The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Egypt's first private sector arts and culture facility, Cairo's El Sawy Culture Center
エジプト初の民間文化施設 カイロのエッサーウィ文化センター
──エジプトの文化行政について教えていただけますか。
文化と芸術に関わる活動の推進と責任を担うのはエジプト文化省です。エジプト文化省は、あらゆる文化芸術活動の発展のためにいくつかの支援ファンドを設置しています。「文化パレス」という地域型の文化施設など、文化省の管轄に置かれている組織もあります。

彼らを含め文化を促進する組織には、柔軟性が一番必要なものだと思いますが、政府系の文化組織には行政機関としての官僚的な体制という難点があります。そのため、芸術文化を推進するにあたっては、規制緩和が重要な課題の一つとなっています。その上で、下部組織の実行力につながるような権限の委譲が必要だと思います。

一方、カイロにはフランス政府の「フランス文化センター」や、ドイツ政府の「ゲーテ・インスティトゥート」などのような外国政府の文化芸術支援機関もあり、彼らは自国の文化を発信すると同時に、エジプトのアーティストたちを支援し、エジプトの芸術文化の発展に貢献しています。民間では、アメリカの「フォード財団」もエジプトの若手アーティストたちに対して活発な財政支援を行っています。大学などにも、わずかですが、学生の自主企画に対し、支援金を給付するところがあります。ただ、全体的に見て、エジプトの芸術支援、とくに舞台芸術に関しては、そういった支援状況はまだ十分ではありません。

──上演許可を得るために当局の検閲委員会の対応で、苦労することはありますか? エジプトの検閲について教えてください。
正直、私にもよく分かりませんが、なぜか、今のところ検閲局と私たちの関係はたいへん良好です。検閲局が私たちに絶大な信頼を寄せてくれているからなのか、私たちの活動内容に対しては、まったく干渉しません。おそらく、人間の尊重と社会の平和と安定を根本とする私たちの倫理基準は、検閲ポリシーを超えるものがあるのではないかと思います。もちろん、人を中傷する内容、または過激的な表現が含まれる作品は、基本的には受け付けていません。

──エッサーウィ文化センターは2007年2月で創立4周年を迎えますが、この4年でエジプトの舞台芸術を取り巻く状況はどのように変わりましたか。
エジプトでは毎年、「カイロ国際実験演劇祭」というユニークなフェスティバルが開催されています。近年、エジプト政府の努力もあって、こうしたフェスティバルも質の高いものになってきているようです。日本含め世界各国からの多くのアーティストが参加し、今やアラブ圏の演劇界において新しい発想や技術を競い合う場として重要な位置を占めるようになりました。

一方、私たちの活動はまだ始まったばかりですが、カイロを拠点にして新たな挑戦をはじめました。2006年9月にエッサーウィ文化センターの支部となる新施設を開設したのです。そこはカイロ郊外にある学校の付属劇場なのですが、学校側から私たちに管理運営を委託されました。学校の施設というとイメージが沸きにくいかもしれませんが、独立した劇場のような建物で、舞台設備などが完備されています。この取り組みによって、生徒たちや地元の子どもたちとの交流が身近なものとなり、文化芸術の伝達がよりスムーズになるという大きなメリットがあります。今後もこのような外部との連携を活発に進め、将来エジプトのいたるところに、「サーウィの水車」のメッセージが届くよう、活動の拠点を増やしていきたいと考えています。

そのために、現在、株式会社として登録されている私たちの組織を、将来的には民間非営利団体(NPO)に変えていきたいと考えています。実はエジプトではまだ、NPOに対する規制が厳しいので、企業としての運営形態のほうが動きやすい状況にあります。今後さまざまなスポンサーを募り、支援を受け、コラボレーションを行うためにも、NPOとしての運営形態を整備する必要があると思います。

──エジプトにおける芸術環境に対し、今後どのような変化を期待していますか。
今回の日本での視察で非常に印象的だったのは、能や歌舞伎の劇場で多くの若者の姿を目にしたことです。すばらしい光景でした。こうした若者の伝統文化への強い関心と深い繋がりが具現化したかたちをエジプトでも見たい、それが私の願いです。

文化省の大臣だった私の父親はよく口癖で「真の国際化に達するには、<国内化>を極めることだ」と言っていました。つまり、一国の発展において私たちがなすべきことは、自国の文化に対する認識を深めることなのではないでしょうか。そのためには、精神の土壌となる文化の源に立ち戻り、伝統文化の再生と同時に、次の世代の若者たちの教養を高めていくこと、そして、それを達成するには、あらゆる芸術活動を活性化していくことだと思います。こうした文化の再生は決して容易なことではありませんが、努力を重ねることによって、「今」と「昔」、「伝統」と「若者」をつなぐ架け橋を築くことが可能になると思います。

──日本のアーティストたちへメッセージを。
日本のアーティストたちには、ぜひ一度エジプトに足を運んでもらいたい。そして、エジプトとアラブ諸国のありとあらゆる文化に触れ、肌で感じてもらいたいと思います。芸術文化が形成される土壌は風土にあるといわれるように、エジプト独特の風土のなかに生まれた芸術を現地で体験してほしいのです。伝統楽器や民謡、泥の彫刻、芸術作品ともいえる手づくりの絨毯やパピルスを使った絵画など、さまざまなアートは、長い歳月をかけて育まれ、エジプト人の暮らしを支えてきました。エジプトの伝統芸術はエジプト人の感性と魅力にあふれています。きっと皆さんの心に刻む何かに出会えると思います。
 
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