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Presenter Interview
Norway's Ultima Contemporary Music Festival is held annually each autumn. This year the spotlight is on Japan.


 
――ウルティマは現代音楽フェスティバルですが、企画のなかにはオペラやクラシック音楽のプログラムも含まれています。あなたがたの考える「現代音楽」の定義は?
ヨンソン:   非常に難しい質問ですが、「何が現代音楽か」という問題は、私たちがこのフェスティバルを運営するうえで常に考えていかなければならないことです。今日つくられる作品だからコンテンポラリーなのか、もしくは過去に語り伝えられたことが今日の世界を反映するからコンテンポラリーなのか? 私たちはこうした疑問に対してもっぱら寛大に対処することにしています。フェスティバルが対象にしているのは、基本的に新しい方向へ発展している作品や事業です。こういったものがプログラム全体の70〜80パーセントを占めているのではないでしょうか。毎年およそ35もの作品が世界初演で、その約3分の1が海外からの作品です。フェスティバル予算の3分の1から半分ぐらいがこうした新作のために使われています。
例えば、今年 (2004年) のフェスティバルでは、70年代から80年代のオランダの音楽、特に作曲家フィリップ・ユレルと彼の弟子たちを中心にした現代音楽を紹介しました。さらにパリや、アフガニスタン、トルクメニスタンなどもプログラムしました。これらの共通点は何だと思いますか? 答えは、イーゴリ・ストラヴィンスキーです。ロシア人の彼はパリに来て、世界中の作曲家に影響を与えました。これはプログラムに書いていないことなのですが、ストラヴィンスキーにまつわるプログラムでありながら、ストラヴィンスキーの作品そのものはまったく登場しませんでした。
その一方で、中世のバロック音楽も取り上げました。演奏家たちとうまく調和するものであれば、それもありです。演奏家は生身の人間で、彼らがやることにはある内発的な動機があることを認める必要があります。トップレベルのパフォーマーにとって、インスピレーションとはその質が問題なのであり、その種類にこだわっていたら、演奏家たちが望む作品を生み出すことはできないでしょう。ですから現代の演奏家が何か初期のもの、たとえば1920年代からさかのぼって13世紀のものをやりたいなら、それに芸術的な理由があれば一向にかまいません。彼らの好まない現代作品を15分でいいから演奏してくれとは言いません。それは何を意味しているのか? 詰まるところ、よいコンサートを聴衆に提供したいということに尽きます。それでも、新しいスタイル、新しいレパートリー、新しい見識をもたらす新しい作品を紹介するという私たちのねらいに変わりはありません。
大まかにいうと、ウルティマのプログラム全体の30〜35%が新作、50〜55%が過去20年以内に発表された作品、残りはアーティストと相談して、あらゆる観点からインスパイアされた特別なもの。たとえば毎年、クラッシック音楽のプログラムを企画していて、2004年は、中央アジアの音楽に関する「Via Kabul(カブール経由)」を企画しました。過去には、中国の京劇や、モスクを建ててシリアの音楽を取り上げたこともあります。2000年には日本の雅楽もやりました。
 とにかく私たちは、どこからインスピレーションを得ているか、という大きな概観を描こうとしているのです。ちなみに、フェスティバルはノルウェーの18の団体が共同で運営しており、各団体がコンテンツを提案する権利をもっています。コンテンツは最終的にプログラム委員会で決定しています。

――2005年のテーマの1つで日本の音楽を取り上げるとのことですが、どのような取り組みがありますか。

ヨンソン:   日本のプログラムを組み立てるときに難しいのは、何が日本の音楽であるのかを一言で表せないこと。日本で生まれた音楽を意味するのか、日本に住んでいる芸術家のものか、日本で訓練されたものか、など。多くの優れた日本人作曲家が世界各地で活躍していますが、たとえば20年間も外国に住んでいる日本人の作品は、ヨーロッパ人からすると日本を感じられても、日本国内にいる人にとってはそれを日本的だとはいわないでしょう。
この10年私が見ただけでも多くの新しい才能が出てきていますが、彼らにはさまざまなスタイルがあります。パリ、ロンドン、アメリカを拠点にするなど、世界の他の地域に住むことを選んでいる場合もありますし、私たちが先日会った音楽家の近藤譲のように、60年代アメリカにいたことで国際的に知られるようになり、ヨーロッパでも公演やレコーディングを行っているので、多くの人がヨーロッパ在住だと思っているような人がここ日本在住だったりする。つまり、国際的なコミュニティーでは音楽家の住んでいる場所は関係なく、彼らの作品のクオリティーが話題になります。繰り返しますが、私たちが見つけようとしているもの、それはクオリティーです。ですから、今回のフェスティバルでも、日本の音楽の概観のみを見せかけで紹介することは考えていませんし、それはそもそも不可能です。
それで今回私たちは、3人の音楽家の招聘を決定しました。一人は近藤譲で、3人のうちで一番年上です。二人目は西村朗。そして、他の二人とはまったく異なるタイプの鶴見幸代という、若くて有能な女性音楽家を選任しました。近藤は中央ヨーロッパの音楽の影響を受けた60年代を代表する存在。西村はヨーロッパの影響を受けながら日本の音楽を再定義し、そして鶴見は、虚無の世界観をもって日本の音楽を「再解釈」しようとしている。これは本当にたのしみです。非常に革新的な作品になるでしょう。
この3人の作品を日本プログラムのコアにし、細川俊夫の現代作品を演奏する雅楽集団の伶楽舎を今回も招聘します。また、ダンスカンパニーのレニ・バッソの招聘を検討中です。そのほかにも、およそ15人の日本人作曲家による25〜30の作品を上演します。あえていうなら、注目すべきは、私と同世代の先進的な作曲家である細川と西村です。日本のプログラムは10月2日から10月9日までで、フェスティバル期間のほぼ半分を占めています。フェスティバルは日本で始まり、ドイツ・フランスのプログラムで終わります。その間にノルウェー音楽のワールドプレミア公演がいくつかあります。

――日本プログラム開催のアイデアはどこから?

ヨンソン: 私が1998年にフェスティバル・ディレクターの仕事を引き継いだとき、ちょうどその前年のフェスティバルで日本にスポットを当てた催しがあり、大成功を収めていました。その後2000年にも東京インターナショナル・ミュージック・アンサンブルを招聘し、武満徹の『秋庭歌』を披露してもらったのですがそれは本当に素晴らしかった。その時に彼らと、2005年の日本プログラム開催を約束したわけです。
ヘンリクセン: 日本は1905年のノルウェー独立を認めてくれた最初の国の1つで、2005年は独立から100年の記念すべき年です。日本との文化交流プログラムをつくるべきだという提案を政府に伝え、1999年から2005年まで日本の作品を毎年招聘する案を示し、実際それを成し遂げました。
ヨンソン: もちろん2005年以降も日本人の芸術家たちとの交流は続きます。日本人芸術家と何年間もともに仕事をしてきましたから多くの友人がいますし、よい関係が保たれています。私はあらゆるところに対してクオリティー求めますが、とりわけ日本はレベルが高い。ピアニストの高橋アキのような優れた演奏家にしてもそうです。日本のアーティストに限らず、こうした優れた演奏家の情報やフェスティバルのプログラムを考えるためのアイデアは、私たちが絶えずいろいろな人たちと話をする中で得ています。日本人を含む外国の芸術家を紹介しあうヨーロッパ域内のネットワークもあります。
 
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