The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Looking into the heart of the Asian Cultural Council, an organization that has helped support over 5,000 artists
5000人以上のアーティスト等を支援 アジアン・カルチュラル・カウンシルの精神
──501(c)3というステイタスに照らせば、ACCは、近い将来や遠い将来の方向性や目標を定めるためにも、何らかの方法で「フェローの為したこと」を評価・判断しないとならないですよね。その際の評価の基準は何なのでしょう? 今までのお話から、明らかに彼らの報告書でないことは確かですが。
 我々の組織は個人に対して投資をする小さな団体です。ACCとしてもそして私個人としても、一般的には、芸術や文化への助成に対して「量」を評価軸にするのは難しいのではないかと思っています。ACCは個人に対して投資をしているのですから、この根幹にのっとれば、我々の仕事とは「個人とその個人の仕事を知る」いうことに尽きます。我々は助成の期間が終わってからも彼らと長くつきあって、我々のネットワークや助言を以て彼らのその後のキャリアを支えてゆきますし、必要ならば何らかの追加の支援をすることもあります。
 となると、何を評価の基準にしたら良いのか? それは、5年、10年、あるいは15年かけて、その人がどのような道を歩むのかを見続けるということです。我々のスタッフがアジアへ出張をする時、どこへ行こうとも、我々はACCのフェローたちが大きな文化団体を率いる立場になっていたり、彼らが重要な発言をしていたりするのを目にします。それこそが「我々の行っていることは成功しているか否か」を評価する方法です。

──つまり、非常に長い時間をかけた評価、ということですね。
 その通り。ですから、「量」を評価軸にしようとする寄付者に対して成果を示すことは難しいんです。

──ACCの最新の動きについてお話いただけますか。
 この7月1日付けを持って、私はACCのフル・タイムのポジションから退きました。1976年から32年間勤めて、1991年からはディレクターを務めていました。今後はパートタイムで、私に貢献できる重要な部分のみ集中して働いてゆきます。この変化はいわば個人的な理由で、今後は私の別の興味の部分を追うことで人生のバランスを取って行こうというものです。というわけで、私の新しい肩書きは「上級顧問」。新しくエグゼクティブ・ディレクターに就任するのは、つい先頃までアルトリア・グループ(元フィリップモリス)の企業貢献部バイスプレジデントを務めていたジェニファー・グッデールです。篤志事業のすばらしいプロで、アルトリア社の企業の芸術支援を米国最大の規模にまで育てた実績を持っています。彼女はこの国の芸術のことや芸術団体のことを熟知しており、卓越したマネージャーで、そして優れた資金調達能力をもったすばらしいチーム・プレイヤーです。彼女には豊かな国際経験があります。アジア専門家ではありませんが、多くのアジア通のプロに囲まれて仕事をしていきます。

──ジェニファーさんが背負ってゆく新規の使命とか課題といったものはあるのでしょうか?
 ありません。前にも言及しましたように、私たちの強みは「継続」です。継続こそが、このプログラムを成功に導いているものだと私は考えていますし、ACCの理事会も同じ見解を持っていますから。今日のACCが直面している新しい挑戦は、むしろ経済的な問題です。寄付をもっと集めなければなりませんし、その必要性は過去に例をみないほど高くなっています。アメリカ国内での資金調達は、我々にとってはある種新しい行為で、ニューヨークで資金調達のためのガラを始めたのもそのためです。

