The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
The Minneapolis-based Walker Art Center, an international hub for cutting-edge performing arts
国際的な前衛舞台芸術の拠点のひとつ 米ミネアポリスのウォーカー・アート・センター
ウォーカー・アート・センター
マクグワイヤー・シアター(2008年)
Photo: Cameron Wittig
ウォーカー・アート・センター
シアタータワー内の管理事務所(2006年)
Photo: Cameron Wittig
ウォーカー・アート・センター
U.S. Bankオリエンテーションラウンジ(2005年)
Photo: Cameron Wittig
ウォーカー・アート・センター
Bazinetガーデン・ロビー(2005年)。ダングラハム彫刻ビデオ視聴エリア
Photo: Cameron Wittig


*11 the 51st (dream) state
米国の51番目の夢の州という意味のタイトル。米国は50の州より成る。
──ウォーカーのレジデンシー・プログラムについて詳しく教えてください。
 “レジデンシー”いう場合、大きく分けて2種類あると思います。一つはアーティストが作品をつくるサポートのための「プロダクション・レジデンシー」です。通常、新作の初演の場合でも、アーティストはリハーサル室から大劇場に移動して2、3日で技術関係の仕込みをし、すぐに幕を開けなければなりませんが、改装後のウォーカーには、マクグワイヤー・シアターがあるので、アーティストに作品を仕上げる場所と時間を十分提供することができるようになりました。

──ディベロップメントの時間の為に、どのくらいの期間、マクグワイヤーを提供するのですか?
 「プロダクション・レジデンシー」に選んだアーティストの場合は、作品の技術的複雑さやアーティストの必要性によって異なりますが、大体10日から1カ月間です。その間、アーティストは地元のアーティストと交流したり、コミュニティーのためにクラスを教えたりもしますが、主たる目的はあくまで作品をつくることです。可能な限り最高の作品に仕上げて、ニューヨークや海外に送り出せるようにします。

──ウォーカーでのレジデンシーでつくられた作品は当然マクグワイヤーで初演してからツアーするのですね?
 ほとんどがそのケースです。しかし、新作を初演するのは必ずしも良いことばかりではありません。観客に見せるにあたって、本当に良い作品になるかどうかは賭けですし、新作パフォーマンスの場合、初演の幕を開けてから作品が発展してゆく場合もあります。それでも、ウォーカーにとって新作の初演は素晴らしいことだと思います。2005年の改装オープン以来、すでに15から20本のレジデンシーとプレミアを行ってきました。そしてほとんど全ての作品が海外でも上演され、観客からも批評家からも非常に高い評価を得ています。
 もう一つのレジデンシーは、アーティストが作品をつくる過程の初期の段階のリサーチ、またはツイン・シティーズの人々の問題にアーティストが関心をもって地元のコミュニティーと交流するケースで、私は「コミュニティー・レジデンシー」と呼んでいます。地元の問題や情熱をアーティストが作品に取り込む形になるので、創作の過程に非常に深く関わることになります。何かをつくる、あるいは探求することに関して芸術とコミュニティーが一体となるということで、人々にとっては心が豊かになる体験です。そしてアーティストにとっては作品の初期段階の研究開発の糧となります。
 これまでビル・ティー・ジョーンズやラルフ・レモン、リズ・ラーマン、ビジュアルアーティストのネリー・ワードらとこのタイプのレジデンシーを行いました。もちろん、アーティストがつくろうとしている作品からフォーカスがずれないようにしますが、地元のコミュニティーから何かを得、何かを与えることができると感じるアーティストとのみ、このようなレジデンシーは成立します。
 例としては、数年前、詩人でありパフォーマンス・アーティストであった故セイコウ・スンディアタのレジデンシーがありました。「アメリカのデモクラシーは一体どうなったしまったのか」というテーマでした。私たちはこのプロジェクトをミネソタ大学と共同で進めました。スンディアタは、ミネソタに来て、アフリカ系アメリカ人の詩人の眼で「アメリカ人であるとははどういう意味か」「デモクラシーとは何か」を探求しました。クラス、ワークショップ、ディナー・パーティー、サロンなどで地元の人々から話しを聞いたり、自分が話したりしました。1年後にこの作品(*11)はウォーカーに戻ってきて上演されました。コミュニティーの人々との対話のビデオ録画が一部、作品の中に使われていました。

──そのようにコミュニティーと深い関わりをもつプロジェクトは、貴方が提案するのですか?
 色々な要素が組み合わさっています。多くの場合はアーティストがある問題や関心をもっていて、かつ、このコミュニティーにも同様の問題意識があり、アーティストの関心を非常に直接的な形でコミュニティーに結び付けることができる、またはそのアーティストと一緒に共同作業をしたいと希望するコミュニティーが見つかるだろうと、私が確信した時点から始まります。
 時には地元の組織や、コミュニティーのメンバーからの提案が先にあって、その要望に合ったアーティストを探す場合もありますが、どんな場合でも、アーティストがその問題に純粋な情熱をもっていることが大切です。コミュニティー・エクササイズに終わってほしくはないですから。あくまで芸術作品が本来の目的ですが、その創作の過程がコミュニティーの人々を包み込み、力づけるようなものであるということが大切です。
 今の時代は、芸術作品の上演、芸術作品とのインターアクション、芸術作品の創作過程への参加という3つのことの境目が曖昧になってきていると思います。作品を見に行くだけでは満足しない人々が多くなってきています。人々は、何らかの形で芸術作品に参加したい、または“楽屋”にまで入っていって、何故、そしてどのように作品がつくられたか知りたいのです。
 そして、レジデンシーだけでなく、委嘱制作(コミッション)のプログラムでも何らかの形で地元のコミュニティーやアーティストが参加するケースが多くなってきています。アーティストの場合もあれば、そうでない一般の人々の場合もあります。ローカルとグローバルの境界線もどんどん曖昧になってきている感じがします。これは私にとっては、大変興味深く、やりがいがありますが、同時に資金面やスケジュール等々の調整が大変になっています。
 
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