく、エンディング・ビデオにしたのだと言う深沢。

 全員が配置につき、カメラに向かい、本番の収録が始まった。

 ──深沢のことも震災のことも、何も解決はしていない。でも踊ることで、“心の置き場所”が少しだけ整理できた。ふたつを同じこととしても考えられるし、別のこととしても考えられる。大事なのは、どちらも絶対に忘れないということ。

 久美子が山岳会に入部したいと言い、皆の大歓迎を受けて、幕。

 
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