The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Speaking with the Director of Programming for the grand-scale arts and culture centre Esplanade, the symbol of Singapore's
創造都市を標榜するシンガポールの巨大文化拠点「エスプラネード」のプログラム編成部長に聞く
フェスティバル
シンガポールの主要民族の文化をテーマとするカルチャー・フェスティバル(本文中で触れられている「華芸」中華文化フェスティバルの他、「カラア・ウツァヴァム」インド文化フェスティバル、「ペスタ・ラヤ」マレー文化フェスティバルなどが実施されている)、子供、高齢者、家族連れなど、特定の観客層をターゲットとしたコミュニティ・フェスティバル(子供の日を祝う「オクト・バースト」、高齢者を狙った「デート・ウィズ・フレンズ」など)、ジャンル別に実施されるジャンル・フェスティバル(ジャズ/ワールドミュージックの「モザイク・ミュージックフェスティバル」、オルタナティブ・ミュージックの「ベイビート」、古典からコンテンポラリーまで幅広いダンスを紹介する「da:nsフェスティバル」など)の3分野で実施されている。

シリーズ
クラシック音楽の「クラシックス」や、パイプオルガン音楽の「ペダル&パイプ」などのように、国際的なアーティストをフィーチャーするものと、実験演劇の「スタジオ・シーズン」や中国音楽の「チャイニーズ・チャンバーミュージック」のように、地元アーティストの能力開発支援を目的とするものとが実施されている。

フリー/アクセス・プログラム
エスプラネード内の各施設で実施されているが、なかでも劇場入り口のコンコース・エリアとウォーターフロントに位置する屋外劇場が主な会場となっており、それぞれ「アット・ザ・コンコース」、「オン・ザ・ウォーターフロント」のタイトルでシリーズ化されている。この他、本文中で触れられている「コーヒーモーニング&アフタヌーンティー」のように、特定の観客層をターゲットとしたシリーズも実施されている。(2005年度)

貸館プログラム
2005年度の貸館公演は489回に及び、エスプラネードに595万シンガポール・ドルの使用料収入をもたらしている。ジャンル別ではミュージカルが大きな部分を占め、ブロードウェイ・ミュージカルの「サウンド・オブ・ミュージック」の他、シンガポールで制作された作品が複数上演された。その他のジャンルでは、オペラ、ダンス、音楽の大型公演の他、シンガポール・アーツフェスティバルの9作品がエスプラネードで上演された。
──「フェスティバル」と「シリーズ」について聞かせてください。また、そうしたプログラムを編成する際に留意していることはありますか。
我々のフェスティバルは、いくつかのパートからなっており、それが組み合わさって構成されています。メインとなるプログラムについては、言うまでもないことですが、最高のクオリティの作品が必要です。それがどんなジャンルのフェスティバルであろうとも、私たちは国内外を問わず、上演可能な最高の作品を探しています。
しかしながら、我々は同時に、通常、劇場に足を運ばない人々についても考慮しなくてはなりません。アートは教養があり、洗練された人たち向けのものだと見なされる傾向にありますが、これまでも強調してきたように、私たちは「全ての人にアートを」という考え方を推進しています。そのため、あまり劇場に足を運ばない人たちを対象にした無料プログラムを用意するようにしています。また、フェスティバルの期間中は、できるだけ多くの地域住民が参加できるようにしたいと考えています。そのためにはワークショップや交流プログラムなどからなる教育部門が主要な役割を果たします。これら全ての要素が集まり、祝祭の雰囲気が作り出されるわけです。
フェスティバルの開催時期も重要です。例えば、「中華文化フェスティバル」は、中国の旧正月にあわせて実施しています。人々は文化遺産を──過去からのだけではなく、未来へつながる遺産を──祝福するために集まります。私たちがフェスティバルにおいて伝統芸能からコンテンポラリーまで様々な作品を提供するのもまさにこの理由によります。例えば、昨年の中華文化フェスティバルでは、台湾のクラウドゲート・ダンスシアターによるコンテンポラリーダンス、香港のズニ・アイコサヒドロンによる京劇を題材としたマルチメディア・パフォーマンス、シンガポールのトイファクトリー・シアターアンサンブルによる現代演劇、そして子ども向けには台湾の台原偶戲團による伝統的な人形劇といったプログラムを用意しました。
こうした広範なプログラムを用意するのは、先に述べたような「アートは一部の人々のものである」という思い込みを否定するためでもあります。「高級」な芸術と「一般」の芸術というような区分けを壊してしまいたいと思っているのです。私たちにとっての「アート」とは、常に「あらゆる人に向けたアート」をということのみを意味しているのです。

