The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
Presenter Interview
European arts scene leader Frie Leysen talks about the role and activities of arts festivals
欧州のアートシーンを牽引するフリー・レイセンが見る フェスティバルのアイデンティティとは?
──戦争を扱わないのであれば、彼らはどういったことをテーマにしていますか。
 普通の若者が興味をもっているようなことです。例えば、電子音楽や、人生における快楽や、愛とか。日本でも欧米でもごく当たり前に扱われているようなテーマだと思います。

──中東地域でフェスティバルを開催するということは、検閲という避けて通れない関門があるのではないでしょうか。
 そのとおりです。私たちも検閲委員会に出ました。彼らは開催地全域に検閲にやってきて、これはいい、これは駄目だとチェックしていきました。それでも私たちは絶対的なクオリティの高さを維持しています。

──各地域にはどういう観客がいましたか。
 Meeting Pointsがある意味成功しているといえる理由のひとつには、非常に若い観客を多く集めたことがあると思います。観客の70パーセント以上が30歳代、20歳代、さらにそれ以下です。中東のどの都市でも、町を見渡すとそれはもう若者がたくさんいることに気づきます。正確な数は知りませんが、彼らは実に好奇心旺盛で、普段見られるものが少ないためか、とてもハングリーです。現地にいるとそれを肌で感じることができます。
 もちろん観客を強制的に劇場に来させることはできませんが、私がいつも思うのは、(潜在的な)観客は必ずいるということです。彼らを劇場に連れてくるために私たちは死にものぐるいで働き、彼らにそのことを伝え、彼らを尊敬することです。決して観客を馬鹿にした作品を提供しているのではない、尊敬の上にあるのだという思いを観客自身も感じてくれるはずです。こういう話は、どっちつかずの無駄な議論なのかもしれませんが、実際には時間のかかる仕事です。
 例えば、クンステンを始めた頃に、理事会を組織しました。そこで私は、フェスティバルには2つの可能性があることを理事たちに言いました。一つは、もし1回目のフェスティバルで即成功を望むのであれば、それはそれで可能です。1回限りならそれなりにうまくいくでしょう。しかし反面、フェスティバルを真のアーティスティックなプロジェクトとして発展させようとするなら、成功と言えるまでに5年はかかるでしょう。1回目は惨憺たるものでしょう。2回目も、3回目も悲劇かもしれません。しかし、その後からおそらく何かが起こり始めるはずです。ここはあなた方が勇気をもち、失敗にいちいち絶望しないこと、時間がかかるということを理解して、信じることだと思います。という説明をしましたが、コミュニケーションそのものにも時間がかかります。彼らはなぜ私のことを信じるべきなのか、私がなぜ彼らを信じなければならないのかといった、お互いの信頼関係を築き上げることも重要です。

──Meeting Pointsを成功にこぎつけたわけですから、主催者はあなたにまたキュレーションをしてほしいと考えているでしょう。
 そのようです(笑)。将来的にどうなるかまだわかりませんが。次回開催に向けて彼らはキュレーターを探しているところです。

──あなたが手掛けている現在進行中のプロジェクトについてお聞かせください。
 2010年7月にドイツのエッセンとミュルハイムで開催されるフェスティバル「Theater der Welt」のキュレーターを務めます。今回もそのための視察で来日しました。このフェスティバルを主催するドイツの国際演劇協会(ITI: International Theatre Institute)に依頼されてプログラミングの責任者になりました。Theatre der Weltはドイツ国内の異なる都市で2年毎に開催されています。エッセンでの開催は2回目です。開催都市については希望する自治体が手を挙げ、コンペによって選ばれます。総予算の3分の1を自治体が負担しています。
 私自身はテーマで動いているわけではありませんが、Theater der Welt、つまり「世界の演劇」というタイトルそのものがこのフェスティバルのテーマになっています。壮大なテーマですが、文字通り、世界に開かれたフェスティバルにしたいと思います。ヨーロッパは今、再び閉じた世界になりつつあります。境界線が再び引かれ、ナショナリズムやファシズムという波が押し寄せています。ですから、私にとって、作品そのものよりも世界中からやって来るアーティストひとりひとりを紹介することが非常に重要です。アーティストたちが、この閉塞した世界に風穴を空け、精神的、物質的世界においても風通しをよくしてくれることを願っています。
 こういう危機に直面したヨーロッパ全体を見渡すと、私はアートの国際的循環がもはや機能していないように感じます。例えばオランダでは、海外のアートとの交流がほとんどありません。残念ながらドイツも以前ほど活発ではありません。フランスのほうがむしろ順調でしょう。イギリスでも、ある特別な場面でしか国際的な交流が行なわれていません。普通はもっと日常的なレベルで行なわれる必要があるはずです。
 ですから、エッセンにとって国際フェスティバルの開催はますます重要になってきていると思います。私が作品よりもアーティストを重視する理由はそこにあります。一つの場所にある状態で、異なるビジョンをもつ人々が集まり、開かれた世界へと自分たちを高めていく。社会において異なるビジョンをもつ者同士がぶつかり合う瞬間を見てみたいのです。
 
BACK
| 1 | 2 | 3 | 4 |
NEXT
TOP