The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
The IETM network, contributing to the promotion of collaborative commissioned works and tours in Europe
ヨーロッパにおける共同委嘱やツアーの進展に寄与 IETMのネットワーク力
──共同委嘱について伺いたいのですが、プレゼンターやプロデューサーたちが行動的になって彼らが密接なネットワークで結ばれた時に、ある種の負の効果が発生する…といった問題を感じることはありませんか? 例えば、国際的なプレゼンターがたまたま発見して気に入ったアーティストが、彼が仲間に呼びかけることにより一瞬にして「誰もが欲しがるアーティスト」というステータスに急上昇する現象が起きます。こうした問題をどう考えていますか?
 そのことは私たちのネットワークでも何度も議論されています。要因はいくつかあって、まずは「クリネックス現象」というもの。誰が最初にこの言葉を使い始めたのか忘れましたが、つまり、誰もが「次の新しいもの」を必死になって探していて、そしていざ発見すると、それをヒョイとつまみあげ、鼻を拭いたらポイと捨てる。ちょうどティッシュ・ペーパーを次々に箱からつまんで捨てるのと同じような行為です。これは若手や未熟なアーティストにとって非常なプレッシャーになってしまいます。
 とはいえ、私たちが「責任あるプロデュース」と呼んでいるものも存在するのです。共同委嘱者たちは、ただ単に共同でお金をつぎこんで新しい舞台作品を安価で手に入れるだけなのか、それとも彼らはアーティストと膝をつきあわせて話し合いながら彼らの作品づくりを支え、導いていくのか。どちらのタイプのプロデューサーも存在すると思いますし、ありがたいことは、良いプロデューサーは良いほうのやり方を実行しているということです。また、若いアーティストのほうが、「1年間休み、自分が以前に何をしていたかに立ち返りたい」」という場合もあるでしょうし、理解のある出資者がそれを支援することもあるでしょう。
 もう一つ負の現象として指摘されているのが、「マフィア現象」と呼ばれているものです。ある種のアーティストたちの作品はそこかしこで上演されているのに、美学を異にする人々の作品は全く受け入れられない---つまり、一定の美学が業界で一般化して固定してしまう現象です。また、「新植民地主義現象」というのもあります。プロデューサーが「自分の価値観に照らしてこの作品を眺め、そして判断を下したのだ」というもので、特にその作品に対する深い理解もなく、単に自分の国には見かけない(エキゾチックだ)からという理由だけで外国の作品を上演する。IETMはこのことに懸念を抱いていて、「プレゼンターたちがちゃんと作品を理解すればひいては観客も深いレベルで作品を理解できる」ということをプレゼンターたちに理解してもらえるようサポートしていきたいと思っています。
 しかし、プロデューサーやプログラムの企画者たちのすべてがこういった問題意識を共有しているわけではありません。だからこそIETMではこれらの問題を過去6年間にわたってセッションのテーマに取り上げてきました。でも、問題への認識があったからといって、それがそのまま行動につながるとは限りませんから、たえず問題を喚起し、経験を共有することが大切だと考えています。人々がこの問題について話し合い、細やかに意識を働かせることも重要です。乗り越え、議論していくことによってまた別の視点が生まれる。同時に、誰の声が人々の耳に届いていないか? どうすれば彼らの意見も人々の耳に届けられるか? ということにもIETMは非常に気を配っています。ネットワークが拡大するにつれて、往々にして口の減らないおしゃべり屋さんの声ばかりが聞かれるようになってしまいますからね。

──つまりIETMは「問題にはこう対処すべき」という指針を示すのではなく、「問題意識を喚起する」ことが役割であって、その解決方法や新しい指針についてはメンバーたちが自ら話し合って、彼ら自身が定めていくということですね。
 これまで、私たちは「IETMは人々に出会いの場を提供する」という受け身的な役割でしたが、2000年と2002年に改革を行い、(組織の使命を明確にする)ミッション・ステイトメントを書き直しました。今日の我々の仕事は、ただ場を提供するだけでなく、会合の核心であるディスカッションにより「メンバーを刺激し鼓舞する」ことだと考えています。つまり、IETMの使命は、「機会をメンバーに与え、かつ、刺激し、鼓舞する」ことなのです。
つい最近ITEMで行ったアンケートでは、会合で得るものといえば、インスピレーションであるという意見がすべてでした。私たちとしては、「知己を得ること」という回答になるだろうと思っていたのですが、そうではなくて、「他の人々が何をしているのか」「何が起こっているのか」「何か新しい傾向はあるのか」等々、4日間で耳にすることから得る「刺激」が一番の価値だというのです。そこで、新鮮な気持ちで地元に戻る。他の人がしていることを真似ようというのではなく、自分が受けた刺激を形にしようと思うわけです。

──個人的な興味からの質問ですが、プレゼンターたちは演劇というジャンルをどう扱っているのでしょう。ダンスは言語の壁がないので国際化しやすいですが、演劇はそうはいきません。とはいえヨーロッパには多言語とつきあってきた長い歴史がありますから、そのあたりはいかがでしょう?
 IETMの会合の中で何度も取り上げてきている問題です。ここ何年もの間、ヨーロッパのプレゼンターたちは非常に優れた字幕システムを作りあげてきました。公用語が3つあるベルギーでは、舞台に3言語の字幕を備えることもたびたびあります。
 また、演劇作品の翻訳のための資金調達についても、討議の俎上に載ります。マイナーな言語からマイナーな言語への翻訳とか、マイナーな言語をメジャーな言語に訳すとか、そういう特別な部分での助成はいくつか継続されています。ちなみに、ここで「メジャーな言語に訳す」と言う場合に英語は含まれません。英語はすでに覇権的ですから。IETMの中から独自の小さなネットワークが生まれることも多々あって、それを私たちはIETMの「触媒効果」と呼んでいますが、戯曲の翻訳支援に関しても二つ小さなネットワークが生まれているほどです。彼らはプロジェクトベースで活動をしています。このような側面においても、IETMは新しいネットワークやプロジェクトの「孵卵器」として機能しているんですね。

──最後に、ネットワークということを核とするIETMにとっては、「インターネットをどう活用するか」ということは現在も将来も常につきまとう課題ではないかと思います。どのように考えていらっしゃいますか。
 現在、来年の刷新のために助成金の申請を提出したところです。新しいウェブサイトはテキストよりも視覚的要素を増やし、動画クリップや音声を多用したいと思っています。長いテキストを読むよりも、1分かそこらのポッドキャスティングがあったほうが効果的でしょう。
 ウェブ上で多くの人々が出会える仕組みをつくりたいですね。個人的には、環境に配慮して、IETMのバーチャル会合ができるようになればと夢想しています。移動にはお金もかかりますから、誰もが利用できるとはかぎらない。しかし、同僚たちには「4日間、ずっとコンピューターと向かい合って過ごすなんて、退屈極まりないよ」と言われますが(笑)。
 ブログについては、最近、一時的な討論の場として「ラフト(いかだ)」という名前のウェブプラットフォームを立ち上げました(http://raft.idanca.net/)。ただ、IETMのメンバーたちは、こういうインターネットの使い方はあまりしない人たちなのは確かです。このプラットフォームも私たちはメンバー同士のコンタクトが目的ですが、それは自然発生的に行われています。私たちが強制することはありませんから。

──長い時間、どうもありがとうございました。将来のますますの発展を期待します。
 
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