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Presenter Interview
One of South America's oldest and most active theaters, the Municipal Theater of Santiago, approaches its 150th anniversary
南米有数の由緒ある劇場 創立150周年のサンチアゴ市立劇場

子ども向けプログラム『白雪姫』
© Teatro Municipal de Santiago


モーツァルト 『ドン・ジョバンニ』
© Juan Millán T.
Teatro Municipal de Santiago
オペラの新作上演(自主事業)について

──市立劇場に話を戻しましょう。劇場にオペラ団がないということは、歌手や演出家や衣裳デザイナーなどを上演毎に探して契約するわけですか。
ええ。歌手に関して言えば、国際的な名声のある歌手と地元歌手とを混ぜています。舞台装置家や衣裳デザイナーにも優秀な人材があり、私たちとともに仕事をしています。私たちの関心事は、常に高いクオリティーにあります。能力があると判断すればチリ人の若手アーティストとも契約します。

──資料を拝見すると、サンチアゴ市立劇場で行われたオペラ公演にはミヒャエル・ハンペなどのビッグネームが演出した作品もありました。ハンペ演出の「ドン・ジョヴァンニ」のプロダクションは、どこかヨーロッパの劇場のものなのでしょうか。
私たちのための新作です。ハンペは私たちの劇場で何度も仕事をして貰っています。モーツァルトの「ティトゥス」「魔笛」「コシ・ファン・トゥッテ」、今度の「ドン・ジョヴァンニ」など。彼はスカラ座やザルツブルグでも同じ演目を出していますね。来シーズンはハンベ演出の美しい「魔笛」を再演する予定です。彼の演出では舞台装置と衣裳を地元デザイナーが担当し、照明もチリ人です。

──つまり、常に国際文化交流をおやりになっているのですね。
その通りです。歌手についても同様で、高いクオリティーを維持するために、地元アーティストとコラボレーションしてもらうこともあります。日本の新国立劇場や、メトロポリタン歌劇場で歌っている歌手も出演しており、オペラの国際的ネットワークになっています。

──劇場の聴衆はどのような人たちですか。
成人、老人、若者、子ども、あらゆる年齢層の人がいます。そのために私たちは複数のシリーズを用意しています。例えば25歳以下の学生のためのオペラ会員シリーズというのがあります。これは、主に18歳から25歳までの学生を対象にしていて、彼らが劇場を体験し、継続的に劇場に足を運んでくれるよう観客育成を目的にしています。公演の前に指揮者やソリストなどがレクチャーをしますが、このシリーズはとても成功しており、今はバレエやコンサートでも同様の取り組みをしています。

──短縮版を上演するのですか。
いえ、フルヴァージョンで、メインの国際シリーズと同じプロダクションです。ですが、国際シリーズと比べるとチケットは非常に廉価で、通常の会員価格が約20ドルなのに対し、学生たちは各公演2ドルほどで見られます。クラシック音楽やクラシックバレエ、オペラを聴いて大人になって欲しいと思っています。
子ども用のシリーズもありますよ。「眠れる森の美女」「ヘンゼルとグレーテル」「コッペリア」などを、飽きないように1時間に短縮して公演します。空軍シンフォニック・バンドが映画音楽を演奏する回もあります。全て日曜日の正午開演、ランチタイム前です。

──学校のクラスがそのまま来るのでしょうか。それとも、子どもシリーズとして個人にチケットを売るのでしょうか。
マーケティング部が学校に売り込みに行くこともありますけど、基本的には個人にチケットを売っています。日曜日に子どもをどうするかは大きな問題なんです。両親は遅くまで寝ているけれど、子どもは早く起きる(笑)。

──オペラの本公演について説明して下さい。
オペラは年間に6演目あり、国際的な歌手が登場する国際シリーズと、同じプロダクションをチリ地元キャストで上演するものがあります。私たちは地元演奏家にチャンスを与えたいと考えているからです。演出家やプロデューサーは国際キャストと同じで、国際キャストと並行して仕込みを行うので、地元の演奏家も多くを学ぶことが出来ます。難役のオテロには外国人をキャスティングしました。

