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楊紹林 ヤン・シャオリン
Profile
上海話劇芸術センター ゼネラルマネージャー
楊 紹林(ヤン・シャオリン/Yang Shaolin)


上海話劇芸術センター
上海話劇芸術センター

上海話劇芸術センターオリジナル作品「www.com」
作:喩栄軍
(ユィ・ロンジュン/英語名Nick Yu)
日本でも2003年に日中二カ国版が競演。インターネット恋愛を通じて描く現代の都会人の希薄で不安定な人間関係と孤独を表し好評を博す

ベルリン世界文化の家との共同製作作品
実験的伝統劇5作「中国文化の記憶」
(2006年春上海公演)
Presenter Interview
2006.12.25
Re-established as a stronghold of contemporary theater in Shanghai Creative efforts of the Shanghai Dramatic Arts Centre 
現代演劇の拠点として大・中・小ホールを運営する 上海話劇芸術センターの取り組み 
政府系の劇団でありながら、高い利益率を誇る上海話劇芸術センター。近年は、上海に生きる現代都会人の悲哀や孤独感を描く作品で、ホワイトカラー層を劇場に引き込み、主要な観客へと育て上げた。中でもプログラミング&マーケティング部のディレクターでありながら戯曲作家の顔を持つ喩栄軍(ユィ・ロンジュン/英語名 Nick Yu)の活躍は目覚しい。そうした若手の活躍の土壌を整えながら、徹底した採算制を敷き、観客のニーズに応える作品作りをリードするのは、ゼネラルマネージャー楊紹林(ヤン・シャオリン)。積極的に海外交流を行い、上海らしい個性を追求すると同時に、世界にも受容される作品作りを目指している。
(インタビュー・文 菊池領子:R PRODUCTION代表・文化事業プロデューサー)


──上海話劇芸術センターの成り立ちを教えて下さい。
上海話劇芸術センターは1995年1月23日の設立です。上海人民芸術劇院と上海青年話劇団の合併によって誕生しました。上海人民芸術院とは中国現代劇の開拓者である夏衍(シア・イエン/ Xia Yan)と黄佐臨(ホアン・ズォリン/ Huang Zuolin)によって1950年に設立された劇団です。上海青年話劇団は元上海戯劇学院の学長であり中国演劇の創始者のひとりである熊佛西(シォン・フォーシー / Xiong Foxi)が1957年に設立したものです。どちらも約半世紀の歴史ある芸術団体でした。
しかし、中国の改革開放が始まり市場経済制度へと移行する途中、2つの劇団は共に困難な事態に直面したのです。その最たるものは観客の流出と作品の製作本数、公演数の減少でした。原因は明らかです。社会制度の変化に伴って生じた文化の多元化によるものです。市場の波にもまれた結果、演劇は観客ばかりかスタッフもまた映画やテレビへと流出してしまいました。こうした状況を見て、我々はこれまでの管理運営方法では立ち行かないことに気づき、2つの劇団の合併に踏み切ったのです。

──合併後どのような改革を行ったのですか。どんな効果がありましたか。
いずれも歴史と基盤のある劇団です。腐っても鯛ですよ。様々な問題を抱えていたとはいえ、我々は単に管理方式を変えたに過ぎません。合併前は、団長が全てを仕切り、作品製作と劇団経営の両方を管轄していました。こうした方式は、閉鎖的で市場の影響を受けない環境下では安定した経営を行える利点があります。しかし、変化に富んだ不安定な環境ではこのような統括方式は向きません。そこで我々は、作品製作を司る役割として、団長の代わりにプロデューサーを据えることにしました。映画やテレビのプロデューサーと同じ、いわゆる「製作者」です。そのような管理方式の下では、ゼネラルマネージャーという組織の長である私の最大の役割は、作品の製作を促進することです。資金と人材の供給に関する権限を有し、その権限を行使してプロデューサーを選任し、組織の活性化を図ります。プロデューサーを据えることで、組織内部に製作グループが形成されるようになりました。以前の方式では、作品製作から劇団員の冠婚葬祭、医療保険、老後の保障といった福利厚生面まで、全て団長が取り仕切っていました。しかし、作品製作は芸術性の追及にその究極的な使命があり、福利厚生面の管理は公平性を貫くことが必要です。このような2つの全く異なる役割を同一人物が行うのは効率的ではありません。そこで役割を分けることにしたのです。
1995年の設立から既に11年の歳月が経ちましたが、その間大きな成果を上げることができました。これまでの製作本数は約200本にも上ります。平均すると毎年約20本。合併前は2つの劇団を合わせても年間7から8作品でしたから、製作本数を4倍に増やすことができたというわけです。
このような管理方式を採用した結果としてもう一点特筆すべきは、映像分野に流出した人材が戻ってきたことです。映像の分野も競争が厳しくなりましたからね。プロデューサー制度を採用したことで、人材の回帰現象が生じたのです。お陰でご覧の通り、上海話劇芸術センターの公演にはよくテレビや映画のスターが出演しています。

──プロデューサー制度とはどのようなものですか。
上海話劇芸術センターの正規のプロデューサーは2名です。他にプロジェクト単位で参加するプロデューサーが年間十数人います。企画ごとに経費を申請し、審査部門の評定を経て参加が決まります。彼らは正規の劇団員とは限りません。フリーランスのプロデューサーもいます。立場の安定性の点でいえば、2名の正規のプロデューサーも保障された立場ではありません。任期は3年です。作品製作費の80%を2年連続回収出来ない事態に陥った場合は任期終了前に契約を解除することもありえます。新人で優秀な者が現れれば抜擢します。最近はフリーランスのプロデューサーも実力をつけてきていますよ。

──上海話劇芸術センターの組織はどのようになっているのでしょうか。
上海話劇芸術センターは総勢270名の大劇団です。そのうち経営管理に携わっている劇団員は、長である私から中間クラスの幹部まで約20名います。そこには政府系芸術団体に必ず配属される共産党幹部や労働組合幹部も含まれます。私を補佐する役割として、芸術面では芸術監督、経営管理面ではゼネラルマネージャー代理がいて、それぞれ異なる分野を統括しています。それから、俳優が150名、舞台美術が50名、そして劇場清掃、飲食コーナーの運営及び施設修繕管理等に携わるスタッフ約50名が所属しています。大所帯ですから採算を合わせるのは容易ではありません。幹部はそれぞれ複数の役職を兼任しています。例えば喩栄軍(ユィ・ロンジュン / 英語名Nick Yu)。彼はプログラム編成担当のディレクターですが、労働組合の委員長も務めています。更にはご存知の通り、プライベートの時間を使って執筆し、劇作家としても活躍しています。市場経済と向き合っている現在、こうした方法を採らずには大所帯の劇団を経営することはできません。150名もいる俳優は、上海話劇芸術センターと所属契約を結んでいますが、役がない時の給料はありません。
 
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