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Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Taiwan's new cultural policy -- The Taiwan National Theater now semi-NPO
台湾の新文化行政〜半NPO化した台北国立劇場
──ピンさんが就任されてからどのような改革をなさったのですか?
NSOは別にして、同センターは10の部署で構成されています。これまでスタッフはただ上司の言う事に従っていればいいだけでしたが、新体制の下で大切なのは、各部署が自らの意思で考え、自らの部署の計画を立てて行くことだと思っています。
それで、着任してからスタッフを大きく3つのセクションに分けました。舞台公演そのものを司るアーティスティック部門、マーケティング部門、そして管理部門です。一番大きな変化があったのはおそらくマーケティングの部門でしょう。なにしろ、観客・顧客によりよいサービスを提供するというのが組織全体の目指す方向性なのですから。例えば、センター内の物販テナントを増やすというのもマーケティング部門の仕事ですが、これもただ単にテナント料が増えればいいというのではなく、公共に対してベストなサービスは何かという観点で対応する必要があります。
以前のマーケティング部門は、とにかく公演を広報することだけに集中していました。しかし、今後は、センター全体のイメージ向上を図るという仕事のしかたをしなければなりません。来年創立20周年を迎えるにあたって、実は今CIを一新しようと考えていて、毎月発行している雑誌『パフォーミング・アーツ・リビュー』もリニューアルしたところです。上演時に配るプログラムの内容に意を凝らすより、この雑誌で上演演目についてより深い情報を掲載することにしました。例えば、先の7月号では、8月に大規模なジャズ・フェスティバルを開催するのに併せて、ジャズのイロハからからQ&Aまで40ページもの「ジャズ特集」を企画しました。

──この舞台芸術センターの公演事業はどのように企画されていますか?
国の傘下にあった時は、毎年1月から始まる「年度」の予算は、その年の3月や4月にようやく知らされるという具合でした。つまり、予算のわかった時にはもう残りの年度期間は3分の2程度しかないということです。しかも予算を繰り越すことはできず、与えられた予算は12月までに使い切ってしまわなければならない。こんな調子ではまともな公演事業の計画はできませんし、特に海外からゲスト・カンパニーを招くことなど不可能です。
でも新体制の下では、長期の計画を立てることが可能になりました。国は、向こう3年間は同額の予算を割り当ててくれることを表明していますし、その先の3年間についても「毎年3%減の後にいったん見直し」というラインで進められることが約束されています。つまり今現在、向こう6年間分の予算が立てられるということです。
国立劇場(1500席)での公演について言えば、全体の7割が地元台湾のカンパニー---演劇、ダンス、そして伝統芸能等の公演を、自主事業として主催しています。地元の団体でこの劇場に見合った規模のプロダクションで毎年定期公演ができるのは、せいぜい10団体しかありません。クラウド・ゲートが年に2回、ネオ・クラシック・ダンス・カンパニーが年1回、国立北京歌劇団が年2回の定期公演を行っています。こうした大型のカンパニーにとっては、定期的に新作発表ができる場になっています。残りの3割も自主事業で、海外からのカンパニーの招聘公演にあてています。国立劇場でのレンタル公演はほとんどありません。
この舞台芸術センターができたばかりの頃は、海外の大型の劇団をよく招聘したのですが、ほどなく国は、こういったプロダクションは金を垂れ流すばかりであるとして、より保守的な演目やあるいは収入の見込みが立つ大衆的なプロダクションばかりを主催するようになりました。海の外で起こっていることから自らを隔離してしまったのですから、これは致命的なことでした。
私の前任者で新体制導入前の3年間、芸術監督を務めたツォン・シン・ジュ氏が海外とのコミュニケーションを再構築しようと努力したのですが、それでも我々が海外のカンパニーを呼べる枠は非常に限られています。例えば02-03年のシーズンには3団体、04-05年には4団体といった程度です。これまで招聘した団体は、例えばオランダのネザーランド・ダンス・シアター、スウェーデンのクルベリ・バレエ、日本の勅使川原三郎のダンスカンパニーKARAS、スペイン国立バレエ。昨年は英国のDV8、フランスのマギー・マラン。今年はベルギーのローザス、そしてカナダのカンパニー・マリー・シュイナールなどまで広がっています。

