The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
Berlin’s HAU as an epicenter of the performing arts — What’s the ideas behind its aim to “Create friction in the world?”
パフォーミングアーツの震源地HAU“世界に摩擦を起こす”その企みとは?
──ヨーロッパの劇場とのネットワークや強い結び付きはありますか。
 クンステン・フェスティバル・デザール(ブリュッセル)、カイKAAI劇場,Fraskati(アムステルダム)、ロスマイトシ劇場(ワルシャワ)、ノビ劇場(モスクワ)、PS122(ニューヨーク)、フェスティバル/トーキョーなどと連携しています。

──今回の来日は3回目ですが、今年の10月には日本特集も予定されています。
 アジア・パシフィック・ウィークのプログラムとして、日本特集にベルリン州の予算が付きました。そのリサーチのために来日しました。フェスティバル/トーキョーと東京芸術見本市の演目を観て気が付きましたが、若手演劇人たちが新しい試みをしているようですね。ここ何年かで日本の外の演劇シーンにふれて刺激を受け、自分たちの視線やセンスを新たにしたのではと推測しています。若手演劇人の作品はしつこいほどに街のカルチャーとセックスを扱っていました。
 今回の来日で観たもののひとつが、快快という若いパフォーマーによるグループのポップな作品です。身体の値段とは、セックスの価値とは、グローバル化された世界の中でお金に換算できないものはと問いかけます。身体に値段が付くことを脅威としながらも、その一方で裸の体を見せたいと思う。渋谷、テクノカルチャー、セックスロボット、セクシュアリティの無価値化などを描いています。
 また、ポツドール『愛の渦』も観ました。この作品は秘密クラブに参加する数人の男女の話で、乱交を覗き見しているような舞台でした。社会における過剰なほどのセックスの強調が、性へのテロ行為として描かれます。愛とセックスは明確に切り離され、非常にハードでリアルですが、一方でブリューゲルの絵のようにも見え、ヨーロッパ中世の場面のように死体が重なっているようにも思えてきます。さらに、セックスや愛に対してどういう態度をとるか、など各自個人の行為も取り上げます。セックスだけのはずだったのに最後には愛のようなものが生まれ、嫉妬も起きる。新宿をそのまま切り取ったような舞台で面白く観ました。
 岡田利規のチェルフィッチュは、昨年に引き続き再び招聘することが決まっています。現在のところ日本で最も重要な演出家のひとりだと思います。彼の『クーラー』という作品はクーラーの効き過ぎたオフィスで働いている二人が、ダンスのような身振りをしながら、なんとなく接近していく話です。これも別のセクシュアリティをもつものとして理解すれば、インタビュー前の雑談の際、日本特集のタイトルは「セックス・アンド・ザ・シティ」と皮肉まじりに言いましたが、私が感じた限りではそう外れていないと思います。今回は新作『クーラー2』も上演します。
 また、日本社会の現実、格差社会の問題などを背景に、本当に小さなものですが社会的なコミットメントが起きてきているように思いました。例えば『素人の乱』の松本哉がいます。高円寺のリサイクルショップで古い家電製品を修理して売っている彼に会い、素人の乱という彼のアンチ消費主義の運動について彼から話を聞きました。賃上げを訴えるのではなく、消費主義・自由主義経済の外に別の価値を見出そうとしている人です。彼も招いて、ドイツの哲学者ギヨーム・パオリと対談してもらおうと思っています。パオリは「幸福な失業」を提唱し、労働至上主義批判を展開しています。音楽・文芸などの評論家の佐々木敦には、90年代から現在までの文化論について語ってもらおうと思っています。90年代の日本の文化を昭和の終焉とノストラダムスの予言の間に挟まれた10年として語ります。西洋ではこういう考え方はあまりしません。
 さらに、美術家集団Chim↑Pomのビデオ『スーパーラット』も観ました。渋谷のごみに群がるでねずみを捕まえて、剥製にしてピカチューにするというものです。ポップカルチャー、新宿―渋谷―高円寺、セックスのオブセッション、こうしたものはすべて“東京という都市”が生み出しているものです。

──日本特集では東京という都市の姿や現象を舞台上に呈示するということですか。
 舞台の上に広げてみせる。そして消費するお金がなくなると一体どうしたらいいのかを考える。絶望のもとに行うパーティーではないでしょうか。お金はないがそれでも踊る。さらにエレクトロニカを通して、ベルリンと東京という都市を結び付けることができるのではないかと思っています。

──ところでこういう質問もどうかと思いますが、なぜ演劇をやっているのですか。
 わかりません。自分だってわかりませんよ、単にこうなった、ということです。

──演劇を通して結局何を獲得しどういう成果をあげたと考えていますか。
 何も獲得していませんよ。あるとすれば、劇場を移民に対して少し開き、彼らがほんの少し劇場の中に足を踏み入れることくらいですね。彼らが広くアートにふれる機会をつくったのは確かです。あるいは視野の狭いドイツ人に、外の現象を呈示することである種の国際化を可能にしたかもしれません。そのくらいです。アートはもう社会や都市を変えることはできないと思います。それは幻想でしかありません。

──それでもやり続けるのですね。
 もちろん。

──世界革命のためですか?
 確かにこれまで現実に抵抗したことはありますし、自分自身にとっては大事なことです。でも、私にとっては世界革命も時には芸術プロジェクトなのです。
 
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