The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Placing top priority on new writing and nurturing playwrights   Scotland's Traverse Theatre
新人作家育成と新作戯曲の重要拠点 スコットランドのトラヴァース・シアター
ドラマ・リーディング「Japan in Scotland Readings」
2006年6月にトラヴァース・シアターで行われたドラマ・リーディング「Japan in Scotland Readings」の模様














*7   日本の現代戯曲のリーディング・シリーズ
2001年、英国における大型日本文化紹介行事「Japan2001」の公認行事として、ロンドンのブッシュ・シアターで日本の現代戯曲4作品のリーディングを7月と12月の2回にわたって実施。7月には、すでに翻訳されていた永井愛『時の物置』、鈴江俊郎「髪をかきあげる」、12月には新たに翻訳された土田英生『その鉄塔に男たちはいるという』、長谷川孝治『あの川に遠い窓』がリーディングされた。






























*8   アイホールでのスコットランド戯曲のリーディング
2004年からアイホールが連続して取り組んでいる、トラヴァース・シアターとの交流事業「日英現代戯曲交流プロジェクト」。毎年スコットランド戯曲を1作品選んで翻訳し、関西の演出家と俳優とでリーディング公演を行っている。04年はデイヴィッド・ハロワーの「雌鶏の中のナイフ」、05年はグレゴリー・バークの「ガガーリン・ウェイ」、06年はロナ・マンローの「アイアン」がリーディングされた。劇作家本人をアイホールに招き、ポストトークやシンポジウムも実施されている。次回は07年3月を予定。
──どうやって海外の戯曲にぴったりの劇作家を見つけるのですか?
海外の劇作家に最も合うスコットランド人または英国人劇作家を決めることは、翻訳作業の全プロセスの中でも最もエキサイティングな部分です。その海外戯曲をユニークなものにしている雰囲気とエッセンスを、我々がいかに理解するかによって選ぶ劇作家が変わってくるからです。
ですから、まず、翻訳したいと思う戯曲について、そのオリジナル言語の雰囲気と特徴について熟考します。それから、戯曲の内容というよりも、その言葉の使い方に最も相応しい劇作家を見つけます。もちろん、それはスコットランド人の劇作家について熟知していなければできません。最新の例では、今年のエディンバラ・フェスティバルで上演される『Strawberries in January』は、ケベック在住の劇作家イヴリン・ドゥ・ラ・シュヌリエールの戯曲をスコットランド人の劇作家ロナ・マンローが翻訳しました。粗訳を読んで作品を気に入ったロナは、モントリオールに10日間滞在して、私とイヴリンとカナダ人のドラマトゥルグと一緒に注釈付きの言語的翻訳作業を行いました。昨年、トラヴァースで翻訳草稿をともにしたリーディングを行い、台本を練り上げました。

──日本との交流にも積極的ですね。
私と日本とのつながりは2001年に始まりました。日本から入ってくる現代演劇にとても興味がありましたが、英国ではあまり取り上げられていないと感じていました。日本劇作家協会で英語に翻訳されて出版された戯曲がいくつかあって、それが日本の現代戯曲を知ることができる唯一のものでした。英国にやって来る歌舞伎などは見ていましたが、現代戯曲の劇作家とは接点がありませんでした。日本の現代小説家や映画製作者との交流はあったので、優れた現代戯曲も日本にあるはずだと思っていましたが、まったく交流がもてなくて少しがっかりしていました。
それで最初は本当に小さなことから始めました。2001年に鈴江俊郎さんの『髪をかきあげる』をリーディングしたのです。私が演出しました。この時はすでに翻訳されていた台本を使いましたが、すばらしい作品でした。ここでようやく日本の現代演劇と、鈴江俊郎という劇作家と繋がることができ、これがプロジェクトの第一歩になりました。ただ、十分な資金を準備できなかったので劇作家本人をトラヴァース・シアターに呼ぶことはできませんでした。
その後、ロンドンのブッシュ・シアターが日本の現代戯曲のリーディング・シリーズ(*7)をやった時に、「髪をかきあげる」のリーディングをもう一度ブッシュ・シアターで演出してもらえないかと依頼されました。そこで幸運にも鈴江さんに会うことができました。彼の作品との繋がりを強く感じましたし、彼がずば抜けた才能を持つ劇作家であることもわかりました。それで私たちはPlaywrights in Partnershipで鈴江さんの作品(『うれしい朝を木の下で』A Happy Morning Under a Tree)を本公演での上演を目標として翻訳することに決めたのです。アジアの言語の翻訳はヨーロッパ言語よりはるかに難しいので、残念ながら何年もかかっています。

