The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Pioneering the role of the university-based arts center, The Hopkins Center for the Arts in New Hampshire, USA
大学付属の芸術センターの草分け 米ニューハンプシャー州のホプキンス・センター
──HOPでは年間どのぐらいの数のプログラムが行われていますか?
 招聘アーティストのプログラムは年間50件・50団体です。主な学生アンサンブルの公演が20件ほどあって、それ以外にも各種の学生のプロダクションで一般公演をするものがありますから、それを合わせると学生のものが年間計50件ほどでしょうか。それに加えて、映画の上映が年間200本以上。水曜日と日曜日は900席のコンサート・ホールで上映し、加えて200席の映画用劇場で週に2度以上の上映しているので、平均すると映画は週に5本ほど上映していることになります。ほとんど35mmの上映です。さらに、近頃メトロポリタン・オペラが始めた同歌劇場のオペラのライブ上映もスタートさせました。

──招聘アーティストのプログラムについてはどのような基準で決めていますか?
 「学生たちが今まで接したことがないもの」ということを常に心がけています。私は幸運にも、UCバークレー校というずば抜けて優れたプレゼンターのいる大学へ行きました。入学当時の私は、すでに演奏家として音楽については知っていましたが、コンテンポラリーダンスや現代演劇などは全く観たことがありませんでした。ピン・チョンもマーク・モリスもマーサ・グラハムも、何も知らなくて、在学中に浴びるように観ました。ですから、私はHOPの仕事は、世にあるものをできるだけ色々と学生に見せる機会を提供し、学生たちが個々それぞれに文化という感覚を培うための一助になることだと思っています。一部の学生は非常に洗練されていますが、何も観たことがないという学生がほとんどですから。

──つまり、貴女自身が経験したようなことをダートマスの学生とシェアしたいということですか。
 その通りです。多様な種類の芸術に触れ、異なるものの見方を知り、未知の美に触れられる4年間であってほしいと思います。また、時代を共にしている著名なアーティストらに、学生たちが近く接することのできる機会をつくりたいとも思っています。
 先週、この1月のフィリップ・グラスのプログラムに関して、ひとりの学生がダートマス新聞に記事を書くため私に電話してきました(*「フィリップ・グラス:映像とディスカッションの夕べ」(http://hop.dartmouth.edu/2008-09/090115-glass.html):フィリップ・グラスが作曲に関わった映像作品の上映と、グラス本人のトークからなるプログラム。この企画は4月に行われるフィリップ・グラス室内楽コンサートの連動企画として行われるもので、マーガレット・ローレンスとHOPのフィルム・ディレクターが協働してつくったプログラム)。
 彼に「多くの学生がフィリップ・グラスという名前を聞いたことがないと言っているのに、なぜ僕らはこのプログラムに行くべきなんでしょうか?」と質問されて、私は、「彼の音楽を知らないと思っていても、例えばTVコマーシャルにも彼の音楽を使ったものがいくつもある。だったらグラスがどんな人間なのか、君の人生に訪れたこの好機に知ってみるのも悪くないでしょ。何しろ特別な機会なんだから」と答えました。私たちがつくったこういう機会を学生にはできるだけ活用してほしいと思っています。
 多様な芸術にふれてもらうために、私たちは、コンテンポラリーから伝統芸能まで、世界中からできるだけ広範囲のもの提供しようと、常にリサーチを怠らないようにしています。この場合、ダートマス大学のカリキュラムとどう関連付けられるかを吟味するだけでなく、どのような生徒がいるかということも検討材料にしています。
 例えば、ダートマス大学は、「アメリカ先住民たちにも“教育”を与える場」として200年以上前に創立された経緯があるのですが、この方針はすぐに変わってしまいます。今から30年ほど前に再び方針として掲げられるようになり、優秀なアメリカ先住民の学生を全米からリクルートしています。今ではアイビー・リーグの中で最も先住民関係の講座が充実している大学になりました。これはあらゆることを考慮してプログラミングをするというひとつの例にすぎませんが、こうした学生がいるという大学の特徴を踏まえて、日本から民俗芸能のグループ「わらび座」を招聘しようかなという時には、音楽学部でこの民俗芸能と関連した授業が行われていないか、アメリカ先住民講座をわらび座公演と結び付けて伝統民俗芸能比較ができないか、などと考えるわけです。
 このようにキャンパスにいる学生たちが、自分たちの伝統の殻を脱ぎ捨てて外に出て、他の人々の伝統に触れることに興味を抱くことに貢献できる──それがこの大学の付属施設で仕事をすることの喜びのひとつですね。

──逆に、こうタイプの公演は避けたい、というのはありますか?
 ありますよ。オーセンティックではないものをもってくるのは避けています。例えば、アメリカのどこかでやっている有象無象の太鼓のグループ、などというのは絶対にもってきません。太鼓の公演を行うのなら日本のアーティストを招聘します。例えば日系二世の太鼓グループがあったとして、彼らがどうして太鼓をやっていてどういう演奏をするのか、そこに独自の考え方を持っているかどうかは、極めて重要です。ある特定の表現形式のものをやる場合、その形式をやっているアーティストだからということで公演を打ったりはしません。その表現形式の源流をできるかぎり突き詰めて、そこからアーティストを招聘することができるのであれば、それを招聘します。私にとって、これは非常に大切なことです。
 あと避けているのは、この地域の人々がこの地域で観ることができているもの、ですね。私の仕事はそういうもののためにあるのではなく、「私が介入しなければ地域の人々がそれを観ることはない」というもののためにあるのですから。地域の劇場では地元のフォーク・アート系のものを多く上演していますから、私が同じものを扱う必要はなく、私は私の場所だからこそというものを観せるべきでしょう。
 
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