The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
An organization for the promotion of the arts in the American Midwest, Arts Midwest
アメリカ中西部の文化振興組織 アーツ・ミッドウェスト
吉田恭子
──中西部の状況について教えていただきたいのですが、文化的な中心地はミネアポリスですか?
ミネアポリスは確かに中西部の文化的中心地の一つです。NYに次いで住民一人あたりのシアター所有率が高いと言われ、ミネソタ管弦楽団が本拠地にしているオーケストラ・ホール、リージョナル・シアターとして有名なガスリー・シアター、今年の4月に大規模な拡張工事を終えて再オープンした全米有数の現代美術館で劇場もある、ウォーカー・アート・センターなどがあります。その上、ガスリー・シアターは新館を建設中、チルドレン・シアターも拡張中と、今、ミネアポリスのカルチャー・シーンはもの凄く活気があります。この辺の状況は、残念ながらあまり日本では知られていないと思います。
他にも、シカゴ(イリノイ州)や、オハイオ州、ミシガン州の地方都市でも芸術、文化が盛んです。例えばミシガン大学は、日本の世田谷パブリックシアターとイギリスのテアトル・コンプリシテが共同制作した『エレファント・バニッシュ』を招聘するなど、先鋭的です。中西部ではこの他にも素晴らしい芸術プログラムを組む大学がたくさんあるので、大学のプレゼンターと提携して日本のアーティストを紹介することも考えられます。
劇場をもっていろいろな事業を行っているアメリカの大学は、日本で例えると地方の公立ホールのような役割も果たしています。予算もあるし、コミュニティとのパイプもあり、学生を含めた観客もいる。中西部を中心とした大学のプレゼンターが集まった、「ユニバーシティ・プレゼンターズ・ネットワーク」もあります。

──中西部のアーティストを広く、州外、地域外に紹介するのもアーツ・ミッドウェストの役割とのことですが、どのような取り組みをしていますか?
例えば、毎年9月には「ミッドウェスト・アーツ・カンファレンス(MAC)」という4日間にわたる舞台芸術見本市を開催しています。MACのためには、ライブ・ショーケースに参加するアーティストを中西部を中心とした全米から募集し、200〜300件の応募の中から専門家が選考した20件ぐらいを上演します。応募するのに60ドル、ショーケースにかかる経費負担は650ドルとどちらも有料なので、その金額を負担してでもMACでプレゼンテーションをしたいと思っているカンパニーだけが申し込んできます。もちろん、アーティストのマネージャー達はブースも出します。中西部を中心としたアーティストの情報を、全米のプレゼンター(一部海外も含め)が収集しにくるわけです。
ちなみに、こういう地域のカンファレンスは、MAC の他に「ウェスタン・アーツ・アライアンス(WAA)」、「パフォーミング・アーツ・エクスチェンジ(PAE)」と全部で3つあります。毎年9月に約2週間ずつ期間をずらしながら西部、中西部、南部の順に開催しています。
リージョナルのカンファレンスが開催される前、6月ぐらいに州単位でプレゼンターが集まる会議もありますし、毎年1月には全米のプレゼンターの集まるアソシエーション・オブ・パフォーミングアーツ・プレゼンターズ(APAP)があります。こうして、州、地域、全米レベルの会議で、アーティストの情報収集だけでなく、業界の共通のビジョンや課題についても話し合われ、nonprofit arts sector全体としての意識が高まり、社会に対する発言力も強化されていきます。

──今、アメリカのプレゼンターが興味をもっている日本のパフォーマンスは?
一人一人、違うと思いますが、日本のコンテンポラリーダンスについては、次ぎにどんな新しいものがでてくるか期待しているプレゼンターは比較的多いと思います。それと邦楽もかなり可能性があるのではないでしょうか。まだまだ知られていませんが、アメリカのブルー・グラスやジャズとのコラボレーションを入れ込むなどして、新たな広がりが期待できます。

──日本のアーティストを紹介する場合、コラボレーションは有効だと思いますか。
アメリカで名の知れていない日本のアーティストは集客が難しいので、米国で知名度のあるアーティストとコラボレーションができればそこから広がる可能性は大きいと思います。ただ、どうすればそういうアーティスト同士が出会えるかが課題になります。

──レジデンシーはいかがですか?
レジデンシーはいろいろな意味でとても有効な方法だと思います。なぜ日本のアーティストを招聘するのか、と言われた時に、ただ素晴らしいアーティストだからとか、こういう表現はアメリカにはないから、というだけではなく、そういう芸術表現を地域のコミュニティや観客にわかりやすく還元するためにレジデンシーもするというと、理解を得やすいし、資金援助も受けやすい。コミュニティーや観客にも興味を持ってもらえます。
アーツ・ミッドウェストでも「ミッドウェスト・ワールド・フェスト」という大規模なレジデンシーのプロジェクトをやっていて、2003年から4年間、毎年、日本のバンブー・オーケストラを招いています。ミッドウェストのコミュニティーのためのオリジナルプロジェクトで、各地に1週間ずつ滞在しながらアーツ・ミッドウェストが管轄している9州を2年間で巡回する(1年目5週間、2年目4週間)。それも日本の誰も知らないような、日本人を初めて見るようなコミュニティに行くんです。
1週間のスケジュールがほぼ決まっていて、日曜日に現地入り、夜は歓迎会、月・火・水曜日は地元の中学・高校に行って教室でワークショップ、木曜日はジャムセッションなど、金曜日は訪問したスクールの子どもたちのためのミニ公演、そして土曜日はコミュニティのための本格的なパフォーマンスをやるといった具合です。
アーツ・ミッドウェストのつくった教材用のCD-ROMで子どもたちは6カ月前から学校で日本の文化や芸術について勉強するので、みんなとても期待して待っています。私も1度行きましたが、自分の教室に来て手取り足取り教えてくれたアーティストが舞台の上でパフォーマンスするのを見て、「あの人に教えてもらったんだ!」と子どもたちは大興奮です。アメリカの中西部の田舎で、日本のアーティストのコンサートに親子で出かけていくなんてなかなか想像できないのですが、100枚あったCDが、400〜500人収容のホールで売り切れるんです。本当に小さな竹の楽器の微妙な音をみんながシーンと固唾を飲んで聞いていて、感動しました。2年ごとに国を変えてやる予定だったのですが、バンブー・オーケストラがあまりに評判がよかったのでもう2年続けてもらうことになりました。
このような、レジデンシ−は、特に日米双方の大都市以外で、地域性にこだわった面白い形で展開できる可能性が大きいと思います。米国のアーティストはレジデンシーやアウトリーチに非常に長けている人が多く、日本の文化に深い興味と尊敬を持っている人も多いので、とても良い交流プログラムが作れると思います。また、このような「顔の見える」国際芸術交流プログラムは、今の時代に特に重要で有効だと思います。
 
BACK
| 1 | 2 | 3 |
TOP