The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Pioneering the role of the university-based arts center, The Hopkins Center for the Arts in New Hampshire, USA
大学付属の芸術センターの草分け 米ニューハンプシャー州のホプキンス・センター
──話題を日本のことに移しましょう。私たちジャパン・ソサエティーでは、近年、伝統芸能の八王子車人形のツアーをHOPに巡回させています。また、日本のコンテンポラリーのグループのツアーでも、多くの仕事を一緒にさせていただいています。
 伊藤キム、ク・ナウカ、パパ・タラフマラ、そして川村毅の『Aoi/Komachi』等々ですよね。日本人という意味で言えば、米国在住のエイコ&コマの公演もやっていますし、“日本がらみ”ということまで広げれば、ハイナー・ゲッペルスの作品『走り書き』を記憶している観客も多いと思います。

──国際交流基金が行っている「パフォーミング・アーツ・ジャパン(PAJ)北米」の審査員も数年間務めてらっしゃいましたし、さらに昨夏は「トヨタ・コレオグラフィー・アワード」の審査員も務められました。これらのご経験を通じて、「日本の舞台芸術の今」をどのようにご覧になっていますか? また日本の舞台芸術には何を期待されていますか?
 常々、私が感心しているのは、日本のコンテンポラリーダンスが実に想像力豊かにテクノロジーを駆使していることです。米国ではほとんどこうしたものを見かけませんが、彼らにはテクノロジーを取り込む手段が全くなくて、日本に比べると「暗黒時代」を生きているようなものなのかもしれません。
 コンテンポラリーダンスについてもうひとつ言及したいのは、日本のダンサーたちは正式なダンス・トレーニングを受けているとは限らない、ということです。これは非常に興味深いことです。というのも、ここ米国ではダンサーは必ず正式な、しかも多様な身体的トレーニングを経ているのが普通です。例えば、バレエの後にポール・テイラー風のスタイルに変遷したとか、コンタクト・インプロビゼーションから他の何かに移行したとか。そのダンサーがどんなトレーニングを積んできたか、舞台を観ればわかりますし、実際多くのダンサーが何らかのトレーニングを経ています。ところが日本は「何でもあり」です。このことは時には“失望”という形になって現れて、たとえば「何だ、あのだらしなく引きずっている足は!」なんてこともあります。でも、見方を変えれば、真っ白なページとしての肉体から作品をつくるという面白さでもあって、ある意味こちらのほうが魅力的とも言えます。
 昨年のトヨタ・コレオグラフィー・アワードの最優秀賞を取った鈴木ユキオは、強烈でした。彼の動きはどんな種類にも属さなくて──ある種の舞踏的な動きではありますが、でも正式なダンス・トレーニングをしたという片鱗が全く見い出せません。もしも彼が何らかのトレーニングを受けていて、その上であれと同じ動きをしようとしたならば、結果はもっとずっとぬるま湯的なものになって、あれほど尖った表現にはならなかっただろうと思います。

──PAJ北米プログラムには、「日米のアーティストによるコラボレーション」のための助成金と、「北米ツアー」のための助成金の2種類があります。この助成プログラムの影響や効力を、どのように見てらっしゃいますか? また、全般的に見て米国における日本の現代舞台芸術に対する興味はどのような状況なのでしょう。
 難しい問題ですよね。PAJ助成の価値をよく知っている人は少なからずいて、彼らはこの助成金を頻繁に利用しています。彼らにとって財源は非常に限られているので、同じ面々が何度も申請をするのは理解できますが、日本の舞台芸術を広く紹介するというPAJの目的に照らすと、もっと申請者が広がっていかなければならない。私のように、リスクを恐れず、あなたとコラボレートすることで優れたアイディアを吸収しようというプレゼンターの申請を増やすこと。さらに、アーティストの申請者ももっと増えていかなければダメだと思います。この問題はPAJプログラムの担当者たちもよくご存じなので、毎年議題に上がっています。
 個々のアメリカ人のアーティストに、日本のあらゆる優秀なアーティストのことを知ってもらうには、多額の資金も必要です。こんなに距離が離れているのにどうやって知ってもらうのか? バーチャル・テクノロジーがあるじゃないか、と言っても、それだけではダメで、やはりホンモノの人間関係からスタートしなければものごとは始まらない。2つの才能あふれるグループがあって、彼らが協働したら驚異的な結果が生まれるに違いないのに、その2つのグループはいったいどうやったら互いに巡り会えるのか? 物理的な距離というのは、今日をもってしてもなお最大の課題ですね。

──HOPでお仕事を始められてから14年間になりましたが、このあと5年後、10年後には何をなさりたいですか?
 ここの同僚は大好きですし、エグゼクティブ・ディレクターと共に働くのも大好きです。触発されますし、しかも常に私を支持してくれていていますし、素晴らしい職場です。HOPで長く働いているので、地域の人々も私を信頼してくれています。「コレコレのことは知らないかもしれないけど、ともかく観にきて」と言うと、彼らは来てくれます。私の観客たちも冒険好きなんでしょう。ここは川が流れる森の中にある小さな街ですが、とてつもなく活発なアートセンターがあります。多くの人々がここに引っ越してきた理由を、「HOPがあるから」と説明してくれます。素晴らしいことですよね。
 そのHOPで、私はいつも、「次に自分自身が興奮するプロジェクトは何か」ということを考えてきました。つまり、興奮し続けていられる限り、この次に将来のことを深く考えたりはしないんです(笑)。

──つまり、まだまだ飽きていないと?
 私たちプレセンターの仕事を包括的に定義すれば、「自分自身が楽しめるモノを考える」ということですから(笑)。つまり次なる挑戦をつくり出せるかどうかは自分たち次第なのだから、飽きるということはあり得ないでしょう?

──その通りですね(笑)。お時間をいただき、またさまざまな考えを聞かせいただきまして、たいへんありがとうございました。
 
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