──年間を通して「フリー/アクセス・プログラム」についてはいかがですか。
「フリー/アクセス・プログラム」には2つの目的があります。1つはアートを日常的に楽しむ観客の育成、もう1つはアーティストの育成、すなわち新進気鋭のアーティストを支援し、彼らの能力を伸ばすということです。
まず、観客の育成については、誰もがエスプラネードを訪れることができるようにする、ということを重視しています。チケットを購入する余裕がない人たちにも作品を楽しむ機会を持っていただきたいと、年間を通じて毎週金曜日に屋外劇場で無料公演を実施しています。また、日曜日の午後にメイン・コンサートホールで月1回の無料コンサートやランチタイム・コンサートを実施しています。
この他にも、主に高齢者を対象にしたシリーズ「コーヒーモーニング&アフタヌーンティー」を月曜日に実施しています。高齢者は、ともすれば終日、家の中に閉じこもりがちです。このコンサートは、彼らが外出し、人に会い、友達をつくり、そして1950年代〜60年代の歌を一緒に歌ったりする、よい機会となっています。
アーティストの育成については、若手のアーティストにエスプラネードでの有料公演の機会を提供する「レイトナイト@エスプラネード」をコンコース・エリアで月末に実施しています。このプログラムでは、同時に、若い観客の掘り起こしも狙っています。エスプラネードでは年間約1,200の無料公演が行われていますが、そのほとんどは地元アーティストによるものです。また、地下鉄とエスプラネードを結ぶ地下道にはビジュアルアートの展示スペースが設けられており、シンガポールの若手現代美術家に開放されています。これらは全て、地元アーティストを育成しようという取り組みの一環です。

──主催以外の公演では、例えば、今年初めに上演された『オペラ座の怪人』の2カ月公演などの商業的なプログラムも行われています。
アーツセンターとして、全てのプログラムを自分たちで組んでしまおうとするのは有益ではありません。もちろん、ビジョンを実現するためには、他人に任せることはできない部分があるのは事実です。しかし、同時に、ミュージカルのように、きわめて大規模で時としてリスクの大きな作品の場合は、貸館として活用してもらうようにしています。エスプラネードが有力な劇場であると認知されるにつれ、こうした可能性も大きく開けつつあると感じています。
ミュージカル以外の分野においても、シンガポールでは多くのプレゼンターが育ちつつあります。健全なマーケットの発展のためにも、様々な主体によってそれぞれ異なる種類の公演が提供されるということは非常に重要です。きわめて商業的な公演を行う団体もありますが、公演が良質のものであり、きちんとオーガナイズされているのであれば、これも我々の「全ての人々のためのアーツセンター」という目的に沿うものであると考えています。
こうした外部のプレゼンターと共同で制作を行い、彼らの能力向上を支援するというケースもあります。例えば、シンガポールの劇団、ネセサリー・ステージが主催する「M1 シンガポール・フリンジフェスティバル」においては、彼らとの良好なチームワークのもとに共同作業を行うことができました。このように、外部の団体を支援することによって、業界全体の発展を助けたいと考えています。また、他団体と一緒に活動することにより、我々のプログラム編成に別の視点を導入することができるというメリットも大きいですね。
 
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