──ジェニファーさんは優れたファンドレイザーだとおっしゃいましたが、そうすると他のアジアに関係する米国の非営利団体──例えばジャパン・ソサエティー、アジア・ソサエティー、チャイナ・インスティテュート、あるいはグッゲンハイム美術館の現代アジア美術プロジェクなど──は、大丈夫でしょうか? つまり、アジアのことに寄付をしてくれそうな資金源をACCがすべてさらってしまうかも…という心配はありませんか?
 もちろんそれはないでしょう。我々はこの10年間に米国内での資金調達活動を積極的に行ってきましたが、ACCを支援しようと興味を抱く寄付者は非常に限られています。何しろACCは寄付者に謝辞を表明する機会があまりありませんから。例えば、ジャパン・ソサエティーやグッゲンハイム美術館などは、一般の目に触れるパンフレットやカタログに寄付者の名前を掲載できますし、プログラムや公演にその寄付者の名前を冠したりもできる、あるいはその美術館の一部屋に寄付者の名前を付けることもできますが、こういった一切の返礼を、ACCはできません。年次報告書やウェブサイト以外には、一般の目に寄付者の名前を露出させる手段がほとんどないのですから。
 別の言い方をすれば、ACCは一般向けのプログラムを持たず、ただ助成金を出すだけの財団なために、「一般が認知できる人格」というものを持ってないということです。ですから、我々が誰で何をしているのかを常に人々に説明しなければなりません。ところが、「私たちはアジアン・カルチュラル・カウンシルという名の助成財団で、ジョン・D・ロックフェラー三世が設立しました」と説明すれば、「あぁ、アジア・ソサエティーですね」と言われ、「いや、そうじゃなくって。アジア・ソサティーは一般向けのプログラムを行う活動団体ですが、我々は財団ですよ」と言えば、今度は、「あぁ、ロックフェラー財団ですね」と言われ、「いや、そうじゃなくって…」ということになるのです。我々が誰なのかをはっきりとした絵を描くのはとても難しいのです。

──その悩みはわかる気がします。けれども、私を含めてACCのことを知っている人間にとっては、ACCを知らない人が大勢いるなどということはまるで想像もできません。私たちやアーティストにとっては、ACCはなによりもまず真っ先に知るべき財団だというぐらい大きな存在です。
 ありがとうございます。それも確かでしょうけれど、アジアの文化に関係している人々以外には、ほぼ無名です。それは資金調達の困難さを意味するわけです。つまり我々への寄付者は、そういった我々のプログラムの意義を真に理解するところまでつきあってくれた人たちです。

──ジェニファーさんの仕事は、現在アジアにいる寄付者・支援者との関係を維持するということも含んでいるのですか?
 はい。重要な業務ですから、私も引き続き携わっていきます。

──ラルフさんはしばしば、「アメリカ人が日本へ行くための助成金の獲得は一番競争率が高い」とおっしゃっていましたね。
 アジアに興味を持っているアメリカ人の《ものを創るアーティスト》に関して言えば、現在最も人気の高いのは中国で、従って助成金獲得の競争率の高いのも今は中国です。もちろん日本へ行きたいと思う人々まだまだ大勢いますが、90年代の時ほどの競争率ではありません。この点についても再び《資金》が課題です。非常に多くのアメリカ人が申請書を提出してくるのに対して、我々が供給できるのは小さな金額のみなのですから…。

──研究者も含めて、現在、何人の日本からのフェローがニューヨークに滞在していますか?
 現在はそれほど多くないですね。美術作家の橋本聡、コレオグラファーの常樂泰、東京都写真美術館のキュレーターの小林美香です。小林さんは、インターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィー(ICP)で開催中の日本に関する写真展『Heavy Light: 近年の日本の写真とビデオ』のために、ICPでインターンとして働いています。それから、ハープ奏者で《箜篌》の奏者でもある菅原朋子。箜篌は、西アジアを起源にする古代琴のひとつです。菅原さんはこの楽器を弾くと共に、過去十年、国立劇場主催の正倉院楽器復元演奏をはじめこの楽器に係る様々なプロジェクトに参加してきました。ここニューヨークでは、中央アジアの琴の研究者であるボー・ローワーグレン氏の下で研究に従事しています。

──最後の質問になりますが、ニューヨークに滞在する日本のアーティストにとって、最も価値のある経験は何だとお考えですか?
 おそらく「アーティスティック・コミュニティー」というものを感知することでしょう。演奏家、作曲家、ダンサー、画家──ニューヨークでは彼らは共に語り、共に支えあい、互いの仕事を見せ、観に行きます。こういうコミュニケーションが「アーティスティック・コミュニティー」という空気を作りあげますが、これは日本で体感するのはなかなか難しいものです。

──まったく同感です。ACCの助成金で日本からニューヨークに来たアーティストの多くが、「アーティスティック・コミュニティーというものを体感したのは目から鱗だった」と異口同音に語っています。貴重なお話とお時間をどうもありがとうございました。
 
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