The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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マリー・アン・ドゥブリーグ
マリー・アン・ドゥブリーグ氏
(Mary-Ann DeVlieg)
IETM事務局長


Informal European Theatre Meetings(IETM)
http://www.ietm.org/
Informal European Theatre Meetings(IETM)
次回のIETM総会日程
IETM 秋の総会
開催日程:2008年11月6日〜9日
開催都市:スイス・チューリッヒ

2008年秋のIETM総会は、スイスのチューリッヒで11月6日〜9日の日程で開催される。スイスでのIETM総会は1992年にジュネーブで開催して以来、16年ぶり。今回は、EUが提唱する「European Year of Intercultural Dialogue(EYID)2008:ヨーロッパ異文化間対話の年」(http://www.interculturaldialogue2008.eu/)のパートナープログラムとして開催される。この総会のテーマは「Misunderstanding 誤解」。IETM総会期間中は、チューリッヒ市内の10の劇場で、スイスの最新舞台芸術シーンを見渡すことのできる演劇、ダンス等さまざまな公演が行われる。400〜600人のメンバーが参加する予定。

IETMチューリッヒ総会のプログラムなどは、http://www.ietmzurich.ch/に掲載されている。参加登録はIETMホームページ内の登録ページ(http://register.ietm.org)より可能。
IETM 秋の総会
Arts Organization of the Month
Presenter Interview
2008.9.3
The IETM network, contributing to the promotion of collaborative commissioned works and tours in Europe 
ヨーロッパにおける共同委嘱やツアーの進展に寄与 IETMのネットワーク力 
舞台芸術プロデューサーたちの国際的なネットワークの構築を目的に、1981年にベルギーのブリュッセルを拠点に設立されたIETM(International Network for Contemporary Performing Arts)。現在では、世界45カ国、450以上の舞台芸術団体等に所属するプロフェッショナルなプロデューサー、ディレクター、アートマネージャー、プレゼンターたちが会員として名前を連ね、数百人の関係者が集まる年2回の本会議やサテライト・ミーティングを世界各国で開催。そのネットワークによりヨーロッパにおける作品の共同委嘱やツアーの進展に寄与している。IETMの事務局長であるマリー・アン・ドゥヴリーグ女史に活動について聞いた。
(聞き手:ジャパン・ソサエティー芸術監督 塩谷陽子


──IETMは舞台芸術プロデューサーたちの国際的なネットワークづくりを目的としていますが、詳細を説明していただけますか?
 ETMは、「Informal European Theatre Meeting」という名前で1981年にイタリアでスタートしました。ある種、欧州最初の文化ネットワークといえるものでした。イタリアのポルヴォリジ・フェスティバルにフランス、クロアチア、オランダ、ベルギー、イタリアから集まった6名の舞台芸術の関係者が、「舞台公演を観て、それぞれがどんなアーティストの公演を扱っているかについて語り合えるなんていいよね」と話し合ったのがきっかけでした。ポルヴォリジ・フェスティバルは今も続いていますが、当時から小規模ながら世界各国のコンテンポラリー作品を扱うフェスティバルの一つでした。彼らの発想は、若手のヨーロッパのアーティストらの作品を共同でプロデュースし、それをヨーロッパのさまざまな国で上演して広い観客に見せようではないかというものでした。
 同じ年のうちに、6人はヨーロッパ各地から100人あまりの関係者とともにパリで会合を開きました。1975年に文化省のイニシアチブで創設された「フランス芸術振興会」の創始者兼ディレクターだったフィリップ・ティリーとIETM発起人の一人の招きによるものでした。IETMの最初の8年間はこうした口コミによって機能しており、枠組みもなければ組織も会則も無い、ボランティア的な運営でした。しかし、この8年の間に活動の基礎が固められたのです。つまり、それは今も私たちがIETMで行っている「同じタイプの芸術とそれを取り巻く問題に興味を持っている人々と出会う」という活動です。
 現在、45カ国、450団体のメンバーがおり、私たちの事業も多岐にわたっています。しかし、主たる事業は現在も人々を集め、アーティストやテーマについて共通した興味を持つ人々が出会い、協働し、共同プロデュースをし、ツアーをし、情報交換し合える環境を提供することです。IETMのメンバーは、ホール・劇場の担当者、ダンス・カンパニーや劇団の人、フェスティバルの担当者、プログラミングの担当者、プレゼンター、あるいは舞台芸術関係を担当する市や国レベルの行政関係者です。彼らのこうした出会いはごく自然に起こります。

