The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Pioneering the role of the university-based arts center, The Hopkins Center for the Arts in New Hampshire, USA
大学付属の芸術センターの草分け 米ニューハンプシャー州のホプキンス・センター
──一度招聘したアーティストを連続して招聘することはありますか?
 もちろんあります。エマーソン管絃四重奏団を例に取りましょう。私は、今現在彼らより優れた管絃四重奏団はいないと思っているので、2年ごとに招聘していますが、何ら躊躇はありません。彼らは毎回違ったプログラムをもってきてくれますし。つまり、極めて優れたアーティストが、毎回異なる視点の内容の舞台を提供できるのであれば、招聘を重ねることに問題はありません。

──先ほど地元のアーティストのものを上演するのは避けているとおっしゃいましたが、地元アーティストとHOPの交流は全く行われていないのでしょうか。
 地元のアーティストは地元で上演の場がありますから、HOPでプログラムすることはあまりありません。ですが、私たちが招聘したアーティストと彼らが交流し、成長する機会を提供していて、多くの地元アーティストが、私たちが連れてきたダンスやオペラのアーティストのマスタークラスに参加しています。アン・ボガートによる演劇のワークショップを開催した時には、地元のプロとセミ・プロの俳優に限定して参加してもらいました。

──新作委嘱についてもう少し詳しく聞かせてください。これまでどのぐらいの作品を委嘱されていますか?
 HOPには新作委嘱の歴史がありまして、すでに80作以上の委嘱が行われています。多くが音楽で、ダンスもありますが、演劇の委嘱は企画が困難なためにあまり委嘱していません。単独委嘱の場合もあれば、(ニューヨークの)BAMやリンカーン・センターの「グレート・パフォーマーズ・シリーズ」など、大御所のプレゼンターとの共同委嘱もあります。また、ドナルド・バード(アフリカ系アメリカ人振付家)への委嘱のように、全米の約20ものプレゼンターが集まって、共同委嘱するケースもあります。
 前にも述べましたが、アーティストが大学に一定期間レジデンシーして委嘱作品をつくってもらうという方法により、創造の過程をできるだけ学生たちに見せるようにしています。学生たちには、アートというものが既存のものとしてあるのではなく、常に進化し、つくられ続けているものなのだということを見てもらいたい──たとえレジデンシー期間を設けられない場合でも、初演の瞬間を創作者と共有し、創作者本人から直に創造過程の話を聞くというだけでも、学生たちには大きな意味があると思います。

──委嘱作品を初演した後は、ツアーに出すのですか?
 はい。例えば先に触れたアン・ガルジョアの『You Can't Get There From Here』は、私たちの地域コミュニティーの問題意識に深く関わっています。一人芝居ですから上演も手軽なので、HOPでの初演の後に容易にツアーに出すことができます。この作品の場合、「地元コミュニティーのあり方を反映した新作をつくる」ことに加えて、各地のコミュニティーに作品を観てもらうことも目指していたので、初期の段階からツアーができるよう共同委嘱者を募るべく動きました。まず、東海岸ニュー・イングランド地方全域に向けて彼女の既存の戯曲の書籍キャンペーンを実施して彼女のことを知らせ、短いツアーへ発展させました。つまり、彼女の新作が完成した時点で、すでに、ニューイングランド地方のツアーのブッキングを容易にする下地が出来ていたということです。サンフランシスコでも公演することになっていますが、これをさらに全米各地のツアーに広げていこうと現在プロモートしている真っ最中です。というわけで、委嘱作品については他の地域でも公演が行われるよう、できるだけ努力しています。これを専門に担当してくれるスタッフがいるといいのですが……。

──新作委嘱のための資金はどのようにして調達しているのですか?
 委嘱のための特別財源があるわけではなく、私の年間のプログラミング予算から割り当てています。2012年にHOPが設立50周年を迎えるのを機に、委嘱のための基金を設立しようと、努力しているところです。当然、50周年を祝う特別委嘱をしたいので、これについても思いをめぐらせています。

──年間予算から捻出するとなると、大変なのではないですか。
 そうなんです。こちらから少し、あちらから少しと工面して財源を捻出しています。あとは助成金の申請もしますし、理事会メンバーのどなたかに特別援助をお願いすることもあります。例えば、4月に初演が予定されているポール・テイラーによる委嘱は、3名の理事会の方々を巻き込んで、さらに2つの助成金を申請しました。今年度は委嘱もしくは共同制作が5件もあって特別でしたが、普通は1年に1件のペースです。

──HOPの年間運営予算は?
 映画の予算や人件費まで含んで年間約700万ドル(約7億円)です。HOPの正規スタッフは約50名で、そのうち舞台公演のプログラミングと教育アウトリーチを担当する計5名が、私の管理下にいます。マーケティング部のスタッフは、私の担当の舞台公演の他にも、映画のプログラムや展覧会のキュレーターのためにも働きますから、私の直属ではありません。同様に、ボックス・オフィス部も直属ではありません。

──舞台公演のプログラミングのための予算はどれくらいですか? また、どのようにして資金調達していますか?
 舞台芸術プログラムの中でも芸術面における経費は年間約55万ドル(約5,500万円)で、決して多い数字ではありません。必死に交渉しています。
 資金調達の主な担当者は、HOPのエグゼクティブ・ディレクターです。ダートマス大学にも資金調達部がありますから、彼は常に大学側と協力して動いています。私もエグゼクティブ・ディレクターを補佐していますが、舞台芸術のプログラムのために助成金の申請書を書いているのは私ひとり。でも、毎年約20万ドルを稼ぎだしているんですよ。企業のスポンサーシップを探してくるのも私です。

──昨今の経済破綻の影響は大きいのではないですか?
 ダートマス大学の基金は他の大学に比べてダメージは少なかった。それでもなお6,000万ドルのコスト・カットが余儀なくされています。さらに大学側は、学内のあらゆる部署の予算をカットするにあたって、5%カット、10%カット、15%カットの3つのシナリオをつくっていて、数週間以内にはどの数字に落ち着くかの結果が発表されます。私の舞台公演プログラムも、来シーズンは、3割ほど予算を縮小し、小振りなシーズンにしなければならないかもしれません。
 
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