The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
New developments in the Japan Society, a promoter of exchange between Japan and the U.S. for 100 years
日米交流に尽力して100年 ニューヨーク、ジャパンソサエティの新展開
道具がえし
ジャパン・ソサエティー委嘱作品
バジル・ツイスト作『道具がえし』
(2007年9月)
© Richard Termine, courtesy of Tandem Otter Productions
http://www.jcdn.org/dogugaeshi/
──米国内のツアーについてお伺いしたいのですが、どのような作品を紹介していますか?
ツアーについては、それだけの価値のある作品かどうか、米国での助成金が受けられるかどうか、アーティストがツアーを希望しているかどうか、米国のプレゼンターたちが魅力的と感じる内容かどうか、予算・スケジュールの条件があうか、などいろいろな要素を勘案してその都度企画しています。これまで、燐光群、青年団、クナウカ、SPAC、白石加代子出演の『百物語』、川村毅演出の『KOMACHI』、指輪ホテルなどを紹介していて、来年はチェルフィッチュのツアーを予定しています。コンテンポラリーダンスは言語がない分ツアーをしやすいので、米国の一般のプレゼンターでもプロデュースが可能ですが、現代演劇は字幕の内容や見せ方をどうするかなど、日本のことをかなり理解していないと扱えません。ですから、ジャパン・ソサエティーとしては他がやりにくい現代演劇を紹介することに特に力を入れています。

──日本の現代演劇の受け入れ先としてはどのようなところがありますか。
実際に受け入れてもらったかどうかは別にして、ここには必ず声をかけるというところはあります。例えば、ミネアポリスのウォーカー・アートセンター、オハイオのウェクスナー・センター、ニュー・ハンプシャーのホプキンス・センター、サンフランシスコのイエバ・ブエナ・アートセンター、シアトルのオン・ザ・ボード、シカゴのコンテンポラリー・アートミュージアム、バーモントのフリン・シアター、マイアミのマイアミライツ、それからピッツバーグ大学やマサチューセッツ大学などにも声をかけます。これまでの受け入れ先の記録がありますので、20カ所ぐらいはすぐにリストアップできます。

──そうしたところは日本の現代演劇のどのようなところに興味をもっているのでしょう。
古典芸能を受け入れるところは能でも歌舞伎でも落語でも、「古典芸能」というジャンル自体に興味をもっているのですが、現代演劇の受け入れ先は個々の作品の内容に興味をもっています。ツアーする作品がアメリカでは作られない類のものだということを必ず期待している。それは、正座しておじぎをするなどの日本の生活習慣が描かれているといった具体的なことではありません。私の国籍は日本ですが、アメリカ人のプレゼンターがこれはアメリカでは作られない、日本っぽいものだと感じる作品がどういうものか肌で判ります。そういう意味で私もアメリカ人のプレゼンターなのだと思います。例えば、独特のテンポ、男女の距離感、社会性のない若者のあり様……。日本っぽいものと同時に、あんなに離れたところにある違う国なのに、アメリカと同じようなことが起こっている、という同時代的な表現にも彼らは興味をもちます。

──アメリカ人が日本っぽいものだと思うものについて、もう少し具体的に紹介してください。
例えば、舞台セットが異常に細かく考えてつくってあるといったことですね。

──それは、フェティッシュということですか?
そうですね。ダムタイプの美術のように、あれだけ凝って隙の無いつくりのものはアメリカにはありません。それから燐光群の『屋根裏』でテーマになっていた“ひきこもり”と呼ばれる社会性のない若者については同時代的なテーマとして理解できたと思いますし、加えて、あの狭い箱の中でパフォーマンスをする表現の仕方が日本っぽいと感じていたでしょうね。室伏鴻さんのようにあれだけストイックに肉体を出すことも、日本っぽい、舞踏っぽいと感じると思います。

──室伏さんの舞踏がストイックに見えるのですか? 日本人の感じ方と違いますね。
そう見えます。それから、指輪ホテルの羊屋白玉は、「女の子」をテーマにしていますが、女が成長した後でまだ「女の子」でいる状態なんてアメリカでは存在しませんから、あれは変な生き物、日本にいる特殊な生き物として見ていると思います。「ガール(女の子)」はアメリカでは限られた年齢を指す言葉ですが、日本の場合、年齢ではない概念として存在しています。アメリカ人の女像の中には概念としては存在していない、変な女像があるように見えているのではないでしょうか。しかし、そういったことは劇場まで観に来てくれなければ本来わからないことです。なので、見に来させるために、それを言葉でどう伝えるか、彼らがやっていることが空回りしないように伝えるためのマーケティングやプロモーション戦略も、我々がしなければならない非常に大切なことです。

──新作の委嘱というのはどのようなプログラムですか。
ドリス・デューク・チャリタブル財団という米国の大手の助成財団から与えられたマッチンググラントで調達した資金で、近年、パフォーミングアーツ部だけが使える約1億4000万円(1.25ミリオンドル)の基金が誕生しました。その運用益の内、4〜5万ドルを新作委嘱の予算に充てていて、日本の伝統的な技術を使った作品や、日本人とのコラボレーションなど、何らかのかたちで日本に関わる新作を非日本人に委嘱しています。この委嘱プログラムでプロデュースした二つ目の作品がバジル・ツイストの『道具がえし』で、初演は2004年。この9月にジャパン・ソサエティーの劇場で再演をし、続けてこの秋に始まる日本ツアーも我々でプロデュースしました。
この新作委嘱のプロジェクトの特徴は、リサーチしながら作品をつくるタイプの作家に委嘱をし、その作品づくりに私やジャパン・ソサエティーがものすごくコミットし、お世話をするということです。例えば、阿波地方に残っている人形芝居を調べてつくった『道具返し』の場合は、バジルが2回日本に取材旅行に行っています。人形芝居に詳しい通訳を付けるところからはじまって、1回目の取材旅行から戻ったバジルが三味線奏者とコラボレーションしたいと言ったので、古典の義太夫三味線をきっちり修めつつコンテンポラリーな作品にも意欲的に参加している、そういう演奏家を紹介しました。また、舞台美術に日本の伝統的な図柄を使いたいという要望もあったためそういう図柄が調べられるインターンも付けました。新作委嘱の第三弾は、ビックダンスシアターという沖縄舞踊を取り入れているダンサーと演出家のカンパニーに井伏鱒二の短編をモチーフにした作品を委嘱しました。初演は今年の2月に私の劇場で行われ、その後米国を数カ所ツアーした後、9月には再びニューヨークの別の劇場で再演されています。こちらも井伏鱒二の甥に会えるように手配するところから始まって、沖縄舞踊を学ぶためのレジデンスの手配なども行いました。
つまり、ただ、新作を委嘱するだけではなく、彼らが作品をつくる過程で日本に対してできる限り深い理解に達し、その興味の深さに見合う知識の吸収ができるようなサポートをするわけです。つまり作品をつくるということを、日本文化に深い興味を持ってもらうための種まきと考えていて、長い目でみれば人数は少なくてもものすごく影響力があるのではないかと思っています。日米間の移動さえままならなかった時代にはこうしたことは不可能でしたが、今はアーティストのハートさえついてくればいくらでも丁寧に耕していける。みんなが簡単に日本の情報にアクセスできる時代だからこそ、こうしたコミットがいかに日本のことを深く理解してもらえるかの勝負どころになります。誰もができる仕事ではありませんが、こういう日本の知ってもらい方のストラテジーをいかに考え、実践するかが、ジャパン・ソサエティーと私に託されていることだと思います。
 
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