The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Berlin’s HAU as an epicenter of the performing arts — What’s the ideas behind its aim to “Create friction in the world?”
パフォーミングアーツの震源地HAU“世界に摩擦を起こす”その企みとは?
──HAUのプログラム全体を貫くテーゼは何ですか。「リアリティへのヒステリックな切望」ということを言われていますが、それがテーゼですか。
 私は、演劇のディスクールがある決まった種類のパフォーマンスに立脚することや、常に内的な芸術的なプロセスを扱うことを退屈だと思っていました。演劇が現実(リアリティ)に対して、何らかの意見表明、連結、もしくは論争を挑むことが自分にとっては重要でした。
 「リアリティへのヒステリックな切望」という表現は、前述のX住居に着手した時に生まれました。このプロジェクトで試みたのは、建物とそこに住んでいる人々、あるいはアパートの部屋の状況と、これを演出家の芸術姿勢を対決させるというものでした。同時にこれは劇場から作品を解放すものでもありました。この「リアリティへのヒステリックな切望」が、現在のHAUのプログラム全体を貫いているのは確かです。
 また、リアリティ演劇、ドキュメンタリー演劇という言葉もあります。ハンス・ヴェルナー・クレージンガーは、20年前よりかなりドライなドキュメンタリー演劇を手がけています。一方にリミニ・プロトコルがあり、彼らは現実の人間を舞台に乗せ、自分たちの知らないリアリティを探検するという作品をつくっています。この両者にX住居を加えると、確かにドキュメンタリー系の演劇はHAUの活動の重点ではありますが、これしかやらないというわけではありません。

──そういった作品を通して、観客に対して何を伝えようとしていますか?
 さあ、わかりません。少なくともやろうとしているのは、外からみて見分けのつくものをつくるということです。特に、自分にとって未知な、あるいはまだ理解不可能な問題を吐き出すこと、あらかじめ社会が想定していなかった問題を取り上げることに興味があります。自分がすでに知っていることを取り上げてコメントすることには関心がありません。

──なぜ演劇作品においてリアリティを切望するのですか。ドキュメンタリー演劇の何が、そこまでの関心を引くのですか?
 ドイツ出身の人間にとって、演劇とは常にイデオロギー、あるいはイデオロギーの崩壊と深く関係しているものです。イデオロギーについて考える際に重要になるのが、現実を把握することであり、今どういった現実が存在しているかをリサーチすることです。現実を把握しそれを目に見える形にしていくことも肝心です。
 演出家シュリンゲンジーフと行った「外国人出ていけ」プロジェクトは、ヴィーンの国立オペラ座の隣にコンテナを設置し、実際の亡命申請者たちがその中に入り、そこから選ばれた亡命申請者が国から追い出されていく模様を、観客が覗き見するというプロジェクトでした。数人が数週間を過ごすために部屋に閉じ籠もり、これをカメラが24時間追う様子を放映するテレビの人気リアリティ番組「ビッグ・ブラザー」を意識して、これを極端な形にしたのです。私は現実をそのまま直接作品にすることやナチュラリズムは忌み嫌っています。装置や映像に加工された現実、例えばゲームの映像などもそうですが、私たちはそれを見て現実を新たに認識するのだと思います。

──ではHAUの今後のプロジェクトについて教えてください。
 移民のテーマは今後も続けます。ベルリンのベトナム人およびアラブ人のコミュニティと一緒に作品をつくることを考えています。また、9月にはポスト・デモクラシーを取り上げます。ロビイストが暗躍する民主主義の空洞化がテーマです。日本でもそうかもしれませんが、ドイツでも国民は政治や選挙への関心を失いつつあり、メディアはキャンペーンを展開するばかりで遠隔操作されています。ドイツでは9月に総選挙があるので、これに併せてポスト・デモクラシーについての作品の上演やディスカッションを行います。上演するのはリミニ・プロトコルの『ヴァレンシュタイン』です。この作品は実際に地方選挙に出馬した政治家が出演するものです。またイギリスの政治学者でポスト・デモクラシーを提唱しているコリン・クラウチを招き、レクチャーやインスタレーションを行います。

──ジャンルを横断するプロジェクトや映像やダンスなども含むフェスティバルも行われていますが、内容を教えていただけますか。
 ジャンルを横断するプロジェクトとしては「Traumlabor(夢のラボ)」という失業中の建築家集団と行ったプロジェクトがありました。これは東ドイツの共和国宮殿、つまり旧東独の国会議事堂の中に水をはり、来場者はゴムボートで中を回るというものです。ソフィーエンゼーレとHAUの共同プロジェクトで6カ月間行いました。日本の国会議事堂でできませんか(笑)。
 フェスティバルは通常テーマを決めて行います。6月に行うフェスティバルのテーマは家族構成と移民と子どもの教育です。子どもの教育のために貧しい移民が利用されるという構造と家族の話です。タイトルは「your nanny hates you」。北米の裕福な家庭の子どもの養育係として、多くの南米の貧しい家庭の女性が北米に移住し、故郷から遠く離れて働き、自分の家族に一生懸命仕送りをするという状況を扱います。このようにテーマごとにフェスティバルを行いますが、国あるいは地域ごとのフェスティバルもあります。ただその場合、よくありがちなその地域あるいは国のザ・ベストを招聘するのではなく、むしろサブカルチャーをリサーチし、切り口を見つけるという方法を取ります。

──定期的にやっているフェスティバルもありますね。
 ダンスのTanz im Augustとブラジル・フェスティバル。ポーランド関係もあります。今後はぜひ毎年日本フェスティバルをやりたいですね。おっと、その後にカッコして笑いと入れておいてください(笑)。

──HAUはインディペンデントなアート・シーンの拠点と理解していますが、ベルリンにはほかにも同様の拠点はありますか。
 ミュンヘン・カンマーシュピーレのヨハン・ジーモンスの作品など、時には公立劇場と共同作業をすることもありますが、それはあくまで例外的なものにすぎず、HAUはインディペンデントなアート・シーンの拠点です。こうした拠点としては他に、演劇ではソフィーエンゼーレ、ダンスではDOCK11、古楽・現代音楽・パフォーマンスではラディアルシステムがあります。
 
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