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カメラマンの変態 カメラマンの変態 カメラマンの変態
『カメラマンの変態』(美作公演)
(2018年1月/特別養護老人ホーム蛍流荘)
Photo: hi foo farm
Data
[初演年]2017年
[上演時間]
[幕・場数]
[キャスト]
Artist Interview
Play of the Month
2018.3.30
Cameraman no Hentai by Naoki Sugawara 
菅原直樹『カメラマンの変態』 
 岡山県奈義町を拠点に老いと演劇をテーマに活動している菅原直樹(OiBokkeShi主宰)の戯曲。とある老人ホームを舞台に、生と死、エロスが交錯する時間を描いた3人芝居。創作のパートナーとなっている“おかじい”こと岡田忠雄(岡山市在住・91歳)が岡谷老人役を演じ、2017年12月に岡山市の蔭涼寺、2018年1月に美作市の特別養護老人ホーム蛍流荘で上演。
 第1幕。老人ホームの入居者、岡谷正雄の部屋。脳梗塞で右半身麻痺となり、言葉を話せなくなった岡谷は車椅子の生活を送っている。合図を送るための“鈴”が椅子の肘掛けに取り付けられている。オーストラリア人の介護士のスティーヴンが夕食を運んでくる。
 
 背後のスクリーンに字幕で岡谷のこれまでの人生が写し出される。岡山から東京に出て、カメラマンになった経緯、株式投資の失敗による借金、元芸者・田村節と若手女優・池原麻美との結婚と離婚、故郷での隠居生活──。
 
 スティーヴンが食べようとしない岡谷にスプーンを握らせて、無理やり食べさせようとするが、吐き出してしまう。激しく鈴を鳴らす岡谷。
 
 それは写真を撮りたいという合図だ。スティーヴンは傍らのテーブルに置いてある一眼レフカメラを手に取り、「ん」「んんんん!」といった岡谷の指示に従い、室内のさまざまな場所に向けシャッターを押していく。
 
 第2幕。激しい夕立。眠っている岡谷のそばに、麻美に似たずぶ濡れの女(葉子と二役)が現れる。目を覚ます岡谷。
 
 字幕に「お前だけは美しかった」と岡谷の心の声が映し出される。「あなたは何もわかってない、自分のことしか頭にない……いつもそうだった」と女。
 
 リン!リン!リン! 岡谷が激しく鈴を鳴らす。
 
 スティーヴンが駆けつける。どうやら女を撮れということらしい。ずっと撮影につきあってきたが、人は初めてだ。女は昔、岡谷に撮ってもらったことがあると言う。
 
 「ん、んん、ん」。岡谷の指示で、スティーヴンは車椅子をあちこちに動かしながら次々とポーズを決める女を撮影する。次第にのめり込む3人。
 
 女が元女優だったこと、岡谷が女たらしのカメラマンだったこと、スティーヴンが3歳のときに自分を捨てた母を探しに日本に来たことが明らかになる。
 
 女はレコードをかけ、スティーヴンと踊る。二人を撮影しようと車椅子から立ち上がり、倒れた岡谷を支える女。抱き合う二人を撮影するスティーヴン──。
 
 スティーヴンの手に古い写真を残して女が去る。それは岡谷が撮影した麻美の写真だった。
 
 第3幕。朝。女が現れる。女は2週間前に引っ越してきた岡谷の娘・葉子だった。スティーヴンは、この前、葉子が訪ねてきた後、岡谷は食事をよく食べるようになったが、ほどなく若い女の新人看護師に看取られて亡くなったと告げる。「行きずりの女の子に看取られるなんて、あの人らしくていい」と葉子。
 
 「ぼくはダメなケアワーカーです」とスティーヴン。葉子は「あの人に最期まで写真を撮らせてくれてありがとう」と言い、カメラをスティーヴンに託す。
 
 来月、オーストラリアに帰るというスティーヴン。「介助されるのはどんな気分なのか、すごい知りたい」と言うスティーヴンは、葉子に手土産のドーナッツを食べさせて欲しいと頼む。
 
 字幕にふたりの「未来の人生」が流れる。スティーヴンはオーストラリアで友人とネットショップを経営。遺品のカメラで風景写真を撮るようになるが、34歳の若さで交通事故死。葉子は中学校の教師と結婚。夫と死別。認知症となり98歳で永眠。
 
 スティーヴンが傍らの箱を指し示す。出てきたのはアルバムだ。写真に見入る葉子。リン!リン!リン! 激しく鈴を鳴らすスティーヴン。
 
 スクリーンに老人が撮った写真が映し出される。ホームの室内、窓からの景色。あの夜のスティーヴンと葉子の2ショット。そして葉子を抱きしめる岡谷。岡谷が写真の中からこちらを見ている──。

プロフィール:
1983年生まれ。俳優、介護福祉士。2010年から平田が主宰する青年団に所属し、特別養護老人ホームで介護福祉士として働きながら演劇活動を行う。東日本大震災を機に、2012年9月、岡山県和気町に移住。OiBokkeShiを立ち上げて「老いと演劇のワークショップ」をスタート。ワークショップで出会った88歳の岡田忠雄さんを主役に、2015年、OiBokkeShi第1回公演として和気町駅前商店街を舞台にした認知症徘徊演劇『よみちにひはくれない』を発表。以来、「介護現場に演劇の知恵を、演劇の稽古場に介護の深みを」をコンセプトに活動。OiBokkeShiとして『老人ハイスクール』(2015)、『BPSD:ぼくのパパはサムライだから』(2016)、『カメラマンの変態』(2017)を発表。2016年に拠点を岡山県奈義町に移し、奈義町アート・デザイン・ディレクターに就任。TVドキュメンタリー番組「よみちにひはくれない〜若き“俳優介護士”の挑戦〜」が第24回FNSドキュメンタリー大賞優秀賞受賞。
OiBokkeShi – 「老いと演劇」オイ・ボッケ・シ
http://oibokkeshi.net/
 
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