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Presenter Interview
The Minneapolis-based Walker Art Center, an international hub for cutting-edge performing arts
国際的な前衛舞台芸術の拠点のひとつ 米ミネアポリスのウォーカー・アート・センター
ウォーカー・アート・センター
新たに組み立てられたウォーカー・アートギャラリーの玄関の壮大な階段の上のトーマス・バーロウ・ウォーカー(1927年)
ウォーカー・アート・センター
ミネアポリスの1710リンデール・アベニューにあるウォーカー・アートギャラリーの“荒れ地の多い”正面(1930年)
ウォーカー・アート・センター
東から見た1985年のバーンズビル(ガスリー・シアターはバーンズビルの右で屋根から広がっているバナーに接続されたビルにある)
Photo: Glenn Halvorson


*9 MassMoCA、ボストンのICA、Museum of Contemporary Arts in Chicago、オハイオ州コロンバス市のWexner Center、Portland Institute of Contemporary Arts、テキサス州ヒューストンのDiverse Worksなど。

*10 全米にチェーンをもつ日用雑貨品を中心としたスーパー。近年、小売業界の売り上げでは全米五指に入っている。
──60年代から舞台芸術の前衛的作品をレジデンシーやコッミッションを通してサポートしてきた組織は、米国内でウォーカーの他にありますか?
 現在、米国の舞台芸術界では、コミッションやレジデンシーに重きを置いていますが、ウォーカーはその流れをつくり、リーダーシップをとってきた先駆けだといえます。

──ウォーカーのビジョンが全米に影響を及ぼしたということですね?
 実際、ウォーカーにいたディレクターたちは、その後、業界において非常に大切な仕事をしてきました。例えば、ウェイル氏はNEAへ行きましたし、彼女の後のディレクター、ナイジェル・レディンもNEAでの仕事の後、さらにリンカーン・センター・フェスティバルやスポレト・フェスティバルで指揮を執っています。私の前のディレクター、ジョン・カラーキーはサンフランシスコのイェルバ・ブエナ・センターを経てサンフランシスコ・ファウンデーションで活躍し、ロバート・スターンズは、オハイオ州のワクスナー・センターの創設ディレクターとなり、その後アーツ・ミッドウェストでも重要な仕事をしています。また、ウォーカーより10年から15年ほど後に建てられた全米で約12ほどある総合コンテンポラリー・アートセンター(*9)にとってウォーカーは一つのモデルとなっているのも嬉しいことです。

──ツイン・シティーズには、ガスリー・シアター、チルドレンズ・シアター、ミネソタ・オペラ、ミネソタ・オーケストラ、プレイライツセンターなど、ウォーカーの他にも地元に貢献し、全米に影響を及ぼしている文化施設や団体がいくつもあります。何故この地に先見の明をもつ芸術文化のリーダーたちが集まり、活躍しているのでしょうか?
 理由はいくつかあるでしょう。一つには先見の明のあるフィランソロピストたちがいて、アートの組織に多額の寄付をし、方向性をアドバイスしたり、冒険することを奨励したりしてきたこと。地元のコミュニティーには、百年以上も前から個人や家族でミネアポリスが芸術において全米で抜きん出るためにと資金を提供してきた人々がいます。例えば、ターゲット(*10)の生みの親、ケン&ジュディー・デイトンは、前述のウォーカーの転換期、フリードマン氏の提唱した新しい方向性を支持し、何億ドルもの寄付をし、ツイン・シティーズの他の芸術組織にも寄付をしています。
 また、ここは助成財団にも恵まれています。マクナイト(McKnight)財団、ジェローム(Jerome)財団、ジェネラル・ミルズ(General Mills)やセント・ポール・カンパニー(St. Paul Company)の財団のほか、文化を支援する多くの財団があり、非営利組織がさまざまな試みにチャレンジし、共同で事業を行うことを支援してきました。そうした環境に、アーティストたちが集まってきました。文化は公共の資金によって支えられ、人々の生活に根ざしたものであるべきだとし、それを支える努力をするスカンジナビア系移民の伝統もあったでしょう。このようなさまざまな理由と土壌があり、相乗効果も生まれ、文化施設がますます発展し、ウォーカーがある、ガスリーもある、ということで人々が集まってきたのだと思います。
 つい先週(2008年11月4日)の選挙では、全州レベルで文化支援と土地活用、水の清浄化のために州税を増やす法案が可決したのは嬉しい最新ニュースです。

──今シーズンは、マース・カニングハムの大規模なサイト・スペシフィック作品『Ocean(海)』で始まりました。海外からは、イスラエルのバットシェバ・ダンス・カンパニー、日本の劇団チェルフィッチュ、英国からはホイ・プロイ・シアターや、サウンド・アーティストのレイ・リー、フランスのパーカッション・アンサンブルなどが招聘され、ニューヨークのエイコ&コマ、ビルダース・アソシエーションや地元のアーティストがプログラムされ、今年の9月から来年の5月末までに28のさまざまな演目が上演されます。こうした現在のプログラム方針について聞かせてください。
 ウォーカーの方針は、全米、あるいは世界的に著名なアーティストと新進アーティストの両方の作品を上演することです。前者の場合は、そのアーティストが引き続き自分と芸術のジャンルに対して挑戦をし続けているかどうかを重視します。例えば、今シーズンのマース・カニングハムの場合、彼はもうすぐ90歳ですが、今なお自分とアートに対峙して野心的で面白い挑戦を続けています。それでも、ウォーカーのプログラムの中心はいわゆる中堅アーティストの作品です。30歳代半ばから50歳代後半くらいのアーティストで、国際的、あるいは全米ではまだ知られていないが良い作品をつくってきた経歴をもち、興味深い問いを投げかけているアーティストの作品を中心に企画します。
 そして、私も、私の前のディレクターたちもそうだったと思いますが、コミュニティーの中にあるアート・インスティテューションは、地元のアーティストをシーズンに組み込み、真剣に支援する必要があると信じています。ですから常時、ローカル・アーティストに新作を委嘱したり、既存の作品を上演する可能性を探しています。比率でいうと、国際的または全米で知られているアーティストが80%、新進アーティストやローカル・アーティストが20%くらいですが、両方のアーティストの作品を上演することによって、ウォーカーは、ローカルと全米および世界のアーティストとの架け橋の役割も果たしています。
 もちろん、ウォーカーがサポートできる新進アーティストの数には限りがあります。また、地元にはウォーカー以外に、特に新進アーティストをサポートする専門機関がいくつかありますから、ウォーカーはツイン・シティーズの文化的エコシステムの中でその役割の一端を担っているにすぎません。
 
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