──世界の大物ばかりですね。チケットの売り上げはいかがですか?
徐々に向上しています。ただ台湾では、バレエのチケットの方がずっと売りやすいという認識があって、海外のコンテンポラリー・ダンスを呼んで来るエージェントがほとんどいない。そのため台湾の人々はこうした海外の著名なコンテンポラリー・ダンスのことをあまり知りません。このセンターがメインの、というよりもほぼ唯一の招聘元なので、一般の人々にこれらを浸透させるには時間がかかります。
そんな中で、昨年やったDV8の公演は特別でした。DV8の台湾デビューだっただけでなく、新作を持ってきたために海外での評判もわからなかった。そこで我々は、事前にできるだけDV8の作品が露出するような機会を作りました。まずは公演の2週間前に彼らの作品のフィルム上映会をしました。それから公共放送のTV番組でもとりあげてもらいました。そうやって、生の舞台を観せる準備を整えた結果、3日間の公演チケットはめでたく完売となりましたし、観客の反応も非常に良好なものでした。
その他の海外カンパニーのチケットの売り上げは、2003年にクルベリ・バレエが『白鳥の湖』を演って75%、同年の勅使河原三郎の公演は85%。2004年のスペイン国立バレエ---これは結構ショックだったのですが60%。同年のチューリッヒ・バレエが92%。2005年のマギーマランが95%。ダンス公演は実に良い数字になってきていると思います。
私たちは、できるだけ多岐にわたった様々な作品を紹介したいと思っていますし、それが台湾の人々にとってとても大切なことだとも思っています。ただ、この「多岐にわたって」というのが曲者で、ひとつのまとまった観客を開拓するという意味においてはこの方針が障害になります。観客にある種の習慣を植え付けたいと思っているのですが----例えば日本であれば、ネザーランド・ダンス・シアターやピナ・バウシュなどはしょっちゅう公演しますから、観客は「次はどんな作品なのかな?」という期待をします。でも私のところで上演できる海外招聘枠はとても限られていますから、何年かに一度やってくるというサイクルを作り上げるしかないんです。

──2000席のコンサート・ホールの事業はどのようになっているのでしょう?
国立劇場とはかなり違っていて、こちらでの自主事業は全体の25%で、残り75%はレンタル。しかも25%のうちの半分は常駐オケのNSOの定期公演ですから、本当の意味での自主事業はたったの1割程度ですね。台湾では音楽のマーケットが巨大なので、このホールのレンタル希望はとても多いのです。我々としてはその要望に応えるために、レンタル用の日数を確保する必要があります。
ただ「レンタル」とは言っていますが、単純なレンタルではありません。私たちはホールの使用に本来かかる経費の3割引きでレンタル料金を設定していますから、借りる人に対して貸し館料を支援しているのと同じです。なので、借りるには、「申請」と「審査」が必要です。レンタルの申請受付は年2回。審査委員が、その申請書の内容から芸術的な質を吟味して選びます。申請者が多いため、3分の1は不採用です。しかも採用されたからといって希望の日程を確保できる保証はありません。
また、利用者の内、少なくとも3分の1のコンサートを我々で雇った専門家が聴きに行き、評価をしています。このホールを使うコンサートの水準を保つために最近になって始めました。自主事業については6ヶ月毎のカレンダーを制作していますし、観客に無料プログラムを配布しています。

──180席の実験劇場の事業はどうなっているのでしょう?
来年の創立20周年の準備として、同センターが台湾の舞台芸術に及ぼした影響についてリサーチを進めているのですが、その結果わかったのは、台湾中の中小規模の実験劇団、ならびにコンテンポラリー・ダンス・カンパニーは例外なくすべて、この実験劇場での公演実績があるという事実です。つまり、この実験劇場が続けてきた公演シリーズによって、地元のカンパニーの新作を過去20年間ずっと後押ししてきたということなのです。
このシリーズは折り折りに名称を変えてきましたが、近頃「ニュー・アイディア」と名付けたところです。特に実験的な作品をつくる団体は、その活動の初期の段階には私がかつて運営していたCrown Theaterで公演し、キャリアが成熟してくると、ここの実験劇場で上演の機会を与えられる、という経緯をたどっているのが一般的です。「ニュー・アイディア」シリーズの下では、毎年、約5つのダンス・プログラムと5つの演劇のプログラムを主催しています。
実験劇場では、小さな団体にできるだけ多くのチャンスを与えるということが運営方針の核になっています。彼らには思い切って実験的な作品をやってみるよう勧めています。劇場を借りる財力は無く、ボックス・オフィスの収入でプロダクション・コストをまかなうことなどもちろん不可能なのですから、実験劇場で公演できるチャンスを、自助努力ではぜったいに上演できないような思い切った作品のために使うべきだと思いませんか。
 
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