──ローカル・キャストとはいえ国籍を制限している訳ではないのですね。
基本はチリ人ですが質が問題です。質に満足できなければ、外国から呼んでくることになります。ですから、私たちは同じ演目で、国際シリーズ4公演、ローカル・キャスト公演、若者向けのユース公演、それにスポンサーのための公演など、ひとつのプロダクションで、6、7回の公演を行い、制作資金をペイ出来るようにしています。
ちなみに、バレエ団は3年前から元・シュトゥットガルト・バレエ団のマルシア・ハイデが率いています。彼女は今チリに住んでおり、お陰で私たちのバレエ団は新作上演も増え、レパートリーともにコンスタントな公演活動を行っています。

新作委嘱について

──新作委嘱はされているのでしょうか。
先ほども申したように、バレエ団は新作をいくつも出しており、来年も新しい作品を上演します。2年前には「蝶々夫人」をプッチーニの音楽の編曲でバレエ化し、成功しました。衣裳には美しい着物を使いました。また、マルシア・ハイデが、ビゼーの「カルメン」のフルヴァージョンをバレエ化しています。歌はなく、楽器の演奏だけです。
現在は、2008年1月に劇場オープン150周年の記念として特別上演する作品を企画していて、「White Wind」と題される予定です。2年前にチリで起きた悲劇的実話を背景としています。冬が突然やってきて、若い兵卒を訓練していた部隊が猛吹雪に巻き込まれ、何も出来ないまま遭難し、18名が命を落としました。私たちは若いチームにこの物語のオペラ化を委嘱しました。

──若いチームというのは。
30歳くらいの若い作曲家とプロデューサーです。強力なスタッフですが、困難な作業になるでしょう。国家芸術財団という大きな財団があり、プロジェクトに資金を提供してくれることになっています。オペラの制作スタッフを申請し、認められました。1年半は国家によって生活が保証され、オペラが制作可能となりました。舞台上演のための申請もしました。一種の投資だからです。私も多くの人々が現代オペラを観るために劇場に来るとは思っていません。公的な支援は不可欠です。

──バレエの新作について説明してください。
先程触れました「ペインティド・ボディ」という作品も新作のひとつです。コスチュームもセットもなく、体全面にペイントを施した踊り手が、アンデスの鳥や巨大なコンドルが投影され、踊り手は鳥のように舞います。

──振付は伝統的な古典バレエの応用ですか。
いいえ。我が国の高名なノーベル賞詩人パブロ・ネルーダが、詩人の創造力で想像の鳥を創り上げました。その物語にもとづいた振り付けです。3人のチリの若い振り付け家が振り付け、4年ほど前に初演しました。昨年ヴェニスで上演し大成功でした。

──チリ人の作曲家セルヒオ・オルテガの新作オペラもネルーダ原作で初演していますね。
ネルーダは偉大な詩人です。1970年代に亡くなってからも、チリの芸術にとても影響を与えています。ネルーダのテキストでオルテガが1960年代終わりに書いた作品は、音楽の間奏を挟んだ劇場作品でした。亡くなる前、ネルーダはオルテガにオペラ化を頼んでいたので、2001年に私たちの劇場がプロデュースし、初演しました。最初はシーズンと別枠で上演し、2003年にシーズンに組み込み、その2週間後にフィンランドのサヴォリナ・オペラ祭で公演し大成功でした。
作品はとても南米的です。劇場、音楽、ミュージカルの融合で、歌手にはとても負担が大きく、巨大な合唱パートがあります。オルテガは合唱曲の巨匠でしたが、このオペラには少なくとも5曲は彼の合唱作品の最高傑作が含まれています。ヨーロッパでも大きなインパクトを与えました。
 
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