──それは文化の違いがあるからですか?
そういうことではありません。アジア言語を話す人が少ないからです。そのために翻訳者の数も限られてきます。逐語翻訳のできる優秀な翻訳者をなんとか見つけて劇作家と作業をしていったのですが、戯曲はとても曖昧だし、ある言葉を翻訳する時には選択がつきものですから、優秀な翻訳者でさえ誤訳します。戯曲の翻訳で難しいことのひとつは、わずかでも選択を誤ると間違った方向に行ってしまうということです。ですから、オリジナル戯曲の劇作家がそこにいて「違う、違う、そういう意味ではありません」と言うことがとても重要なのです。
一行一行、一語一語の翻訳について議論を尽くすというのは、それは登場人物について掘り下げることであって、言葉をどう翻訳するかについてではないのです。それはもう膨大な作業です。草稿を練り上げ、言葉の繊細さを正確に捉えるには長い時間が必要になります。
鈴江さんとの良好で強い関係は、私たちと日本の劇場との交流に対する国際交流基金のすばらしいサポートのおかげですが、これがきかっけとなり今では多くの日本の劇作家との交流がはじまっています。2004年には、トラヴァース・シアターの芸術監督であるフィリップ・ハワードと私、そしてスコットランド人劇作家のデイヴィッド・ハロワーとニコラ・マッカートニーの4人で日本へ行き、世田谷パブリックシアターと伊丹のアイホールでリーディング上演を行い、さらに京都芸術センターでもトーク・セッションを行いました。3都市での仕事を通して、現代演劇の数多くの若手の劇作家、経験豊かな劇作家たちに会うことができ、互いの仕事のことや、それぞれの国での仕事のシステム、芝居の稽古のこと、劇作家がおかれている状況などについて多くのことを話しましたが、とても楽しい大きな経験となりました。互いの仕事について多くのことを詳細に学び、刺激し合う対話になったと思います。
その後、日本から鈴江さんと松田正隆さんをトラヴァース・シアターに招き、彼らの英訳戯曲のリーディングをしました。それからは年に1度、アイホールでのスコットランド戯曲のリーディング(*8)に、その翻訳された戯曲の劇作家とともに呼ばれるようになりました。戯曲はとても良く翻訳されていて、そのことがこの交流の成功の鍵になっていると思います。
今年は、さらに二人の劇作家、土田英生さんと岩崎正裕さんをスコットランドに招き、トラヴァース・シアターにレジデンシーとして滞在する形を試すことにしました。日本からプロデューサーも招き、トラヴァース・シアターのさまざまなセクションのスタッフと会ってもらい、私たちの仕事について紹介するとともに、彼らの仕事についても私たちに話してもらいました。私は、このプロデューサーのレジデンシーというのはとても面白いものだと思っています。土田さんと岩崎さんにはこちらの若手の劇作家たちにも会ってもらいました。彼らは日本の現代戯曲についてほとんど知識がなかったので、日本の演劇について聞くことができてとても楽しかったようです。リーディング公演と、日本の現代戯曲についてのパネル・ディスカッションも行いました。こうしたレジデンシー型の取り組みはアーティスト同士の双方向の対話もできて、最高の形の芸術交流だと思います。
もうひとつ言いたいのは、日本の劇作家との仕事をぜひとも続けていきたいということです。その度ごとに大きなコストがかかるので、よく考えながらやらなければなりませんが、鈴江さんの作品は本公演として上演するところまで持っていきたいと思っています。もっと多くの劇作家と仕事をするために、リーディングも続けていくつもりです。日本の劇作家たちの仕事は非常にクオリティの高いものです。私たちの感覚にとても近かったり、時には全く違っていたりしていて、とても興味深いものだと感じています。
 
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