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Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
The Minneapolis-based Walker Art Center, an international hub for cutting-edge performing arts
国際的な前衛舞台芸術の拠点のひとつ 米ミネアポリスのウォーカー・アート・センター
フィリップ・バイザー
Photo: Kyoko Yoshida


*12 1882年にミネソタ州セントポール市に設立された非営利組織。器楽博物館を運営するとともに、クラシック音楽の普及のためにコンサート他、さまざまなプログラムを行う。
──ローカル・アーティストや地元コミュニティーの参加という文脈の中で今シーズンの舞台芸術プログラムのハイライトを紹介してください。
 シーズンのオープニング、マース・カニングハムの『Ocean(海)』は、御影石(花崗岩)の採石所で上演しました。この作品にはクラシックのトレーニングを受けた器楽奏者150人が必要でした。舞台はツイン・シティーズから1時間半ほど車で走ったところにある採石所につくりました。カニングハムは世界的アーティストですが、ミネソタ全州から集めた150人のミュージシャンがジョン・ケージに触発された作品を演奏して参加し、採石現場で働く人々も、地元セント・クラウドの市民も巻き込み、ミネソタ大学のノースロップ劇場、セントベネディクト大学他、ミネソタ州のさまざまな組織とパートナーシップを組みました。
 エイコ&コマは、3週間のレジデンシーで新作を仕上げました。特定のインドネシア音楽が作品に必要となり、私が地元のシューベルト・クラブ(*12)を介してガムラン奏者を紹介したところ、意気投合し、そのミュージシャンは共同創作者(コラボレーター)になりました。
 ビルダース・アソシエーションの作品も大規模なレジデンシーを行いました。アーティストが地元の移民コミュニティーをインタビューし、それを作品の映像と音声デザインに取り入れました。また、ツイン・シティーズ中のコミュニティー・センターのコンピューターにアーティストの作成したウェブサイトをセットアップし、誰でも個人史や話を書き込めるようにし、それを演劇作品の一部として取り入れました。
 ジャズの大御所ヤセフ・ラティーフのコンサートは地元のミュージシャンで全米に知られているダグラス・エワートとのコラボレーションになりました。このプロジェクトは、ある時、ダグラスが私に自分の夢はヤセフと共演することだと語ったのが発端です。
 30年の歴史をもつシリーズ、「コレオグラファーズ・イブニング」は、地元のダンス振付家のための登竜門およびネットワークになっています。今年は、地元の振付家のサリー・ルースが地元の新進からベテランまで数人の振付家を選び、短編作品を上演します。
 このように多くのプロジェクトにローカル/ナショナルのインターフェイス(交流面)があります。この傾向は、私たちの仕事が発展したことを示すもので、また、地元の観客に深い興味や親近感をもたらしています。

──ローカル/ナショナルのインターフェイスや、創作過程への参加要望といったトレンドは、インターネットの発展と関係あると思いますか?
 もちろんです。インターネットは、コンテンツの所有、過程への参加、双方向のコミュニケーションが最大の要素ですから。アーティストの創作の過程自体にも変化が現れ、よりインターアクティブな要素が増えてきていると思います。今は現代芸術の分野や舞台作品にその影響が顕著ですが、これから10年、20年先には伝統芸術の分野にも影響を与えていくでしょう。ウォーカーの役割はそのような時代のトレンドを先取りして受け入れ、試行錯誤も辞さないこと、全米の舞台芸術にとってのリサーチ&ディベロップメントの原動力であることだと思います。

──ワークショップやマスタークラスなど、いわゆる伝統的な意味での“アウトリーチ”プログラムも行っていますか?
 ウォーカーには、多くの賞を受けている素晴らしい教育部門(エデュケーション・デパートメント)があります。その下には6つの小部門があり、さまざまなアウトリーチ活動を行っています。例えば、前述のビルダース・アソシエーションの公演の一環としてコミュニティー・センターにウェブサイトをセットアップした時は、教育部門と共同で行いました。そのような地元のコミュニティーとの橋渡し的役割のほか、常時、素晴らしいエデュケーション・ガイドを行っています。従来はギャラリー・ツアーが主でしたが、現在は舞台芸術プログラムも取り入れ始め、美術、舞台芸術、映像芸術の3部門で展開しているテーマやアイデアを繋ぐようになってきています。例えば、ツアーガイドが、美術作品の解説をするだけでなく、それに関連して翌月行われる演劇やパフォーマンスのテーマの解説などをするといった具合です。
 学校関係のプログラムもあります。地元の何百もの学校と提携して行います。多くの場合は学校の芸術関係の授業に実際に行って教えたり、ウォーカーへのエデュケーション・ツアーを行ったりします。ウォーカーのウェブ・プロジェクト「アーツ・コネックテッド」を通して現代美術に関する資料をオンラインで提供したりもします。
 一般向けのプログラムもあり、例えば、デザインのトレンドに関するシリーズ講演など、芸術、文化、社会問題に関してスピーカーを招いて常時講演を行っています。さらに、これらと別に、教育部門の中に「コミュニティー」プログラムがあり、地元のさまざまなコミュニティー組織や小さな近隣グループなどに対するアウトリーチを専門にしています。それらの組織はアートとは直接の関係がない場合が多いので、こちらからアプローチしていかないと、なかなか関係がつくれません。
 現代美術や舞台の作品を“解説”するのも教育部門の主な仕事の一つです。もともとは美術作品の解説、教育ガイド等が主でしたが、近年、舞台作品やアーティストにも同様のアプローチを始めています。

──教育プログラム、アウトリーチやレジデンシーなど、完成作品と観客の距離を近づける努力の結果、観客は増えていますか?
 ウォーカーは、現代アートセンターとしては過去15〜20年間、他の同様の施設に比べて一貫して多くの来館者と観客を集めてきました。それでも、ウォーカーのプログラムには、人が聞いたこともないものや、何と呼んでいいかもわからないような表現や作品が多いので、集客は簡単ではありません。ウォーカーのミッションは新しい芸術の形、新しい表現、それを生み出すアーティストを支えることですから、まずは芸術作品があって、その周りに教育プログラムやレジデンシー、コミュニティープログラムを構成しています。ある意味で、自分たちで目標の達成を困難にしているようなところがあります。それでも、舞台芸術のプログラムでは平均して70%から80%の席が埋まり、売れ切れる公演も数多くあります。
 教育部門のプログラムには、多くの人々が参加してします。特に、「フリー・サースデイ」というプログラムは、毎週木曜日の午後5時から9時まで美術館の入館料を無料にし、レクチャーやパフォーマンスなども行うもので、何千人もの人々を集めています。若い世代の中には、毎週木曜日ウォーカーに通って、“ウォーカー体験”を楽しむ人もいるくらい人気の高いプログラムです。
 「スペシャル・プログラム」と呼ばれるイベント・シリーズでは、「ロック・ザ・ガーデン」などがあり、彫刻庭園の中に舞台を組んでロックバンドのコンサートを催し、8千人もの人々を集めることもあります。このようなイベントで集まった人々の中から沢山の人々がウォーカーのメンバーになります。幅広い層の人々に、ウォーカーのやっていることに興味をもってもらうための効果的な戦略だと思います。
 
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