The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
As it prepares to reopen with a newly renovated building, Berlin's House of World Cultures is broadening its vision and role
全面改修リニューアルと20周年を目前に控えたベルリン・世界文化の家の新基軸
──HKWの自主プログラムはどういう方針で決めていますか。2006年には「ブラジル」と「中国」がテーマ国になっていますが、こうしたテーマ国はどのように選定されているのでしょうか。
 通常、世界各国から異分野の専門家のグループ8〜10人程度を招いて企画委員会を組織し、ワークショップを行いながらテーマを発展させていきます。展覧会としてプレゼンテーションするだけでなく、本来的な「知的財産」をプロデュースすることが重要だと考えています。それは、ワークショップやリサーチなどのプロセスを通してのみ成し得るものだと思います。
 例えば、中国をテーマにした時には、専門家らとともに「カルチャー・メモリー」をコンセプトに決めました。このテーマは現在ドイツで活発に議論されていることの一つで、いろいろな側面が想起されますが、例えば、文化大革命の記憶とも強く結びついていると言えます。展示では、文化大革命後の80年代のドキュメンタリー写真や、その後発展した芸術写真などの写真芸術をプレゼンテーションしました。また、文化大革命時代は中国オペラの上演はすべてのオペラハウスで禁止されたことから、私たちはこのようなコンテクストを読み解き、6つのオペラを製作しました。ベルリンで公演した後、最終的には上海でも公演しました。
 これからは特定の国に重点をおいたプログラムを組むことはないと思いますが、このように、長期的に、専門家や他の機関と協働でプロジェクトを発展させていくことがとても重要だと考えています。

──舞台芸術関連の事業の一つに、2002年から開催されているフェスティバル「イントランジット」があります。その具体的な事業内容と背景を紹介してください。近年では共同制作に力を入れているようですね。
 イントランジット・フェスティバルの根底にあるアプローチとして、「発表(プレゼンテーション)」、「作品(プロダクション)」、「反響(リフレクション)」、「作業(ラボラトリー)」の4つの面があります。
 キュレーションということに鑑みると、作品はHKWが国際的なアーティストとの協働で生み出すものと言えます。つまり、作品はひとつのカルチャーから生み出されるのではなく、トランスカルチャーな関係によって生み出されるというのが「イントランジット」の基本的な考え方です。
 4番目にあげた「ラボラトリー」というのは、南アフリカ生まれでロンドン在住のサラット・マハラジというインド人哲学者が私たちとともに発展させた方法論で、知識(knowledge)というものが、読書や学問によって得られる「インテレクチュアルな知識」ということだけにとどまらず、「身体によって表現される」ものでもあるという理念に基づいています。ラボラトリーでは、このようなさまざまな「知識」を公開するための相互対話を目指しています。
 私たちは最近、ドイツ連邦文化財団(Kulturstiftung des Bundes)とともに「身体知(Wissen in Bewegung(knowledge in Motion)」をテーマにした会議を開催しましたが、この会議ではまさに、「知識」がインテレクチュアルな知識を意味するだけでなく、「身体で表現される知識」として体現されるという理念をもとに議論が交わされました。そこでは書物などの形でのアウトプットが求められているのではなく、新しいことが試される、ということに意味があります。

──具体的なアーティストとの恊働作業の予定はありますか?
 2008年の「イントランジット」では、NYで活躍しているダンス理論家アンドレ・レペキがキュレーションする予定です。いずれにしても、先程あげた4つの面、Presentation、Production、Reflection、Laboratoryの実践は、将来的にもこのフェスティバルの大きな核になると思います。

──HKWでの他のプログラムの概略について教えてください。また、今後、特筆すべき事業の予定はありますか。
 HKWは2007年7月まで改修中のため、現在、事業は行なっていません。建物は8月にオープンしたのち、2008年から本格的に大規模なプロジェクトに取り組む予定です。
 まず、新しいフェスティバルとしてエレクトロニック・ミュージックの「World Tronics」をスタートします。また、夏の音楽フェスティバル“Wassermusik“(Watermusic)などでは、HKWの建物などを活用したプロジェクト展開も考えたい。HKWの建物はシュプレー川が背後に流れる河畔に建っていますが、今、ベルリンでは、ウォーターフロント地区での開発が進められ、周辺には洒落たカフェや庭園、新しいアートスペース「ラディアル・システム(Radialsystem)」もオープンしました。こうした地域の特性や景観、建物などを活用したプロジェクトにしていきたいと考えています。
 特に今後10〜15年間は「水」が非常に重要なテーマになってきます。私たちはこのテーマに芸術というフィルターを通し、フェスティバルという形式をとって取り組んでいければと思っています。毎年、継続的に水をテーマにしたワークショップや国際会議を行い、そこにもアート的な要素を入れるとか‥‥。将来は水中でイベントを行ない、川に小島をつくり、水面に映画を映すこともできるかもしれません。水というテーマをエコロジープロジェクトとして認知させるのではなく、芸術的に昇華させることが大事だと考えています。
 このようなプログラムを企画する上で留意しなければならないのは、HKWがどのように社会と繋がっていきたいと考えているのか、観客は誰なのかということです。ベルリンという都市の特徴として、さまざまなコミュニティーによって構成されている点を上げることができますが、それは移民やその中の3割を占めるトルコ人の問題についてだけ言っているのではなく、ドイツの中にさまざまな社会環境(social milieu)が同時に存在していることを意味しています。ドイツ国内に約750万人いる移民は確かにひとつの重要な要素としてありますが、ベルリンには、世界遺産のシャルロッテンブルク宮殿のある歴史地区シャルロッテンブルクや、旧東ドイツの芸術家地区プレンツラウアーベルクなどといった全く異なるカルチャーシーンが存在します。HKWはこうしたさまざまなカルチャーシーンの交流拠点としての役割を果たさなくてはなりません。
 ベルリンという都市のもつ特性を活かし、ドイツの内と外が出会う、つまりナショナルとインターナショナルが交差するような場所となることが私たちHKWには求められていると思います。また同時に、芸術と学問の出会いの場となり、相乗効果を生み出すことを求められています。私たちは常に、こういった境界に身をおいて仕事をしなければなりません。
 
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