The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
The メCity of London Festivalモ is an arts festival that has taken route in the international financial center of メthe Cityモ
世界の金融センター「シティ」に根ざしたシティ・オブ・ロンドン・フェスティバル
カスリン・マクドウェル
──フェスティバルのテーマとして、ここ数年は毎回、ある「国」に焦点を当てているようですが、これはどういう方針からですか?
これもやはりシティという場所から来るものといえるでしょう。「国」というよりは、シティの重要な取引相手のある地、としてとらえているのです。私がディレクターに就任した2001年は、同時多発テロがありました。その時に強い印象を受けたのが、そのニュースを見ていたシティで働く多くの人たちが、悶々として、いてもたってもいられないという風情で自然にセント・ポール大聖堂に集まってきたという光景です。ビジネスの中心地であるシティにとって、ニューヨークは最も親密な関係にある都市で、多くの企業が同時にテレビ会議を行うような間柄です。
その意味で、彼らにとっては、英国のどの他の都市よりも、日常の業務を通してつきあっているニューヨークの方が近しく感じられているのだ、と痛感しました。そこで、シティの親しいトレーディング・パートナーとしての国を紹介する、という切り口を考えました。狭い面積なのにこれだけ国際的なシティでは、ビジネスの取引の場が文化交流の場にもなりうることを示したかったのです。
昨年は、民主化10周年を記念することもあって南アフリカをテーマにしました。今年はオランダ、ここもビジネスではロンドンと非常に古い付き合いのあるところですが、古楽の第一人者トン・コープマンのオーケストラや、伝説的なジャズグループICP、その他数々のオランダ人演奏家の公演や、バービカンでのオランダ映画の紹介、最先端のアーティストによる音と光のインスタレーションなどがあります。
来年は日本特集です。いうまでもなく、シティには古くから多くの日本企業が操業しており、シティで果たしている彼らの役割は大変なものです。シティの企業と話していて、そろそろフェスティバルでも日本を集中して紹介するいい時期なのでは、という気運が感じられたこと、また次期のLord Mayorが、日本に長く滞在したことのある大変な日本通であることも起因して、一昨年の南ア特集並みの大掛かりなプログラムにしたいと考えています。
先にも言いましたが、私は、シティが示すように、古い伝統を背景に存在する現代、ということを強く意識していますので、例えば能と20世紀オペラのダブルビル・プロダクションなど、日本の歴史と最先端のアートが対比できるプログラムにすべく、今準備しています。ですからクラブ・ミュージックとともに声明がラインナップされるかもしれませんし、パフォーミング・アーツだけでなく、日本の得意とするアニメやファッション、食文化などを紹介できる機会も設けたいと思います。日本に詳しく、コネクションのあるプロデューサーやエージェント、芸術団体と相談しながらシティで提供するにふさわしい内容にするつもりです。

──フェスティバルはどこが母体となり、運営されているのですか。
シティ・アーツ・トラストという非営利団体がフェスティバルの運営母体です。フェスティバルの財政基盤は、マッチング方式で、シティの自治体であるコーポレーション・オブ・ロンドンの予算、プライスウォーターハウスクーパース(国際的な会計事務所)というフェスティバル全体のメインスポンサー企業、教育プログラムのためのスポンサー企業、その年のテーマによって参加する個々の企業協賛、公的な助成、チケット収入から成っています。また、広告宣伝のために、毎年英国の主要な新聞社にメディア・パートナーとなってもらっています。今年はタイムズ、昨年はインディペンデント社でした。また、BBC3(ラジオ)とも提携し、教会などで行われるコンサートの多くが生中継されるので、ロンドン以外の人たちにも楽しんでもらえるようになっています。
私たちの運営の特徴は、芸術監督がエグゼキュティブ・ディレクターを兼任しているということがあると思います。専門家の意見をとりいれて質の高いプログラムを発案するのと同時に、それを実施する資金も自分で目処をたてなければならず、理想と現実のバランス感覚を問われる良い訓練となります。これも、金融の中心地であるシティで行うフェスティバルであるということと深く関係しています。つまり、ビジネスには常にリスクが伴いますから、それに従事する人はその事業のために綿密に調査し、その有効性を裏付けなければなりません。それと同じ作業が求められるということです。
ですから、私たちはフェスティバルの終了後すぐ、パートできていたスタッフが解散する前に、全員でミーティングをして、各事業の反省会を行います。マスコミの批評など芸術的評価を集め、企業スポンサーとその顧客の感想・満足度を聞き、私たちで自己評価をし、そして何よりも来場者のプロフィール──新しい層を取り込めたか、幅広い文化背景を持つ人に来てもらえたか──について注意を払います。この後、総合的な報告書を、フェスティバルの財政基盤であるコーポレーション・オブ・ロンドンに提出します。

──フェスティバルは、シティおよびその近隣地域にどのように役立ち、活性化させていると思いますか?
多くの団体がそうであるように、私たちのフェスティバルも教育・コミュニティプログラムに力を入れています。フェスティバルの時期以外も、数名の常駐スタッフをおき、フェスティバルのエッセンスを外に届ける努力をしています。企業向けのプログラムでは、組織の一員として仕事をする際に、チームワーク作り、リーダーシップの発揮などアートで必要な技術や心構えが、いかにビジネスに役立つかということを示します。
また近隣地域での教育プログラムを提供しています。これは非常に大切なことです。というのも、最初に話しましたように、シティから一歩出た地域は、普段は、文化芸術に接する機会や余裕のない、恵まれず、様々な文化背景を背負った人たちが居住しているからなのです。都市において、そこに住む人たちの文化的多様性を理解することはきわめて重要です。
こういう地域の人たち、特に若い人たちにもアートに関わり、フェスティバルに参加してもらおうと、通年で、彼らのイメージをもとに、ロンドンやシティの歴史をテーマにした芝居や音楽、ダンスを制作してもらい、フェスティバルのオープニングで披露するということをやっています。
今年は、子供たち一人一人に、ロンドンの古い歴史、例えばロンドン大火やペストの流行などを彼らの視点でバナーに描いてもらい、それを自分で掲げながらシティまで行進してもらいます。またコミュニティプログラムとして、地元の若者や「リサイクルド・ティーンエージャー」を豪語する年配者からなるダンスの同好会──分野は、社交、ジャズ、コンテンポラリーなど様々──がオープニングの時に、屋外のスペースで踊るというのもあります。普段はシティに足を踏み入れない人たちです。
圧巻だったのは昨年で、南アの有名なジャズ・トランペッターのヒュー・マサケラが音頭をとり、セント・ポール大聖堂で近隣の子供たちが大合唱したことです。これまで歌った経験の無い子供たちだったのに、すっかりコンサートを支配していました。各芸術機関が、それぞれの地域の特徴に沿って、質の高い、関わる人たちが忘れられないような形での教育プログラムを提供すれば、それが多くの人を取り込み、街の活性化につながるのではないでしょうか。
 
BACK
| 1 | 2 |
TOP