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Presenter Interview
Striving for regional development, Romania's Sibiu International Theatre Festival gathers participants from 70 countries
70カ国が集合、地域の発展を目指す ルーマニアのシビウ国際演劇祭
──今年のフェスティバルについてご紹介ください。キリアックさんは俳優として出演されますか?
 残念がながら舞台には立ちません(笑)。
 今年は70カ国が参加し、62カ所で公演が行われる予定です。フェスティバルのテーマは、「イノベーション」です。ただ、普通の書き方ではなくて、innovation(刷新)と、ovation(熱狂)の2つをかけています。フェスティバルの創造と刷新の年にしたいと思い、そういうテーマにしました。
 日本からは、山の手事情社(『タイタス・アンドロニカス』)、東京演劇集団「風」(ブレヒト『乞食あるいは死んだ犬』)が参加し、加えて2つの共同制作作品が予定されています。1つは、芦澤いずみさんの演出で、日本、アメリカ、イラン、ルーマニアの俳優が参加して舞台をつくる共同プロジェクトです。
 もう1つは、私が大変興味をもっている面白いプロジェクトなのですが、世界的にみても著名な3人、狂言師の茂山千之丞、イタリアのコンメディア・デッラルテのアレッサンドロ・マルケッティ、そしてスイスのクラウン・ディミトリーが協力してつくる舞台です。シビウでプレミアを行い、ヨーロッパ各地を巡演します。今年がドナウ年であることから、ドナウ川沿いの都市、ミルチャ・ディネスクという城塞、ブルガリア、セルビア、ハンガリーを回り、ファイナルは今年の欧州文化首都であるリンツになる予定です。
 ボランティアも継続していて、日本からは18人が参加する予定です。

──『ファウスト』も上演されるのですか?
 やります。『ファウスト』はエディンバラ演劇祭にも正式に招待されています。フェスティバルのメイン作品としての位置付けで、5回上演します。エキスポ・パビリオンという特別なスペースを使い、私たちが必要とする空間に改装してくださるそうです。

──ラドゥ・スタンカ劇場についても紹介していただけますか。フェスティバルとはどのような関係ですか?
 ラドゥ・スタンカは、フェスティバルの共同主催者です。例えば今年の予定では、フェスティバルのためにラドゥ・スタンカとして11の舞台を用意しています。レパートリーとしては、ギリシア悲劇やシェイクスピアから実験的な作品まで58の非常に幅広い演目をもっています。今年は新作を14作発表する予定です。劇場だけでなく、ほかに5〜6カ所の会場で、合わせて1カ月間に30ステージの公演を行っています。
 組織については、劇場の雇用者は全部で140人です。内訳は、俳優が60人、管理部門(財務も含めて)が20人、マーケティングと国際関係担当が14人、その他が技術スタッフです。ですから、同時に2、3のステージを回すことができます。私たちの常任演出家は一人だけで、ラドゥ・アレクサンドル・ニカ(Radu Alexandru Nica)といいます。若く、大変有能な演出家です。その他は、ルーマニア国内あるいは海外で著名な演出家を招聘して作品を創っています。例えば今年の予定でいうと、プルカレーテが2つ、アンドリー・ゾルダックが1つの舞台を演出します。フランス、ルクセンブルク、クロアチア、ロシア、そしてルーマニアの著名な演出家も予定しています。詳細はまだ具体的になっていませんが、2011年には串田さんを招いて演出をしてもらう予定です。

──フェスティバルの規模がこれだけ大きくなると、相当な予算が必要だと思います。予算はどのぐらいで、どのようにして資金を集めていますか?
 確かに規模は大きくなりましたが、予算的には世界のさまざまなフェスティバルの中で第87位なので(笑)、そんなにお金があるわけではありません(ちなみに2008年度は約10億円規模)。
 資金については、ルーマニアで行われている最大級の国際的な文化行事として大統領の後援を受けていて、政府からの直接的な支援もあります。ですから文化省、外務省、県庁、シビウ市役所からお金が出ていますし、さまざまな機関からも財政支援を受けています。これらが予算の全体の約35%を占めています。
 これ以外の30%は、国際的な、ヨーロッパあるいは世界的な規模でのプロジェクトからの支援です。チケット収入は約10%になります。残りはスポンサーから協賛してもらっています。また、メディアからも多くの支援を受けており、ルーマニア国営テレビ・国営ラジオを始め、5つの民放のほか9つの有名なメディアから支援を受けています。

──手元に2007年のプログラムがありますが、支援企業、協賛企業が多数掲載されています。特にコカ・コーラの支援が大きいようですね。
 そうです。主要スポンサーです。屋外での舞台がたくさんありますし、旧広場だけでも3〜4万人が集まりますので、そこで売れるコカ・コーラの量はバカになりません。残念ながら契約の関係で金額は公表できませんが、大変大きな支援をいただいております。

──そういった交渉もキリアックさんがされているのですか?
 私のチームがアポイントは取ってくれますが、直接交渉をするのはすべて私自身でやっています。プログラムの内容について言いますと、ルーマニア国内にとどまらず、世界的に色々と意見を出してくれるチームがありますが、最終的に決定するのは私です。フェスティバルの準備はほぼ2年前から始めて、例えば日本についてだと、3月末には次の年のフェスティバルに何を呼ぶか候補を決めています。こうした交渉のために海外に出掛けることも多く、これまでに101カ国を訪問しています。日本には8回来ていて、フランスは100回を超えると思います。

──キリアックさんは現役の俳優でもいらっしゃるわけですから、自分の舞台の稽古などもありますよね。しかも、ラドゥ・スタンカのディレクターでもある。よくお時間が取れますね。
 教授もやっていますしね(笑)。まず何よりも、私には大変強力なチームがあり、彼らが私を支えてくれているということが大きいです。自分が声を掛けて一緒に仕事をして来る中で力を付けてくれたチームです。それぞれが大きな権限、責任をもって仕事をしてくれています。劇団、フェスティバル、演劇学科、演劇マネジメント学科と、私の仕事は多岐にわたりますが、それぞれの部門に責任者がいて、それぞれが連携して仕事を進めていけるようにしています。このような構成で仕事をしているのは、おそらく世界でもなかなかない、ユニークな組織をつくることができたと思っています。
 シビウはおそらく、文化を通じてひとつの地方都市がさまざまな面で大きく発展することができたモデルケースになっていると思います。国際演劇祭を軸にして、シビウの経済、観光、教育、そして民主主義など、さまざまな分野で街が大きく発展してきたのです。これは、世界的にみても稀な例だと思います。
 私たち劇団が創る舞台のチケットは、1枚残らず常に完売を続けています。また、若い俳優、演劇学校の生徒たちがバーやディスコなど街のいたる所で住民とのコミュニケーションをとる活動をしています。私たちが推奨して、演劇の魅力を伝えるという活動を組織しているのです。私たちは劇場の中だけではなく、劇場の外でも住民たちと密接に結びついています。私ももちろん参加しており、マックスというレストランで活動しています。
 
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