──IETMができる以前は、ツアーをオーガナイズするとか共同委嘱とかのシステムはヨーロッパにはなかったのですか?
 もちろんツアーは行われていましたが、国内巡回がほとんどでした。しかも、どこの国でも行われていたわけではなく、また、ドイツなどでは今でも「国」というよりは州や郡の中でのツアーに限られていました。近頃は少し変化してきていますが。それから共同委嘱というのももちろん存在していましたが、ほとんどはオペラのようなスケールの大きなもので、小〜中規模のものや実験的なプロダクションではなかった。ヨーロッパにおいては、そこは多分にIETMによる貢献が大きいと思います。

──例えば私がIETMのメンバーで新作の企画をもっていたとして、IETMは具体的に共同委嘱先やツアー先を紹介してくれるということですか?
 そういう手助けをする場合もありますが、私たちのネットワーク内には2000人ものメンバーが活動していますから、一人一人の動向を把握することはできません。そこで、そういう人たちのために「ワーキング・セッション」というネットワーク・ミーティングの開催という環境整備をするのです。また、既存の作品を売り込むのではなく、「現在どのようなプロジェクトを手掛けているか」や、「どのようなプロジェクトを始めようと計画しているか」を知らせるプレゼンテーション・セッションも行います。できるだけ格式張らずにやることで、協働できるパートナーと巡り会えるよう工夫しています。

──それらのセッションは、IETMの総会の一部として行われるのですか?
 私たちが「総会」と呼んでいる大きな正式な会合は年2回開催されています。450〜600人ほどが参加し、15〜40の公演と、45のワーキング・セッションやトレーニング・セッションが4日間にわたって開催されます。そこで制作過程にあるプロダクションやアイデアを紹介するセッションもあります。また「サテライト・ミーティング」という会合を、年に2〜6回ほど、それぞれ個別のテーマに沿って開催しています。この会合では、ワーキング・セッションに加えて、各種のワークショップや舞台公演が行われます。

──人々がどのようにして“出会う”ことができるのか、もう少し詳しく説明していただけますか?
 わざと少し皮肉って、「酒場」構造を目指すと言っているのですが(笑)。つまり、酒場やバーでは、出会いがほしいと思えば簡単に誰かに出会えるでしょう? でも、中には内気な人がいて「壁の花」になったりする。そのために、テーマ別にワーキング・セッションを設けて、そのテーマに共通の興味を持って参加した人たちの間でディスカッションを起こします。それによって出席者は他の人の興味や意見を知ることができます。
 それと、みんな、総会のときに面談できるようそれぞれが自主的に連絡を取り合っています。もしもヨーロッパで共同委嘱やツアーを仕込みたいと思えば、何カ所もの都市を飛行機で飛び回って各地でパートナー候補とミーティングをしなければなりませんが、IETMの会合に出席すれば一度に多くのパートナーと会えるわけです。

──米国でも、毎年ニューヨークで行われるAPAP(Association for Performing Arts Presenters)の年次総会の時にプレゼンターたちは同じことをしていますので、IETMのそういう役割はよくわかります。でも、APAPの場合、出席者の数も上演される公演の数も膨大になりすぎて、翻弄されているというのが現状です。自分の抱える複数のプロジェクトについてのミーティングをしようとアポ取りをすると当時に、他の多くの人からも、彼らがそれぞれ抱える将来的なプロジェクトについてのミーティングのリクエストを受けるわけです。その結果、気違いじみた忙しさに見舞われる。「出会いの場・機会」も規模が大きくなりすぎると、逆に役割を果たせなくなりますが、IETMではこういう問題は生じていませんか?
 それはあります。ただ、IETMはAPAPの4分の1の規模ですし、メンバー募集も口コミベースで、パブリシティーもあまりしません。とは言うものの、私の在任している15年の間にIETMの規模が拡大しているのは事実です。ですので、コミュニケーションの質を保つこと、設立当初からのネットワークの特徴である寛容さや結束の意識を失わないことを心がけています。また、大きくなると共に、IETMのメンバーたちは、「IETMは会議」であり「そこへ行けば何かを与えてくれるだろう」と考えるようになってきました。しかし、そういう期待でIETMに出席した人は、失望すると思います。なにしろ、IETMは人々が「自分たち自身で」何かを作り上げる場ですから。そこが会議とネットワークとの違いです。私たちはメンバー各々にこの機会を有効利用し、すべての人への健全な環境を築こうとする積極性と行動力を求めます。そういう理由から、IETMは「サービス・オーガニゼーション」ではありますが、自分たちではそうは名乗らないことにしています。今後数年かけて、私たちはIETMをメンバーたちが行動的になれる「メンバー・オーガニゼーション」にし、メンバーのイニシアチブにより導かれる組織にしていくつもりです。
 
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